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第十九代白神家当主 ⑨
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ガラスの片付けを手伝おうとする俺を、結女さんが許さなかった。
俺はこの問題を何とかすることを白神家に人に約束して白神家を後にする。
それにしても、いい年をした爺さんがあんな馬鹿な真似を率先してやるとは、、、。呆れてものが言えない。
杜人家に戻ると、何やら家の中が騒がしい。玄関には靴が散乱していた。
俺を見つけた、杜人家の使用人が俺に駆け寄って来る。
「守人様。今、賢人さまのところにお客様がお見えになっていますので、お部屋にお戻りください。夕食は、お部屋にお持ちします。」
俺は言われるままに、祖母の部屋に戻った。
少しして、使用人が食事をもって部屋に現われる。
「ずいぶん賑やかですね。どういったお客さんなんですか?」
「この辺のヴァンパイアをまとめてる方なんですが、苦情で来られたようですよ。守人様には関係ない事ですから、気になさらずお食事を召し上がってください。」
俺は食事をし、ベッドの上に寝転がる。政宗守を半分ほど引き上げると、また心臓の鼓動が早くなる。俺は急いで部屋にある鏡の前まで行った。
口の中を鏡に映して見る。普段なら可愛い犬歯の生えている場所に、鋭い牙が生えていた。
こりゃ、虫歯になったら大変だな、、。ヴァンパイアの牙って永久歯なんだろうか?抜けたり虫歯になったらまた生えてくるのかな?色々と気になった俺は、洗面所まで歯を磨きに行くことにした。
やっぱり、虫歯予防には食後の歯磨きでしょう。
部屋を出ると、さっき食事を持ってきた使用人が慌てた様子でこちらに走って来る。
「食事済みました。後で台所に下げておきますから。」
「それは、私が下げますから。それより、守人様。賢人様たちが守人様をお呼びです。今すぐ広間に行ってください。」
そう言われて、俺は広間に急いだ。
「あの。本田ですけど、俺のこと呼びました?」
「守人様。お入りください。」
そう言われて俺は広間に入る。広間はいつもはない薄い布のようなもので仕切られていた。
布の向こうに、客人と思われる男が数人、ひれ伏しているのがカーテン越しに透けて見える。
「守人様もご一緒に、この者たちの話をお聞きください。この者たちの話は、守人様にも関わりのある話のようなので。」
俺は、賢人の隣に置かれた座布団に座る。
「さぁ、第二十代の守人様が参りました。先ほどの話を守人様にもしてください。」
「守人様。ご就任おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます。」
守人就任なんか、ちっともめでたくないが、一応お礼を言う。それにしてもこの声、聞き覚えがあるような、、、。
「実は、本日こちらにお伺いしましたのは、白神家を何とかしてほしいという事なんです。」
ああああああ!この声、さっき白神家を襲撃したジジイか。なんだよ、ガラスかたずけて帰れって言ったのに、片付けないで帰った挙句、こんなところに告げ口に来たのかよ、、、。
「それはどういう事でしょう。」
俺は一応、彼らの言い分を聞いてみることにした。われながら性格が悪いと思う。
「本日、私たちは、話し合いの為に白神家に参ったのですが。白神家の者が話し合うことなどないと申しまして。私たちを追い返そうとした挙句、彼らの雇った用心棒に脅されました。この用心棒がめっぽうな手練れでして、無抵抗の我々に酷い暴力をふるってきたんでございます。」
うそつけ。先に手を出してきたのはそっちじゃんか。
「もう、私たちも我慢の限界です。どうか、白神家をこの土地から追放していただけないでしょうか?」
「と、このように申しておりますが、守人様のご意見をお聞かせください。」
女性の賢人が、俺に意見を求める。
「話し合いって、いったい何を話し合いに行かれたんですか?」
「そ、そ、それは、色々でございます。」
「色々ねぇ。あなた達は、白神の人たちをどうすれば満足なさるのですか?」
