RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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最終篇第三章 “兄弟が背負う哀しき因縁”

背負いし罪の奔流

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決着の刻は、近い。

霧の中に隠れたアークは二本の鎌に静かなる
波動を流し込み、大技の準備に入る。



「(霧に塗れても此の大技を使えば霧の中で波動の奔流がノアの視界にも映るなァ…攻撃の方向はバレる……だが、行くしかねェってのも事実だァ……行くぜェ!?ノアッ……此れが俺の最後の一撃だァァ…!!)」



アークは覚悟を決めた。

すると千歳緑色の波動の奔流が深い霧の中で
自身の位置を知らせるかの様に蠢き出す。

其れに反応したノアも、直ぐ様に方向転換を
して其の一撃に備えようと身構えた。

アークの二本の鎌と捕獲肢二本に総ての波動
が注ぎ込まれて準備が完了する。



「絶技… 鎌裁・断獄罪流かまさばき・だんごくざいるッッ!!!!」



構えられた計四本の鎌から高密度の千歳緑色
に染まる斬撃が放たれる。



「(しまった…想像依りも遥かに範囲も速度も桁違いだ……幾ら高速で移動しても何処かで引っ掛かる……ならば…)」



迫り来るアークの大技に対してノアは自身の
身体から吹き荒れる様に流していた嵐の波動
を更に高めて暴風の盾を身に纏う。



「ヒャハハ…乗り切れるモンならやってみやがれェェ!!ノアッッ!!!!」


「俺は…負けない。必ず此処を乗り越えて此の国を開国するのだッ!!!!」



アークの一撃が大きな衝撃波と音を奏でノア
に衝突を果たすと、嵐が総て無に帰るかの様
に消えて行く。

ノアのチカラ、調和を持っても全くの意味を
為さなかったであろう衝撃が白柱ノ塔を包み
段々と来る静けさと共に霧が戻って来る。



「終わりかよォ…ノア……ッ」



不思議と何処か寂しげな表情を見せた霧の中
のアークは物憂げに小さく呟く。

しかし、そんな時だった。

霧の中に残った衝撃の後の煙の中からノアの
姿がはっきりと映し出されたのだ。



「………ヒャハハ…生きてやがったか…それでこそ……俺の因縁の相手だァ……」



歓喜を思わせる表情へと変わったアークだが
煙が晴れて映し出されたノアの姿は無残にも
血に染まり、今にも倒れそうな程ボロボロに
なっていた事もまた事実だった。



「負けられない……俺達が示す吉報を待ち望む民が……此の国には…大勢いるのだ……背中を押されて期待を背負い……こんな霧の中で……負けました…無理でした…じゃあ恩に報いる事は敵わない…ッ!!」



血反吐を吐きながら、言葉を垂れ流すノアに
アークは黙り込んで先を見据える。



「俺達は宣言した…ッ……呼応し共に歩んでくれた勇気あるバルモアの姫と共に……此の国に…夜明けを齎すと…ッ!!其れを体現するには総長である…俺は止まれないッ!!男が一度、叶えると言ったのだ…ッ!!俺は……ッ…負ける訳には行かないのだッ!!」



ノアの想いにギフトが応え始める。

此れが最後の一撃となるであろう、其の意味
を理解しながら波動とギフトが加速する。




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