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「これからも君の優しさと笑顔で」
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十分に大人と言われる年齢になった男でも寂しくて堪らない夜がある。
そして、今、まさにそうだった。
今は夜の9時。
社会人の俺にとっては眠るのにはいつもなら、まだ早過ぎる時間だ。
だけど、今日は仕事が珍しく定時であがれて、特にやることもなくて、最初はテレビを見ていたけど、何だか段々寂しいという気持ちが沸きあがってきて、そんな気持ちから逃れたいと思い、こんなには早くベッドに入った。
本当はこんなに寂しさを感じる夜は彼女の瑠美に会いたいけれど、今日はまだ水曜日で、瑠美も俺と同じ月曜日から金曜日までが仕事で、しかも最近、残業続きだとも言っていたから、こんな夜から俺の我儘で俺につきあわせるわけにはいかなかった。
大丈夫。きっと、もうすぐ眠りにつくことができる。
今日は早く帰れたけど、昨日まではずっと残業続きで疲れているはずだから。
そう思って目を瞑るけれど、意識しすぎるせいか余計に眠れなかった。
早くこの寂しさから解放されたいのに。
そう思って何度か寝かえりをうった後、ピーンポーンとチャイムが鳴った。
誰?
傍にある目覚まし時計を見ると、もう夜の10時を回っていた。
結局、もう1時間も眠りにつけないんでいたんだな。
俺はそう思った後、立ち上がって、インターホンの受話器を手に取った。
「はい?」
「あ、勇斗? 私だけど」
インターホンの受話器越しに聞こえてきたのは俺が今、もの凄く会いたいと思っていた瑠美だった。
来たのが瑠美だと解った俺はすぐにドアを開けに行った。
「瑠美、どうしたんだよ。もう夜遅いのに」
本当は凄く会いたかったけど、やっぱりこんな夜に1人で俺の家まで来たのは心配だった。
「ん? 何かね急にどうしても勇斗に会いたくなっちゃって。でも、ここまで駅からはタクシーで来たから何も怖いことはなかったよ。それにね何となく勇斗も私にもの凄く会いたいんじゃないかなあなんて思ったりもして……って、それは冗談だけど」
そう言った後、瑠美はぺろっと悪戯っ子のように舌を少し出した。
俺はそんな瑠美が愛しくて堪らなくなって、ぎゅうっと凛菜を抱きしめた。
「勇斗?」
いきなり抱きしめたからか勇斗は少し驚いた感じの声を出した。
「それ冗談じゃなくて大正解だから」
「え?」
「瑠美に俺がもの凄く会いたいんじゃないかなって思ったっていうの。俺、何だか解らないけど、今日、仕事から帰ってきて、時間が過ぎると何だか段々寂しさを感じてさ。だから、本当は瑠美に会いたかったけど、夜だったし、それに瑠美、ここのところ仕事も忙しいって言ってたから、電話とかするのもやめておこうと思ってて」
俺が瑠美にそう言うと瑠美は俺から少し離れて俺を見上げた。
俺は身長は175cmで凛菜は155cmだから、俺達はかなりの身長差だ。
ちなみに俺達は同じ歳で今、26歳。俺達の出会いは共通の友人を通じての飲み会だった。
「ね、勇斗。私はどんな時でも勇斗が私を必要としてくれるのなら、絶対に会いに来るよ。そして、私も勇斗にはそうしてほしいな」
瑠美は俺を見上げたまま、そう言った。
そんなことを言ってくれる瑠美がまた更に愛しくなって、瑠美をまたぎゅっと抱きしめた。
「うん、ありがとう、瑠美。じゃあ、これからはどうしようもなく瑠美に会いたくなったら、どんな時だって正直に言うよ。そして、瑠美もそうして」
俺がそう言うと瑠美は今度は俺の腕の中で俺を見上げて、嬉しそうに笑い、
「うん、勇斗、そうしてね。そして、私も勇斗にどうしても会いたくて堪らなくなった時は、隠さないで言うからね。勇斗、大好きだよ」
「ああ、俺も瑠美が大好きだよ」
そして、俺達はキスをした。
その後、俺達はもう夜の10時過ぎで明日、お互いに仕事なのにも関わらず他愛のない話を何時間かしていた。
俺の寂しさは瑠美が来てくれた時からもう既に消えていて、今度は幸せな気持ちしかなかった。
俺はそんな幸せな気持ちを感じながら、瑠美と話している時に、
瑠美、これからもずっと傍にいて。
そして、いつだって、俺のマイナスな感情を瑠美の優しさと笑顔で吹き飛ばして。
そう思っていた。
END
そして、今、まさにそうだった。
今は夜の9時。
社会人の俺にとっては眠るのにはいつもなら、まだ早過ぎる時間だ。
だけど、今日は仕事が珍しく定時であがれて、特にやることもなくて、最初はテレビを見ていたけど、何だか段々寂しいという気持ちが沸きあがってきて、そんな気持ちから逃れたいと思い、こんなには早くベッドに入った。
本当はこんなに寂しさを感じる夜は彼女の瑠美に会いたいけれど、今日はまだ水曜日で、瑠美も俺と同じ月曜日から金曜日までが仕事で、しかも最近、残業続きだとも言っていたから、こんな夜から俺の我儘で俺につきあわせるわけにはいかなかった。
大丈夫。きっと、もうすぐ眠りにつくことができる。
今日は早く帰れたけど、昨日まではずっと残業続きで疲れているはずだから。
そう思って目を瞑るけれど、意識しすぎるせいか余計に眠れなかった。
早くこの寂しさから解放されたいのに。
そう思って何度か寝かえりをうった後、ピーンポーンとチャイムが鳴った。
誰?
