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「ありのままの君でいて」
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不器用にしか生きられないと言うあなただけど、そんなあなただからこそ私は大好きなんだよ。
「はあっ」
と今日、会ってから、もう一体、何度目の溜息なんだろうっていうくらい、私の彼氏の健也は今、また溜息を吐いた。
今日は土曜日で、お互いに一般企業に勤めているので、たいていはどちらも休みで、今日も休みだから、私は1人暮らしをしている健也のマンションに午後2時くらいに来た。
そして、今日の夕食は私がつくることになっているから、それまでの時間をリビングルームでまったりと2人で過ごすことにした。
だけど、今日の健也は会ってから本当に溜息を吐いてばかりで。
「健也、何かあった?」
いつもは健也が嫌がるかなって思って、あまり何も聞かないようにしている私だけど、今日はさすがに溜息を吐く回数が多すぎるので、聞いてみた。
「ん? ああ、昨日、会社の上司にもう少し皆に愛想よくできないのかって言われたんだ。でも、それができないから、あまり人と会話をしなくてもいいプログラマーになったのに」
健也はそう言い今、座っている茶色い長ソファーの上で膝を抱えた。
私は今、床に座っていたんだけど、そんな健也を見て、健也のところにいって、健也に抱きついた。
健也はそんな私を条件反射ですぐに抱きしめた。
「それは確かに健也にとってはハードルが高いね」
私は健也の顔をじっと見ながら言った。
私と健也は高校1年生の時に同じクラスになって知り合った。
健也は背が高くて、顔も整っている方だから、女子からモテてはいたけど、健也と接する機会のあった子は、全然、愛想よくない健也に幻滅して、ほとんどの子は離れていった。
だけど、私はある日、学校の帰りに健也が心ない誰かに捨てられてしまった子猫を愛しそうにぎゅっと抱きしめているところを目撃した。
それは普段の健也からは想像もつかない姿で。
だけど、本当に愛しそうに子猫を抱きしめている姿に私は胸をぎゅんっと掴まれたような感覚になった。
だから、私は思わず健也に声をかけた。
それが私と健也が親しくなるきっかけで、私も動物が大好きで、猫も大好きだから、その子猫を飼うことにした健也の家に猫を見にいっているうちに凄く仲良くなった。
健也は親しくなるとまるでいつもとは別人みたいによく喋って、そして、凄く優しかった。
それから大学も同じところに行き、会社は別々になったけど、お互いに社会人3年目の今もこうして一緒にいる。
でも、健也いわく、別に自ら周りの人に愛想悪くしているつもりはなく、ただ、あまり知らない人と表面だけでも仲良くするのが物心ついた時から苦手らしい。
だけど、私は知ってるよ。
健也はいつも真っ直ぐで一生懸命に生きていて、捨てられた子猫を抱きあげて、自分で育ててあげるような、本当にとても優しい人だってことを。
ただ、正直にしか生きれない人だってこと。
だけど、私からしたら、例え不器用な生き方に見えたって、健也のその生き方の方が凄いって思うことなんだよ。
そして、そんな健也だから、私は健也のことを本当に信頼できるし、そばにいたいって思うんだよ。
だから、私は健也が少しでも楽に生きていけるように健也に寄り添って生きたいっていつも思ってる。
「でも、健也、無理しなくて大丈夫だよ。健也は自分で不器用にしか生きれないって前に言ってたけど、そうやって自分に正直に生きるってとても素敵なことだから。そんな健也のこと、解ってくれる人はちゃんと解ってくれるから」
私がそう言うと健也は私をじっと見て、
「侑理(ゆうり)、ありがとう。俺、そんな風に言ってくれる侑理と出会えて、恋人同士になれて本当に良かったよ。後、侑理のおかげで元気出た」
そう言った後、私を暫く少し強い力で抱きしめたままでいた。
