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魔王と毒?
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ブレイブの住む村に異国からの行商人がやってきた。
異国の織物や茶器が並ぶ中、ナッツを煎じて砂糖と混ぜた茶色く香ばしい甘味、「チョコレート」と呼ばれるものが一際目立った。
村の住人が我先にと品物を取り合う中、ブレイブは何とかしてそのチョコレートを手にし、会計を済ませる。
帰ってから鍋に固形を入れてミルクで煮てみると、甘い香りと暖かな湯気が立ち込める。
鍋の中はマイルドな薄茶色になっていて、玉杓子で一口味見をすれば濃厚なナッツの香りと程よい甘さに虜になった。
『ふむ、甘い匂いがする』
背後に表れたディアボロスは部屋の甘い香りにスン…と鼻を鳴らした。
「ディアボロス!来てくれたんだな。ちょこ、れえと?って奴を手に入れたんだ。ディアボロスも飲むか?滅茶苦茶美味いぜ」
『人間の甘味はあまり口にしたことがないな。貰うとしよう』
ディアボロスの言葉に、ブレイブはいそいそとカップにチョコレートを注いだ。
そ…と口をつけてディアボロスが飲み込むと、しばらく間が開いた後ブワア!!っと温い空気が辺りを包んだ。
「うぉわ!?ディ、ディアボロス!?」
『む…これは…すまん、医者に……』
そう言って立ち上がった瞬間、ディアボロスがガクリと膝を突いた。
これはただ事ではないと感じたブレイブはディアボロスを担ごうとするものの、その巨体は非力なブレイブでは引きずることすら困難であった。
『案ずる…な…ここに、呼べ…る』
心配するブレイブを宥めながらディアボロスが手を空間にかざすと、黒い裂け目が表れる。
その中から、巨大な耳と鼻を持った、年老いた老人の様なモンスターがのしのしと歩いてやってきた。
「魔王様。貴方が私を呼ばれるとは珍しい」
『すまぬ…感じたことも、ない…熱さだ…』
ぐったりとしたディアボロスを、魔族の医者が調べる。見知らぬ器具をかざしたりして調べていると、ふう…と医師がため息を吐いた。
「魔王様。今の貴方は病ではない熱に侵されております。何か飲食をされたのでは」
『人間の…甘味を…』
「あ、えっと、ディアボロスはチョコレートを飲んだだけなんだけど…」
ブレイブの言葉に、医師はなるほど…と呟く。
「恐らくそれが原因でしょうな。魔族の体にはよろしくない成分のようだ」
『毒に、なったと』
「ただの毒ならば貴方には蚊に刺された程度の影響しかないでしょう。人間でいう欲を促す…所謂、媚薬としての影響があったようですな」
その言葉に一番驚いたのはチョコレートを用意したブレイブだった。様々な毒でも倒れないであろうディアボロスがまさかチョコレート如きで倒れるほどの熱に侵されるとは。
「人間にも血行を促す成分が含まれているらしい…が、魔族には直接的な成分が含まれているようだ。人間の青年よ、私にこれを少し持ち帰らせてもらいたい。危険な効果があるならば対策を考えねばならんのでね」
「あ、そりゃもう…」
試験官にチョコレートを注ぐ医師を呆然としながら見た後、苦しそうに息を吐くディアボロスに目をやる。
『ぬう…』
「あ、大丈夫か…?」
『すまぬ…っ…』
息を荒く吐くディアボロスは、なぜかとても官能的に見えて、ブレイブは思わず目を反らした。
「ふむ…サンプルとしてはこの程度で十分か。では、魔王様。私は戻りますよ。その熱は、お相手の青年に癒してもらうのが良いでしょう」
『分かった…く…苦労かけ、た…』
医師がフ…と姿を消すと、ディアボロスはブレイブにもたれ掛かった。
『ブレイブ…頼む…我を…助けては、くれぬ、か』
「も、もちろん」
弱々しくディアボロスがブレイブの手を引き、ベッドへとブレイブを導く。
