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第十六篇第五章 天下分け目の大戦・肆
仇同士が並び立つワケ
しおりを挟む「(なんでなんだ……?コイツ等が極道モンだからか?一度酒を酌み交わした男達との筋を通してるから…そう感じんのか…?)」
U・Jは自身の頭の中に浮かんだ其の不思議
な感情と永遠と葛藤を始めてしまった。
しかし、其処に桑ノ実色の炎を纏った鉄球が
ウォッカの手から放たれU・Jの足元で爆発
を起こして見せる。
U・Jは爆煙に紛れながら左へと回避するが
其処に斧を構えたアドラスが迫っていた。
アドラスの斧が玄色のオーラを纏いU・Jの
足元へとヒットすると大地のギフトの特性で
ある“重力”を持って地面を叩き割る。
すると、叩き割れた地面から舞った石の礫が
鋭くU・Jの身体に散弾するのだった。
腕で礫をガードしたU・Jだったが其の礫の
鋭利さに身体の至る所から血が流れ出る。
何とか距離を取ったU・Jは未だに臨戦体勢
すら取らずに思案を巡らせていた。
「……重症だな。あの男がこんなにも何かの悩みを抱えておるとは…」
「おうおう…ロックじゃねぇや。俺っち達を前にして悩みながら其処にいんのは賞賛に値するがよ……」
「そんでも…らしさがねェわな。儂が思うに此の男はもっと強ェモンだと思っとったわ」
「いや、其れはそうなんだろうよォ……ソイツが此処迄になるって事ァ…其れ相応の何かがヤツを苦しめてんだ…ァ」
アドラスとウォッカもU・Jの強さを身体で
知っている身であるからしてU・Jの佇まい
には違和感を覚える所だ。
だからこそ、攻撃は全て足元に向かって放ち
U・Jが躱し易い土台は作っている。
其れでもU・Jの熱は上がって来ない。
「なあ?アンタ等…」
突如としてU・Jの口から溢れ出た其の言葉
にアドラスとウォッカは素早く反応する。
「人は大勢、死んだろ?反乱軍と革命軍、それに犀騒一家と牛鬼組の頃もよ」
「ああ、死んだよ…部下も組の息子達もよ」
「恨みはねェのか?アンタ等は互いに仲間や部下の屍背負って生きてんだ。其の仇は今横に居るアンタ等同士じゃねェのか?」
「そらそうよ…親にとっちゃあ子等の命を奪って行った組織の親玉……仇であるコトにゃあなんの変わりもねェな?」
「だったら何でだ!?今そうやって平気で隣に立てる!?テメェ等は…其の十字架を足蹴にして無視するつもりか!?」
珍しく気の立ったU・Jの怒号がアドラスと
ウォッカに向けて荒々しく投げ掛けられる。
「U・J…貴様が何を今…悩んどるか知らんがな。儂等の子等もまた…其の覚悟を持って盃を受け取る」
「おう…其れは俺っちんトコも…兄弟んトコもそうなんだよォ…だから怒り散らすだけが親のやるべき事じゃねェ」
「子等の生きた証は儂等の信念に今も生き付いとる…」
「其の信念をお互い認め合えたからこそ…俺っち達は…其の子等の声を無視しちゃあいけねェのよ…」
U・Jに向け語り掛けるアドラスとウォッカ
の声をU・Jは静かに耳を傾けた。
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