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最終篇第一章 “氷天氷地を制す者”
罵声に深く沈められた心
しおりを挟むガルフが帝国軍で大将の座に君臨していた頃
には、“親の血”、“生まれの運”とアビスには
やっかみや妬みの声が周囲に異常な程に在り
どれだけのチカラを示しても、其れは承認を
得る事が出来なかった。
だが、アビスには偉大な父の期待に応え其の
父を超えるという大目標があった。
其の頃は、未だそんな言葉に一喜一憂をする
程には心が荒んではいなかったのだろう。
しかし、突如として訪れたガルフの裏切り。
此れに依り、アビスを取り巻く環境は轟音を
立てて変貌して行った。
“裏切り者の息子”、“最悪の血”、等と呼ばれ
声の暴力、刃を向けられ続けた。
「俺は何も解らない……何故なら、貴様は俺に何の声も掛けずに去ったからだ…ッ……だがしかし…届く距離に居た俺に…同じ軍人達は非難の声を浴びせて来た……俺が、何をしたって言うんだァァ!!」
何処か、大人びた印象すら感じていたアビス
の口調が此の時の話をしながら、不安定さを
帯びて行き、怒気が前面に押し出された。
そして、過呼吸の様な状態と成り、アビスは
慢性的に続く過去をトリガーとした頭痛にも
苦しめられ、表情が歪む。
「…ハァ…ハァ……だがな、大将に迄、登り詰めた今や…俺に対してそんな口を効く人間は居ない…世の中はチカラだ…ッ……チカラだけが正義だッ……!!」
まるで血を帯びた様な歪んだ表情を、見せた
アビスを見てガルフは息を吐く。
「だからだろうな……病で命を落とした儂の弟子でお前の師は…未だ早いだろうとアビス…お前の大将就任に反対した…」
「……ッ!!其れは貴様が去ってからの話だ…ッ……解った様な口振りは控えろッ!!」
慢性的な頭痛に悩まされたアビスの表情から
既に大人びた印象は消えた。
憎しみに支配され、粗暴に言葉を投げ掛ける
今の姿に、ガルフは心を痛める。
「儂があの時、お前に脱隊の話をしていたとしても…其れもまた茨の道だ…しゃらくせぇが其の道を選ばせるつもりは無かった…」
「貴様……ッ。もう今更、そんな話は不必要だッ!!俺は此処で反逆者を討ち…俺の存在価値を改めて知らしめてやるッ!!」
アビスの身体に純白の氷雪が纏われる。
其れは、波動と絡み合い絶対的なオーラへと
変換され、姿が変貌して行く。
龍の鉤爪の様な純白の氷を宿した翼を其の背
に纏いて、氷晶が腕や脚に影響を与えて氷の
防具へと変わって行く。
更に、氷の龍の顔を模したマスクが発現して
其れが首の周りに纏わせる様に巻かれた。
「氷雪覚醒……“ 氷龍騎士”……ッ!!」
純白の龍をモデルとした覚醒。
其の翼で天を舞うアビスは刃の鋒を地上にて
見上げるガルフに突き付ける。
「貴様を殺せば…此の痛みからも解放されるだろう……」
冷たく言い放つ、アビスを見上げてガルフも
波動とギフトを錬磨し始めた。
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