「この土地からの追放ですよ。だって当然でございましょう、守人様。先代の白神家当主が、先代の守人様にしたことを考えれば、、。追放では生ぬるいくらいですよ。」
「そんなもんですかね。私は白神家の人々には罪がないと考えているんですけど。あれは、先代の当主の罪であって、そのほかの白神家の人には関係ないじゃないですか。」
「なんとも、お優しいお言葉。この桜井感動いたします。」
この区長の爺さんは桜井っていうのか、、、。
「我々も、今までは守人様と同じように考えて、白神家に親切にしてきました。ですか、今日の狼藉は許せません。親切に接してきた我々の恩を、あだで返すようなあの振る舞い。用心棒を雇って無抵抗の我々に怪我を負わせるとは、、。もし、本日、守人様からお許しがいただければ、明日にでも土地の若い者を集め、白神家に乗り込み、かれらの雇った用心棒を、二度と立ち上がれぬほどに打ち据え、汚れた白神家をこの土地から追い払いたいと考えております。」
この爺さん、ほんとぬけぬけと嘘八百を並べ立てるもんだ。
「こちらにおりますのは、私の孫で正博と申しますが、心の優しい子でして、白神の娘と同じ年で同じ学校に通っております。あのような悪童が学校にいたのでは、安心して学校に通わせることが出来ません。他の親御さんたちも同じように言っております。」
うわわわっ。あのガキ、じいさんの孫だったのかよ。何が心の優しい子だ。俺に石を投げたり、ヤジを飛ばしてたじゃないかよ。こんなガキと同級生だったなら、ゆずは学校でも辛い思いをしてたのかもしれないな。
「ちょっとお聞きしたいのですが、桜井さんが、そこまで白神家を嫌うのはなんでなんですか?」
「嫌ってなどおりません。いいえ、守人様の言う通りかもしれません。心の中では先代の守人様に酷いことをした極悪人の白神家を憎んでいるのかもしれません。それは、守人様も一緒のはずです!愛する先代の守人様を死に追いやった白神の事を許せない。それはヴァンパイアの民として当然のことではないでしょうか。うっううっ。」
なんだ?今度は嘘泣きを始めたのか、、、。演技が下手すぎるよ爺さん、、、。
「それでは、あなた方が白神を憎むのは、守人に酷いことをした悪人だからということなんですね。」
「そうでございます。」
「それならなおさら、明日白神家に行くのはよした方が良いでしょう。」
「えっ?それはどういうことで?」
「だって、あなた方が明日、白神家に行って、その用心棒を二度と立ち上がれぬほどに打ち据えちゃったら、あなた達も守人に酷いことをした極悪人になって、この土地から出て行かなければならなくなっちゃいますよ。」
今まで滑らかに嘘をついていた桜井の爺さんの口が止まる。
「だめだめ。やっぱり明日は白神家に行ってください。そして、彼らに対して今までしてきた様々な嫌がらせを謝罪して、これまでに彼らに与えた損害の弁償をして来て下さい。」
俺は布の隙間から、顔を出す。
桜井の爺さんは、顎が外れたのかと思うくらい大きな口を開けて俺の顔を見ている。
「それと、、、。今日、俺が白神家に行ったのは、第十九代白神家当主、白神譲に任務復帰をお願いする為ですから、あの家族は堂々とあの土地に住んでも構いませんよね?」
「もちろんです。守人様。」
桜井老人は、最初の勢いがどこへ行ったのかと思うほど小さくなっていた。
「それと、正博!お前、守人の俺に石を投げたよな。」
俺が正博を睨むと、正博は顔をぐしゃぐしゃにして泣き始めた。
「申し訳ありません。守人様。子どものしたことです。お許しください。お許しください。」
桜井の爺さんは畳に頭を擦りつけて平謝りに謝った。他の男たちも顔面蒼白になっている。
「正博。お前、男だろ。男が女の子をいじめるなんて最低だ!俺のじいさんは女の人と子どもには親切にしろって言って俺を育てた。これから、お前も女の人と子どもには親切にしろ。困っている人がいたら助けてあげるんだ。約束できるか?」
「は、はい。約束しますぅ。」
正博が泣きながら答える。ちょっとやり過ぎたか、、。
俺は正博の頭を撫でながら、
「わかった。じゃ指切りしようか。男と男の約束だ。」
そう言って小指を出す。
