勇者の弟が魔王の配下に恋をした

しょうこ

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葛藤3

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「ボクも聞いてもいいですか?」
「もちろん」
 アシェルはそうでなければフェアじゃないからねとにこやかに笑う。
「……ディランさんが魔王の使いだって言ったって」
「うん」
「その時の様子とか聞いても大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だよ」
 アシェルはイーサンとアイザックの反応を確認してからノアにその時のことを話し始めた。
 それはイーサンたちが西の森を調査し終えて王都に戻った時だった。西の森の調査では魔物が多数姿を現し、互いに動向を窺う気配に辟易したことを覚えている。こちら側も探られているような気配にそれまでで一番疲れた調査だったとアシェルは言う。
「それでまあその報告をしている最中に彼は突然現れたんだ」
「誰一人彼が話し始めるまでそこにいることに気づかなかった」
 イーサンが眉を潜める。
「それでね、彼はこう言ったんだ。無駄な争いはやめないか? とね」
 アシェルはノアの目を真っ直ぐに見つめた。
「力の差は歴然としている。そちらが侵攻を中止すればこちらもそれに従おうってね」
 突然現れて何を言っているのかとその場は騒然としたよね。アシェルの言葉にアイザックが「よく覚えている」と眉間にシワを寄せて腕を組んだ。
「素性もわからない侵入者に剣先をむけた兵士たちは一瞬で突如出現した波に拐われていった」
「え……?」
「それから自己紹介が遅れたと言ってウーラノス国の使者だと、王の側近であるってね。この声は主の言葉と同じと覚えよとか何とか言っていたな」
「オレも覚えてる」
「幸い兵士たちは王都の外れで全員ずぶ濡れで発見されたから大事には至らなかった」
 イーサンたちはその時のことを思い出して苦々しい表情を浮かべている。
「こちらとしては既に魔物に多数襲われているし、そもそもウーラノス国がこちらへ攻撃を仕掛けてきたんだ。しかも本当にウーラノス国の使者かもわからない奴の言葉を素直に信じることもできないだろう?」
「証拠はあるのかと、誰かが言ったんだ」
「ただその言葉が引き金だった」
 アシェルは悔しそうに表情を歪めた。
「奴はどうやって連れてきたのか呼んだのかもわからないが、西の森の調査で確認した獣の様な魔物をその場に何体も放ったんだ」
「そこからは酷かったよ……」
 複数の魔物と一触即発の中奴はこれで証拠にはなったかな? と一人場違いな明るい声で言ったんだ。
「こちらとしてはその魔物はついさっきまで森で睨み合っていたのとそっくりでもうそれだけで辟易してたのに、馬鹿な兵士が動いたものだからそこからはお察しの通り」
 一瞬にしてその場は戦場の様になったらしい。
「こっちは必死で戦っているのに面倒臭そうに見下ろされていたのを今でも覚えているよ」
「幸い死人や酷い怪我人はでなかったがこちらとしてはかなりの損失を被った」
「まあ、そんなんでこちらはやつをウーラノス国の使者だと理解したがあちらはいつの間にかいなくなってたよ」
「気づいた時にはボロボロになった俺たちだけで魔物もいつの間にか消えてたな」
 はあ、と深い溜め息と共にアシェルがこんな感じでいいかなとノアに尋ねた。
「……うん……教えてくれてありがとうございます……」
 頭を下げるノアにアシェルは微笑んでこちらこそ話してくれてありがとうとノアの頭を撫でた。
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