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4章 結社同盟
2話 デスマスクとタルタルソース
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夜明けの来ない夜もある。
何故ならここには太陽がない。
火を灯す燃料もない。
冷酷な冷気が、肉体を持たない魂を傷つける。
絶望が日常化すれば、それを感じる心は消えていく。
怨念による重すぎる罪ゆえに、浮上できない魂は、何万年も苦悩し続ける。
闇の中、冥府にはそんな魂が彷徨っている。
「あっ・・・」
闇の中で、破滅の王子は地上にいる人形の異変を感じた。
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
パニックルームの密室で、由良穂香の【家臣くん】の、もう一つの人格・破滅の王子は目を覚ました。
由良穂香が【家臣くん】と呼ぶ人形が、眠ってしまったのは紅茶に何かが入っていたのだろう。
軟禁された亡命貴族の部屋らしい趣向だ。
「しかし、地上は光に満ちている」
破滅の王子が、地上の明かりに慣れるのに、数秒要した。
「あの由良穂香がいない・・・・」
ちょっとだけ寂しさを自覚した破滅の王子は、【家臣くん】の記憶を探り、現状を理解した。
明かりに慣れた視界に、最初に入ったのは不可解な物だった。
大きな洋服ダンスサイズの箱が目の前にそびえ立っていた。
無地の白い包装紙で包まれ、赤いリボンが付けられていた。
開けて見ろ!と言う事なのだろうけど、破滅の王子は気が引けた。
きっとサプライズな何かで、開けた時に、驚かなくてはならないからだ。
さっきまで冥府にいた破滅の王子のテンションは、絶対零度に近かった。
「やれやれ・・・地上の連中は、しあわせだ」
破滅の王子は、少しでも気持ちを温めようと、冷凍食品のポタージュスープを鍋で温め、クルトンを乗せた。
クルトンを乗せたポタージュスープは、少しだけ人間世界で生きる情熱をもたらし、クルトンが楽しさを感じる心をもたらした。
「クルトン最高♪」
破滅の王子がクルトンが大好きな訳ではない。
ただ、この時この場に有ることが、最高なのだ。
ちょっと陽気になった破滅の王子は、赤いリボンを解き、白い包装紙を外した。
中には洋服ダンスが入っていた。
その洋服ダンスを開けると、デスマスクの様な能面を着けた女が入っていた。
白い仮面と白いドレス。
肩のラインを出しているのは、美しいと自覚しているからだろう。
状況から考えて、【家臣くん】が「ラマンさん」と呼ぶ女なのだろう。
多分、ここで驚くべきなのだろうが、破滅の王子は無言でラマンさんを見つめた。
「こんにちは、箱入り娘です」
ラマンは言った。
多分、ここで爆笑した方が良いのだろうけど、そこまでテンションは回復していない。
「しあわせ?」
「はい」
「それは良かった」
洋服ダンスから出てきたラマンは、白い包装紙と赤いリボンを丁寧に畳んだ。
「この世の者ではないあなたの様な者が存在している事は、様々な報告で知っていました。
お会いできて光栄です」
「この世の者ではないと知って、丸腰で対面するとは、大した度胸だな」
「この世の道理が通らない相手にどう対処しろと?」
ラマンはそう言ったが、その美しさが武器になると計算には入れているのだろう。
美しい者に敬意を払わない者にとっては、意味を成さない武器だが。
「それで?」
「あなたの目的を知りたい」
破滅の王子はため息を着いた。
ラマンが仮面の奥でどのような表情をしたのかは不明だが、ラマンも小さく息を吐いた。
ラマンは声質を少し穏やかに替えて
「あなたを私たちの味方に引き入れたい」
破滅の王子は再びため息を着いた。
ラマンも再び小さく息を吐いた。そして、瓶をテーブルの上に置いた。
白夜のタルタルソースが入った瓶だ。
「これ必要なんでしょう。私たちが全部回収したけど・・」
ラマンは、指にタルタルソースを付けると、破滅の王子の口に運んだ。
「あなたを家臣にしたいとは思わない。でも、私はあなたの僕に、なりたい」
ラマンと破滅の王子は、ややこし関係を思った。
破滅の王子が宿る【家臣くん】は、由良穂香の家臣。
ラマンは由良穂香の師匠。そしてラマンは破滅の王子の僕。
指が由良穂香の家臣の口に触れた瞬間、ラマンは少しだけ罪悪感を感じ、由良穂香の愛おしい者を見ている目を思い出した。
