1 / 1
わたしたちの気持ちの様に。
しおりを挟む
コンパクトカーの後部座席には、望遠鏡が置かれていた。
普通では買えない超高性能な望遠鏡だ。
「見たくない人はそれで良いんじゃない」
わたしの言葉に、彼は頷いた。
彼とは、友人としての付き合いは短いけど、信頼できる男だとは思う。
そんな彼は白いパーカーを着ていた。
わたしは、こんな日にどんな服を着た言ったら良いのか、迷った結果、紺色のワンピースにした。
「悪くない」
彼は言ってくれた。
高原の駐車場にはすでに5台の車とバイクが3台停まっていた。
「まあ、こんなモノかな」
無表情のまま彼は言った。
全員集まれば50人なのだが、20人ってとこかな。
「そんなモノだね」
わたしは同意の台詞を言った。
わたしたちは、駐車場からさらに高地を目指して、山を登った。
空は青く、天気は良好。
夜になると、きっと満天の星空が見えるだろう。
わたしたちはテントを張って、その時を待った。
青い空はやがて闇に包まれた。
わたしたちの気持ちの様に。
17人がそれぞれ望遠鏡を覗きこんだ。
わたしたちはその輝く星をじっと見つめた。
わたしはチラッと腕時計を見た。後、数秒だ。
望遠鏡の中のその輝きが大きく増した。
小さな太陽系の恒星が爆発したのだ。
光の速さの関係で、実際にはもっと前の災害だった。
わたしたちが生まれ育った惑星が所属する太陽だ。
地球から見ると、とっても小さな輝きだった。
「あっ」
誰かが声を出しただけで、みんな無音だった。
わたしたちの星は滅び、わたしたちの文明も滅亡した。
涙が止まらなかった。
わたしたちには、どうしようもなかった。
そんなわたしたちに、優しい風が吹いた。
わたしは、そこに地球の意思を感じた。
「ありがと」
闇の中で彼の呟く声が聞こえた。
完
普通では買えない超高性能な望遠鏡だ。
「見たくない人はそれで良いんじゃない」
わたしの言葉に、彼は頷いた。
彼とは、友人としての付き合いは短いけど、信頼できる男だとは思う。
そんな彼は白いパーカーを着ていた。
わたしは、こんな日にどんな服を着た言ったら良いのか、迷った結果、紺色のワンピースにした。
「悪くない」
彼は言ってくれた。
高原の駐車場にはすでに5台の車とバイクが3台停まっていた。
「まあ、こんなモノかな」
無表情のまま彼は言った。
全員集まれば50人なのだが、20人ってとこかな。
「そんなモノだね」
わたしは同意の台詞を言った。
わたしたちは、駐車場からさらに高地を目指して、山を登った。
空は青く、天気は良好。
夜になると、きっと満天の星空が見えるだろう。
わたしたちはテントを張って、その時を待った。
青い空はやがて闇に包まれた。
わたしたちの気持ちの様に。
17人がそれぞれ望遠鏡を覗きこんだ。
わたしたちはその輝く星をじっと見つめた。
わたしはチラッと腕時計を見た。後、数秒だ。
望遠鏡の中のその輝きが大きく増した。
小さな太陽系の恒星が爆発したのだ。
光の速さの関係で、実際にはもっと前の災害だった。
わたしたちが生まれ育った惑星が所属する太陽だ。
地球から見ると、とっても小さな輝きだった。
「あっ」
誰かが声を出しただけで、みんな無音だった。
わたしたちの星は滅び、わたしたちの文明も滅亡した。
涙が止まらなかった。
わたしたちには、どうしようもなかった。
そんなわたしたちに、優しい風が吹いた。
わたしは、そこに地球の意思を感じた。
「ありがと」
闇の中で彼の呟く声が聞こえた。
完
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。
しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。
そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる