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最終篇第一章 “氷天氷地を制す者”
望まぬ戦も望む所
しおりを挟む「しゃらくせぇ……チカラが正義だとほざくなら…チカラで語ってやる。望む所だ…」
黝色の波動がガルフを包む。
ガルフの額からまるで氷柱の様な一本角。
そして、肩と膝には棘を模した氷の防具。
そして、胴体は黒き氷の髑髏をモチーフの鎧
を纏って顔面は完全に髑髏へと変化する。
冷気を纏う地獄の化身、デーモンをモデルに
したガルフの覚醒の姿である。
「氷雪覚醒…“ 絶零氷鬼”……」
両者の覚醒が出揃った。
他の白柱の上は未だ平面のままだが、西ノ塔
は既に氷山地帯の一角へと変化する。
荒々しく吹雪く白と黒の雪。
冷たく凍る氷晶の大地。
其処に胴体を渦の様に巻き顕現する龍の姿。
アビスが生み出した龍は、眼前のガルフへと
勇み、威圧を放つ様に吼える。
そして、アビスが刀を天に向ける。
「語って見せろ…貴様の墓標の前でな…ッ」
「しゃらくせぇ……」
アビスが刀をサッと振り下ろすと天を舞って
いた氷龍が唸りを上げてガルフへ迫る。
だが、ガルフは面を髑髏へと変えた事で些細
な表情の変化すら見せる事無く、地を蹴る。
そして、身体を一回転させて薙ぎ払った刃で
巨大な氷の龍を一刀両断して見せた。
氷の龍の身体を形成していた氷が瓦礫の様に
砕けて降り注ぐ中でもアビスは、ひたすらに
ジッとガルフに視線を向けていた。
「アビス…そんな様子見行為は要らねェ。しゃらくせぇから本気で来やがれ…ッ!!」
氷の瓦礫と共に滑空し、アビスの首を狙った
ガルフに対して、スッと指先を向けるアビス
の行動にガルフは考えを巡らす。
そして、自身の足に変化が生じている状態を
見抜いて突進を止めて、地上へと降りる。
其の変化とは、黒き氷鎧を纏っていたガルフ
の足がアビスの纏う純白の冷気で白く凍結を
始めていたからだった。
何とか、波動を流し込み、其の白い氷を無効
にしたガルフだったが、他の地点から純白の
氷が身体を蝕み始める。
「同じ氷雪のギフトだからと言って…気を抜くなよ…ッ。俺の固有特性は…どんなモノであろうと白く染め上げる…ッ……!!」
アビスの覚醒、其の固有特性“冷気”。
周囲の気温を下げて、凍結時間を短縮させる
という、とても分かり易い特性なのだ。
だが、ギフトのチカラと特性が似通っている
タイプは損に見られがちな面もある。
何故なら、特性が無くとも其の行動はギフト
のチカラで取る事が可能だからだ。
しかし、其の考えは否である。
ギフトの性質と特性が重なるモノは相性的に
実は好相性なのである。
其の場合、チカラの効力は分かり易く言えば
二乗となるからであった。
アビスが凍結時間を短くしたと言う事は本来
の二乗のチカラを得て、高い凍結能力を会得
したと言う事であり、此れに依りガルフから
見れば此の戦いの最中は、常に全身に波動を
流して、無効を続ける事が必須と成り行動と
チカラを制限されたという訳だ。
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