傍にある目覚まし時計を見ると、もう夜の10時を回っていた。
結局、もう1時間も眠りにつけないんでいたんだな。
俺はそう思った後、立ち上がって、インターホンの受話器を手に取った。
「はい?」
「あ、勇斗? 私だけど」
インターホンの受話器越しに聞こえてきたのは俺が今、もの凄く会いたいと思っていた瑠美だった。
来たのが瑠美だと解った俺はすぐにドアを開けに行った。
「瑠美、どうしたんだよ。もう夜遅いのに」
本当は凄く会いたかったけど、やっぱりこんな夜に1人で俺の家まで来たのは心配だった。
「ん? 何かね急にどうしても勇斗に会いたくなっちゃって。でも、ここまで駅からはタクシーで来たから何も怖いことはなかったよ。それにね何となく勇斗も私にもの凄く会いたいんじゃないかなあなんて思ったりもして……って、それは冗談だけど」
そう言った後、瑠美はぺろっと悪戯っ子のように舌を少し出した。
俺はそんな瑠美が愛しくて堪らなくなって、ぎゅうっと凛菜を抱きしめた。
「勇斗?」
いきなり抱きしめたからか勇斗は少し驚いた感じの声を出した。
「それ冗談じゃなくて大正解だから」
「え?」
「瑠美に俺がもの凄く会いたいんじゃないかなって思ったっていうの。俺、何だか解らないけど、今日、仕事から帰ってきて、時間が過ぎると何だか段々寂しさを感じてさ。だから、本当は瑠美に会いたかったけど、夜だったし、それに瑠美、ここのところ仕事も忙しいって言ってたから、電話とかするのもやめておこうと思ってて」
俺が瑠美にそう言うと瑠美は俺から少し離れて俺を見上げた。
俺は身長は175cmで凛菜は155cmだから、俺達はかなりの身長差だ。
ちなみに俺達は同じ歳で今、26歳。俺達の出会いは共通の友人を通じての飲み会だった。
「ね、勇斗。私はどんな時でも勇斗が私を必要としてくれるのなら、絶対に会いに来るよ。そして、私も勇斗にはそうしてほしいな」
瑠美は俺を見上げたまま、そう言った。
そんなことを言ってくれる瑠美がまた更に愛しくなって、瑠美をまたぎゅっと抱きしめた。
「うん、ありがとう、瑠美。じゃあ、これからはどうしようもなく瑠美に会いたくなったら、どんな時だって正直に言うよ。そして、瑠美もそうして」
俺がそう言うと瑠美は今度は俺の腕の中で俺を見上げて、嬉しそうに笑い、
「うん、勇斗、そうしてね。そして、私も勇斗にどうしても会いたくて堪らなくなった時は、隠さないで言うからね。勇斗、大好きだよ」
「ああ、俺も瑠美が大好きだよ」
そして、俺達はキスをした。
その後、俺達はもう夜の10時過ぎで明日、お互いに仕事なのにも関わらず他愛のない話を何時間かしていた。
俺の寂しさは瑠美が来てくれた時からもう既に消えていて、今度は幸せな気持ちしかなかった。
俺はそんな幸せな気持ちを感じながら、瑠美と話している時に、
瑠美、これからもずっと傍にいて。
そして、いつだって、俺のマイナスな感情を瑠美の優しさと笑顔で吹き飛ばして。
そう思っていた。
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