短い恋のお話

愛理

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「どんな君でも」

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  たくさんの我儘だって僕には言っていいんだよ。
  だって、僕は君をまるごと受け入れたいって思ってるんだから。

  日曜日、1週間ぶりに会った杏里は何となく元気がないように見えた。
「杏里、俺と会ってなかった1週間に何かあった?」
  だから、俺は杏里にそう聞いた。
  今、俺と杏里は俺が1人暮らしをしているマンションのリビングルームにいた。
  今日の昼前に杏里がここにやって来て、杏里が昼飯を作ってくれて、さっきまで一緒に食べていた。
  そして、今は2人でリビングルームでくつろいでいるんだけど、何となく杏里がいつもと違って、元気がないように思えて、さっきの言葉を俺は口にした。
「え? 何もないよ」
  杏里はそう言ったけど、少し動揺した感じで、明らかに何かあったんだと俺に思わせた。
  だから、俺は少しだけ離れて座っていた杏里を引き寄せ抱きしめた。
「俊」
  杏里はそんな俺の名前を呼びながら驚いたように顔をあげて俺を見た。
「バーカ。明らかに動揺してて何かあったのバレバレだっていうの。もう俺達何年一緒にいると思ってるんだよ」
  そう。俺と杏里は大学生2年生の時からのつき合いで、俺と杏里は同じ歳で今、25歳だから、もう5年一緒にいることになる。
  大学を卒業してお互いに会社は違うけど一般企業に就職して……そして、できるだけ社会人になってからもこうして会うようにしていて……。
  だから、勿論、もう俺は杏里とそろそろ結婚してもいいとも思っている。
  だいぶと仕事にも慣れてきて、貯金もだいぶと増えてきたから。
  でも、そんな風に思っているのに杏里は未だに自分から俺に我儘言ったり、甘えてこない感じがある。
  勿論、杏里の性格から言ったら、俺に気を遣わせたくないとか、そんな感じなんだろうけど、俺としてはこれだけもう長くもつきあっているし、結婚も考えているわけだから、もっと我儘とか言ってもいいのになと思ったりもするわけで。
  だから俺は、
「杏里、俺にはもっと我儘言ったり、辛かったら、辛いって言ったり、甘えていいんだよ」
  そう言った。
  すると杏里は暫くの間、俺の胸に顔を埋めていた。
  そして、その後、顔をあげると杏里は目から涙を零しながら、
「だって、私、本当は凄く甘えただから、我儘とか言いだすときりがなくなるかもしれないんだもん」
  そう言った。
  だから、俺はそんな杏里に笑って、
「杏里の我儘だったら幾らでも聞いてやるよ。俺はどんな杏里でも好きだし、どんな杏里でも全部受け入れたいって思ってるんだから」
  そう言った。
  すると杏里は顔を少しの間、歪めながら俺を見た後、くしゃっと笑って、
「じゃあ、これからはそうする。でも、どんな私を見ても絶対にドン引きしないって俊は誓ってね」
  そう言った。
「ああ、勿論」
  俺がそう言うと今度は杏里は凄く嬉しそうに笑い、それから、この1週間にあった自分にとって悲しかったことを話したり、少しだけ我儘を俺に言ってきたりした。

  なあ、杏里、本当に俺はどんな杏里でも受け入れるから。
  だから、僕の前では素のままの君でいてほしい。
                                                            END
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