ラマンは、子どもだと思ってた穂香が、あんな目をしたのにはちょっと驚いた。
つづく
秘密結社な小説への御来訪、ありがとうございます。 [壁]‥) チラッ
何故ならここには太陽がない。
火を灯す燃料もない。
冷酷な冷気が、肉体を持たない魂を傷つける。
絶望が日常化すれば、それを感じる心は消えていく。
怨念による重すぎる罪ゆえに、浮上できない魂は、何万年も苦悩し続ける。
闇の中、冥府にはそんな魂が彷徨っている。
「あっ・・・」
闇の中で、破滅の王子は地上にいる人形の異変を感じた。
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パニックルームの密室で、由良穂香の【家臣くん】の、もう一つの人格・破滅の王子は目を覚ました。
由良穂香が【家臣くん】と呼ぶ人形が、眠ってしまったのは紅茶に何かが入っていたのだろう。
軟禁された亡命貴族の部屋らしい趣向だ。
「しかし、地上は光に満ちている」
破滅の王子が、地上の明かりに慣れるのに、数秒要した。
「あの由良穂香がいない・・・・」
ちょっとだけ寂しさを自覚した破滅の王子は、【家臣くん】の記憶を探り、現状を理解した。
明かりに慣れた視界に、最初に入ったのは不可解な物だった。
大きな洋服ダンスサイズの箱が目の前にそびえ立っていた。
無地の白い包装紙で包まれ、赤いリボンが付けられていた。
開けて見ろ!と言う事なのだろうけど、破滅の王子は気が引けた。
きっとサプライズな何かで、開けた時に、驚かなくてはならないからだ。
さっきまで冥府にいた破滅の王子のテンションは、絶対零度に近かった。
「やれやれ・・・地上の連中は、しあわせだ」
破滅の王子は、少しでも気持ちを温めようと、冷凍食品のポタージュスープを鍋で温め、クルトンを乗せた。
クルトンを乗せたポタージュスープは、少しだけ人間世界で生きる情熱をもたらし、クルトンが楽しさを感じる心をもたらした。
「クルトン最高♪」
破滅の王子がクルトンが大好きな訳ではない。
ただ、この時この場に有ることが、最高なのだ。
ちょっと陽気になった破滅の王子は、赤いリボンを解き、白い包装紙を外した。
中には洋服ダンスが入っていた。
その洋服ダンスを開けると、デスマスクの様な能面を着けた女が入っていた。
白い仮面と白いドレス。
肩のラインを出しているのは、美しいと自覚しているからだろう。
状況から考えて、【家臣くん】が「ラマンさん」と呼ぶ女なのだろう。
多分、ここで驚くべきなのだろうが、破滅の王子は無言でラマンさんを見つめた。
「こんにちは、箱入り娘です」
ラマンは言った。
多分、ここで爆笑した方が良いのだろうけど、そこまでテンションは回復していない。
「しあわせ?」
「はい」
「それは良かった」
洋服ダンスから出てきたラマンは、白い包装紙と赤いリボンを丁寧に畳んだ。
「この世の者ではないあなたの様な者が存在している事は、様々な報告で知っていました。
お会いできて光栄です」
「この世の者ではないと知って、丸腰で対面するとは、大した度胸だな」
「この世の道理が通らない相手にどう対処しろと?」
ラマンはそう言ったが、その美しさが武器になると計算には入れているのだろう。
美しい者に敬意を払わない者にとっては、意味を成さない武器だが。
「それで?」
「あなたの目的を知りたい」
破滅の王子はため息を着いた。
ラマンが仮面の奥でどのような表情をしたのかは不明だが、ラマンも小さく息を吐いた。
ラマンは声質を少し穏やかに替えて
「あなたを私たちの味方に引き入れたい」
破滅の王子は再びため息を着いた。
ラマンも再び小さく息を吐いた。そして、瓶をテーブルの上に置いた。
白夜のタルタルソースが入った瓶だ。
「これ必要なんでしょう。私たちが全部回収したけど・・」
ラマンは、指にタルタルソースを付けると、破滅の王子の口に運んだ。
「あなたを家臣にしたいとは思わない。でも、私はあなたの僕に、なりたい」
ラマンと破滅の王子は、ややこし関係を思った。
破滅の王子が宿る【家臣くん】は、由良穂香の家臣。
ラマンは由良穂香の師匠。そしてラマンは破滅の王子の僕。
指が由良穂香の家臣の口に触れた瞬間、ラマンは少しだけ罪悪感を感じ、由良穂香の愛おしい者を見ている目を思い出した。
ラマンは、子どもだと思ってた穂香が、あんな目をしたのにはちょっと驚いた。
つづく
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