俺と正博は指切りをして約束を交わした。
すっかりしょげ返った桜井区長一行は、とぼとぼと家路につく。これで全ての問題が片付いたとは思えないが、とりあえず問題の一つは片付いたと思う。
俺はこの問題を何とかすることを白神家に人に約束して白神家を後にする。
それにしても、いい年をした爺さんがあんな馬鹿な真似を率先してやるとは、、、。呆れてものが言えない。
杜人家に戻ると、何やら家の中が騒がしい。玄関には靴が散乱していた。
俺を見つけた、杜人家の使用人が俺に駆け寄って来る。
「守人様。今、賢人さまのところにお客様がお見えになっていますので、お部屋にお戻りください。夕食は、お部屋にお持ちします。」
俺は言われるままに、祖母の部屋に戻った。
少しして、使用人が食事をもって部屋に現われる。
「ずいぶん賑やかですね。どういったお客さんなんですか?」
「この辺のヴァンパイアをまとめてる方なんですが、苦情で来られたようですよ。守人様には関係ない事ですから、気になさらずお食事を召し上がってください。」
俺は食事をし、ベッドの上に寝転がる。政宗守を半分ほど引き上げると、また心臓の鼓動が早くなる。俺は急いで部屋にある鏡の前まで行った。
口の中を鏡に映して見る。普段なら可愛い犬歯の生えている場所に、鋭い牙が生えていた。
こりゃ、虫歯になったら大変だな、、。ヴァンパイアの牙って永久歯なんだろうか?抜けたり虫歯になったらまた生えてくるのかな?色々と気になった俺は、洗面所まで歯を磨きに行くことにした。
やっぱり、虫歯予防には食後の歯磨きでしょう。
部屋を出ると、さっき食事を持ってきた使用人が慌てた様子でこちらに走って来る。
「食事済みました。後で台所に下げておきますから。」
「それは、私が下げますから。それより、守人様。賢人様たちが守人様をお呼びです。今すぐ広間に行ってください。」
そう言われて、俺は広間に急いだ。
「あの。本田ですけど、俺のこと呼びました?」
「守人様。お入りください。」
そう言われて俺は広間に入る。広間はいつもはない薄い布のようなもので仕切られていた。
布の向こうに、客人と思われる男が数人、ひれ伏しているのがカーテン越しに透けて見える。
「守人様もご一緒に、この者たちの話をお聞きください。この者たちの話は、守人様にも関わりのある話のようなので。」
俺は、賢人の隣に置かれた座布団に座る。
「さぁ、第二十代の守人様が参りました。先ほどの話を守人様にもしてください。」
「守人様。ご就任おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます。」
守人就任なんか、ちっともめでたくないが、一応お礼を言う。それにしてもこの声、聞き覚えがあるような、、、。
「実は、本日こちらにお伺いしましたのは、白神家を何とかしてほしいという事なんです。」
ああああああ!この声、さっき白神家を襲撃したジジイか。なんだよ、ガラスかたずけて帰れって言ったのに、片付けないで帰った挙句、こんなところに告げ口に来たのかよ、、、。
「それはどういう事でしょう。」
俺は一応、彼らの言い分を聞いてみることにした。われながら性格が悪いと思う。
「本日、私たちは、話し合いの為に白神家に参ったのですが。白神家の者が話し合うことなどないと申しまして。私たちを追い返そうとした挙句、彼らの雇った用心棒に脅されました。この用心棒がめっぽうな手練れでして、無抵抗の我々に酷い暴力をふるってきたんでございます。」
うそつけ。先に手を出してきたのはそっちじゃんか。
「もう、私たちも我慢の限界です。どうか、白神家をこの土地から追放していただけないでしょうか?」
「と、このように申しておりますが、守人様のご意見をお聞かせください。」
女性の賢人が、俺に意見を求める。
「話し合いって、いったい何を話し合いに行かれたんですか?」
「そ、そ、それは、色々でございます。」
「色々ねぇ。あなた達は、白神の人たちをどうすれば満足なさるのですか?」
「この土地からの追放ですよ。だって当然でございましょう、守人様。先代の白神家当主が、先代の守人様にしたことを考えれば、、。追放では生ぬるいくらいですよ。」
