RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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最終篇第五章 “太陽を奪う者”

“涙”への呼応

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「……テメェは…何故、敵である俺にそんな事を言って泣きやがる…何がしたいんだ」



ロストはシェリーから見た敵。

しかし、シェリーは敵であるロストに向けて
単純な心配を種に言葉を紡ぎ、泣いた。

其れはシェリーの心の本当の声。

其れぐらいはロストにすら解る。

だからこそ、困惑を極めたのだ。

シェリーの涙が何度も溢れ、真下のロードに
降り注いで行く中で、ロストも声を失う。

沈黙の中、ロストは何かに反応を示す。

其れは、まさかの空。

太陽を背に一人の女性が声を放ちながら真下
のロストへと滑空しながら拳を固めていた。





「アタシの大事なシェリーちゃんを……泣かせるなァァァ!!!!」





天から降り注ぐ正に翠色の弾丸。

妖精の翼にヒラリとした短いスカート。

そして歯を食い縛り叩き込んだエメラルドの
拳はサッと差し出されたロストの持つ大剣に
阻まれるも瞬間的な圧を場に堕とし行く。

身軽に其の反動を受けて後方宙返りを決めた
其の翠色の髪の女性は背を向けたまま背後の
シェリーとロードの前に立つ。



「……新手か…」


「………ポ、ポアラ…様……?」


「うんっ!待たせてごめんねっ…シェリーちゃん…でも大丈夫…みんなちゃんと…ココに…来てるからっ!!」



軽く首を向けて微笑んだポアラから放たれた
言葉と共にシェリーの背後から強烈な勢いと
音を放ちながら鈍色の弾丸が飛ぶ。

ロストは其の弾丸を大剣で弾くも、其の背後
から更に萱草色の突風にも似た嵐が渦を巻き
ロストへと迫り行く。

ロストは其の嵐を闇にて呑み込み消し去るが
今度は自身の背後に水の音を聞いた。

急ぎ振り返るロストの懐近くから其の水の音
から湧き出る様に姿を現した青髪の青年の手
に握られた青龍刀が襲い掛かる。

しかし、ロストは其の青龍刀を大剣で防ぐと
腕を伸ばして其の青年を捕まえに掛かる。

だが、捉え切れずにまた水と消えた其の青年
もまたポアラの横に移動をした。



「み、皆様………っ…ぅ、ぅぅぅ……っ」



ポアラの横に立ったのは其の青髪の青年だけ
では無く、鈍色の弾丸を放った鋼の鎧を纏う
男性と、捩れを持つ角を額から生やし槍を肩
に乗せた褐色の青年。



「……んお?なんやなんや…なっさけないやっちゃのう…そんなんでワイのライバルがつとまるかい…このボケェ…」


「……フフ、ですが未だ息は在るようです…流石は君のライバル…とも言えるでしょう」


「待たせてしまって済まないが、まだ息をしているのなら…其れを強運であると呼ばせて貰うよ」


「……うんっ!シェリーちゃん、ごめん…っ…また負担掛けちゃうけど…ロードの回復よろしくっ!!それまでは……っ……アタシ達がコイツを止めておくからっ!!」


「………はいっ!皆様…っ……」



ロストを前に降り注いだ絶望。

其れを排除するべくシェリーに希望の灯りを
灯したのは譲れぬ仲間達。

此の窮地に、シャーレ、ポアラ、レザノフと
シグマの四人が参戦を果たしたー。
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