不謹慎だと思いながらも、ブレイブは心の中で異国の行商人に感謝を述べたのであった。
異国の織物や茶器が並ぶ中、ナッツを煎じて砂糖と混ぜた茶色く香ばしい甘味、「チョコレート」と呼ばれるものが一際目立った。
村の住人が我先にと品物を取り合う中、ブレイブは何とかしてそのチョコレートを手にし、会計を済ませる。
帰ってから鍋に固形を入れてミルクで煮てみると、甘い香りと暖かな湯気が立ち込める。
鍋の中はマイルドな薄茶色になっていて、玉杓子で一口味見をすれば濃厚なナッツの香りと程よい甘さに虜になった。
『ふむ、甘い匂いがする』
背後に表れたディアボロスは部屋の甘い香りにスン…と鼻を鳴らした。
「ディアボロス!来てくれたんだな。ちょこ、れえと?って奴を手に入れたんだ。ディアボロスも飲むか?滅茶苦茶美味いぜ」
『人間の甘味はあまり口にしたことがないな。貰うとしよう』
ディアボロスの言葉に、ブレイブはいそいそとカップにチョコレートを注いだ。
そ…と口をつけてディアボロスが飲み込むと、しばらく間が開いた後ブワア!!っと温い空気が辺りを包んだ。
「うぉわ!?ディ、ディアボロス!?」
『む…これは…すまん、医者に……』
そう言って立ち上がった瞬間、ディアボロスがガクリと膝を突いた。
これはただ事ではないと感じたブレイブはディアボロスを担ごうとするものの、その巨体は非力なブレイブでは引きずることすら困難であった。
『案ずる…な…ここに、呼べ…る』
心配するブレイブを宥めながらディアボロスが手を空間にかざすと、黒い裂け目が表れる。
その中から、巨大な耳と鼻を持った、年老いた老人の様なモンスターがのしのしと歩いてやってきた。
「魔王様。貴方が私を呼ばれるとは珍しい」
『すまぬ…感じたことも、ない…熱さだ…』
ぐったりとしたディアボロスを、魔族の医者が調べる。見知らぬ器具をかざしたりして調べていると、ふう…と医師がため息を吐いた。
「魔王様。今の貴方は病ではない熱に侵されております。何か飲食をされたのでは」
『人間の…甘味を…』
「あ、えっと、ディアボロスはチョコレートを飲んだだけなんだけど…」
ブレイブの言葉に、医師はなるほど…と呟く。
「恐らくそれが原因でしょうな。魔族の体にはよろしくない成分のようだ」
『毒に、なったと』
「ただの毒ならば貴方には蚊に刺された程度の影響しかないでしょう。人間でいう欲を促す…所謂、媚薬としての影響があったようですな」
その言葉に一番驚いたのはチョコレートを用意したブレイブだった。様々な毒でも倒れないであろうディアボロスがまさかチョコレート如きで倒れるほどの熱に侵されるとは。
「人間にも血行を促す成分が含まれているらしい…が、魔族には直接的な成分が含まれているようだ。人間の青年よ、私にこれを少し持ち帰らせてもらいたい。危険な効果があるならば対策を考えねばならんのでね」
「あ、そりゃもう…」
試験官にチョコレートを注ぐ医師を呆然としながら見た後、苦しそうに息を吐くディアボロスに目をやる。
『ぬう…』
「あ、大丈夫か…?」
『すまぬ…っ…』
息を荒く吐くディアボロスは、なぜかとても官能的に見えて、ブレイブは思わず目を反らした。
「ふむ…サンプルとしてはこの程度で十分か。では、魔王様。私は戻りますよ。その熱は、お相手の青年に癒してもらうのが良いでしょう」
『分かった…く…苦労かけ、た…』
医師がフ…と姿を消すと、ディアボロスはブレイブにもたれ掛かった。
『ブレイブ…頼む…我を…助けては、くれぬ、か』
「も、もちろん」
弱々しくディアボロスがブレイブの手を引き、ベッドへとブレイブを導く。
不謹慎だと思いながらも、ブレイブは心の中で異国の行商人に感謝を述べたのであった。
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