破滅の王子と武者倶楽部 美少女は秘密結社のエージェント♪

健野屋文乃(たけのやふみの)

文字の大きさ
33 / 40
4章 結社同盟

2話 デスマスクとタルタルソース

しおりを挟む
夜明けの来ない夜もある。
何故ならここには太陽がない。
火を灯す燃料もない。

冷酷な冷気が、肉体を持たない魂を傷つける。

絶望が日常化すれば、それを感じる心は消えていく。
怨念による重すぎる罪ゆえに、浮上できない魂は、何万年も苦悩し続ける。

闇の中、冥府にはそんな魂が彷徨っている。

「あっ・・・」

闇の中で、破滅の王子は地上にいる人形の異変を感じた。


□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□



パニックルームの密室で、由良穂香の【家臣くん】の、もう一つの人格・破滅の王子は目を覚ました。

由良穂香が【家臣くん】と呼ぶ人形が、眠ってしまったのは紅茶に何かが入っていたのだろう。
軟禁された亡命貴族の部屋らしい趣向だ。

「しかし、地上は光に満ちている」

破滅の王子が、地上の明かりに慣れるのに、数秒要した。

「あの由良穂香がいない・・・・」

ちょっとだけ寂しさを自覚した破滅の王子は、【家臣くん】の記憶を探り、現状を理解した。


明かりに慣れた視界に、最初に入ったのは不可解な物だった。

大きな洋服ダンスサイズの箱が目の前にそびえ立っていた。
無地の白い包装紙で包まれ、赤いリボンが付けられていた。

開けて見ろ!と言う事なのだろうけど、破滅の王子は気が引けた。
きっとサプライズな何かで、開けた時に、驚かなくてはならないからだ。
さっきまで冥府にいた破滅の王子のテンションは、絶対零度に近かった。

「やれやれ・・・地上の連中は、しあわせだ」


破滅の王子は、少しでも気持ちを温めようと、冷凍食品のポタージュスープを鍋で温め、クルトンを乗せた。
クルトンを乗せたポタージュスープは、少しだけ人間世界で生きる情熱をもたらし、クルトンが楽しさを感じる心をもたらした。

「クルトン最高♪」

破滅の王子がクルトンが大好きな訳ではない。
ただ、この時この場に有ることが、最高なのだ。


ちょっと陽気になった破滅の王子は、赤いリボンを解き、白い包装紙を外した。
中には洋服ダンスが入っていた。
その洋服ダンスを開けると、デスマスクの様な能面を着けた女が入っていた。
白い仮面と白いドレス。
肩のラインを出しているのは、美しいと自覚しているからだろう。
状況から考えて、【家臣くん】が「ラマンさん」と呼ぶ女なのだろう。

多分、ここで驚くべきなのだろうが、破滅の王子は無言でラマンさんを見つめた。

「こんにちは、箱入り娘です」

ラマンは言った。
多分、ここで爆笑した方が良いのだろうけど、そこまでテンションは回復していない。

「しあわせ?」

「はい」

「それは良かった」

洋服ダンスから出てきたラマンは、白い包装紙と赤いリボンを丁寧に畳んだ。


「この世の者ではないあなたの様な者が存在している事は、様々な報告で知っていました。
お会いできて光栄です」

「この世の者ではないと知って、丸腰で対面するとは、大した度胸だな」

「この世の道理が通らない相手にどう対処しろと?」

ラマンはそう言ったが、その美しさが武器になると計算には入れているのだろう。
美しい者に敬意を払わない者にとっては、意味を成さない武器だが。

「それで?」

「あなたの目的を知りたい」

破滅の王子はため息を着いた。
ラマンが仮面の奥でどのような表情をしたのかは不明だが、ラマンも小さく息を吐いた。
ラマンは声質を少し穏やかに替えて

「あなたを私たちの味方に引き入れたい」

破滅の王子は再びため息を着いた。
ラマンも再び小さく息を吐いた。そして、瓶をテーブルの上に置いた。
白夜のタルタルソースが入った瓶だ。

「これ必要なんでしょう。私たちが全部回収したけど・・」

ラマンは、指にタルタルソースを付けると、破滅の王子の口に運んだ。

「あなたを家臣にしたいとは思わない。でも、私はあなたの僕に、なりたい」


ラマンと破滅の王子は、ややこし関係を思った。
破滅の王子が宿る【家臣くん】は、由良穂香の家臣。
ラマンは由良穂香の師匠。そしてラマンは破滅の王子の僕。


指が由良穂香の家臣の口に触れた瞬間、ラマンは少しだけ罪悪感を感じ、由良穂香の愛おしい者を見ている目を思い出した。

ラマンは、子どもだと思ってた穂香が、あんな目をしたのにはちょっと驚いた。



つづく


秘密結社な小説への御来訪、ありがとうございます。 [壁]‥) チラッ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を

花籠しずく
キャラ文芸
 ――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。  月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。  帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。 「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」  これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。 ※R-15っぽいゆるい性描写があります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...