「そんなもんですかね。私は白神家の人々には罪がないと考えているんですけど。あれは、先代の当主の罪であって、そのほかの白神家の人には関係ないじゃないですか。」
「なんとも、お優しいお言葉。この桜井感動いたします。」
この区長の爺さんは桜井っていうのか、、、。
「我々も、今までは守人様と同じように考えて、白神家に親切にしてきました。ですか、今日の狼藉は許せません。親切に接してきた我々の恩を、あだで返すようなあの振る舞い。用心棒を雇って無抵抗の我々に怪我を負わせるとは、、。もし、本日、守人様からお許しがいただければ、明日にでも土地の若い者を集め、白神家に乗り込み、かれらの雇った用心棒を、二度と立ち上がれぬほどに打ち据え、汚れた白神家をこの土地から追い払いたいと考えております。」
この爺さん、ほんとぬけぬけと嘘八百を並べ立てるもんだ。
「こちらにおりますのは、私の孫で正博と申しますが、心の優しい子でして、白神の娘と同じ年で同じ学校に通っております。あのような悪童が学校にいたのでは、安心して学校に通わせることが出来ません。他の親御さんたちも同じように言っております。」
うわわわっ。あのガキ、じいさんの孫だったのかよ。何が心の優しい子だ。俺に石を投げたり、ヤジを飛ばしてたじゃないかよ。こんなガキと同級生だったなら、ゆずは学校でも辛い思いをしてたのかもしれないな。
「ちょっとお聞きしたいのですが、桜井さんが、そこまで白神家を嫌うのはなんでなんですか?」
「嫌ってなどおりません。いいえ、守人様の言う通りかもしれません。心の中では先代の守人様に酷いことをした極悪人の白神家を憎んでいるのかもしれません。それは、守人様も一緒のはずです!愛する先代の守人様を死に追いやった白神の事を許せない。それはヴァンパイアの民として当然のことではないでしょうか。うっううっ。」
なんだ?今度は嘘泣きを始めたのか、、、。演技が下手すぎるよ爺さん、、、。
「それでは、あなた方が白神を憎むのは、守人に酷いことをした悪人だからということなんですね。」
「そうでございます。」
「それならなおさら、明日白神家に行くのはよした方が良いでしょう。」
「えっ?それはどういうことで?」
「だって、あなた方が明日、白神家に行って、その用心棒を二度と立ち上がれぬほどに打ち据えちゃったら、あなた達も守人に酷いことをした極悪人になって、この土地から出て行かなければならなくなっちゃいますよ。」
今まで滑らかに嘘をついていた桜井の爺さんの口が止まる。
「だめだめ。やっぱり明日は白神家に行ってください。そして、彼らに対して今までしてきた様々な嫌がらせを謝罪して、これまでに彼らに与えた損害の弁償をして来て下さい。」
俺は布の隙間から、顔を出す。
桜井の爺さんは、顎が外れたのかと思うくらい大きな口を開けて俺の顔を見ている。
「それと、、、。今日、俺が白神家に行ったのは、第十九代白神家当主、白神譲に任務復帰をお願いする為ですから、あの家族は堂々とあの土地に住んでも構いませんよね?」
「もちろんです。守人様。」
桜井老人は、最初の勢いがどこへ行ったのかと思うほど小さくなっていた。
「それと、正博!お前、守人の俺に石を投げたよな。」
俺が正博を睨むと、正博は顔をぐしゃぐしゃにして泣き始めた。
「申し訳ありません。守人様。子どものしたことです。お許しください。お許しください。」
桜井の爺さんは畳に頭を擦りつけて平謝りに謝った。他の男たちも顔面蒼白になっている。
「正博。お前、男だろ。男が女の子をいじめるなんて最低だ!俺のじいさんは女の人と子どもには親切にしろって言って俺を育てた。これから、お前も女の人と子どもには親切にしろ。困っている人がいたら助けてあげるんだ。約束できるか?」
「は、はい。約束しますぅ。」
正博が泣きながら答える。ちょっとやり過ぎたか、、。
俺は正博の頭を撫でながら、
「わかった。じゃ指切りしようか。男と男の約束だ。」
そう言って小指を出す。
俺と正博は指切りをして約束を交わした。
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