ねぇ、健也。
健也の生き方を私は本当に好きなんだよ。
だから、健也、これからもずっとありのままでいてね。
もしも、健也がまた辛いなと思う時は必ず、健也のそばにいて、健也が元気になれるように頑張るから。
END
「はあっ」
と今日、会ってから、もう一体、何度目の溜息なんだろうっていうくらい、私の彼氏の健也は今、また溜息を吐いた。
今日は土曜日で、お互いに一般企業に勤めているので、たいていはどちらも休みで、今日も休みだから、私は1人暮らしをしている健也のマンションに午後2時くらいに来た。
そして、今日の夕食は私がつくることになっているから、それまでの時間をリビングルームでまったりと2人で過ごすことにした。
だけど、今日の健也は会ってから本当に溜息を吐いてばかりで。
「健也、何かあった?」
いつもは健也が嫌がるかなって思って、あまり何も聞かないようにしている私だけど、今日はさすがに溜息を吐く回数が多すぎるので、聞いてみた。
「ん? ああ、昨日、会社の上司にもう少し皆に愛想よくできないのかって言われたんだ。でも、それができないから、あまり人と会話をしなくてもいいプログラマーになったのに」
健也はそう言い今、座っている茶色い長ソファーの上で膝を抱えた。
私は今、床に座っていたんだけど、そんな健也を見て、健也のところにいって、健也に抱きついた。
健也はそんな私を条件反射ですぐに抱きしめた。
「それは確かに健也にとってはハードルが高いね」
私は健也の顔をじっと見ながら言った。
私と健也は高校1年生の時に同じクラスになって知り合った。
健也は背が高くて、顔も整っている方だから、女子からモテてはいたけど、健也と接する機会のあった子は、全然、愛想よくない健也に幻滅して、ほとんどの子は離れていった。
だけど、私はある日、学校の帰りに健也が心ない誰かに捨てられてしまった子猫を愛しそうにぎゅっと抱きしめているところを目撃した。
それは普段の健也からは想像もつかない姿で。
だけど、本当に愛しそうに子猫を抱きしめている姿に私は胸をぎゅんっと掴まれたような感覚になった。
だから、私は思わず健也に声をかけた。
それが私と健也が親しくなるきっかけで、私も動物が大好きで、猫も大好きだから、その子猫を飼うことにした健也の家に猫を見にいっているうちに凄く仲良くなった。
健也は親しくなるとまるでいつもとは別人みたいによく喋って、そして、凄く優しかった。
それから大学も同じところに行き、会社は別々になったけど、お互いに社会人3年目の今もこうして一緒にいる。
でも、健也いわく、別に自ら周りの人に愛想悪くしているつもりはなく、ただ、あまり知らない人と表面だけでも仲良くするのが物心ついた時から苦手らしい。
だけど、私は知ってるよ。
健也はいつも真っ直ぐで一生懸命に生きていて、捨てられた子猫を抱きあげて、自分で育ててあげるような、本当にとても優しい人だってことを。
ただ、正直にしか生きれない人だってこと。
だけど、私からしたら、例え不器用な生き方に見えたって、健也のその生き方の方が凄いって思うことなんだよ。
そして、そんな健也だから、私は健也のことを本当に信頼できるし、そばにいたいって思うんだよ。
だから、私は健也が少しでも楽に生きていけるように健也に寄り添って生きたいっていつも思ってる。
「でも、健也、無理しなくて大丈夫だよ。健也は自分で不器用にしか生きれないって前に言ってたけど、そうやって自分に正直に生きるってとても素敵なことだから。そんな健也のこと、解ってくれる人はちゃんと解ってくれるから」
私がそう言うと健也は私をじっと見て、
「侑理(ゆうり)、ありがとう。俺、そんな風に言ってくれる侑理と出会えて、恋人同士になれて本当に良かったよ。後、侑理のおかげで元気出た」
そう言った後、私を暫く少し強い力で抱きしめたままでいた。
ねぇ、健也。
健也の生き方を私は本当に好きなんだよ。
だから、健也、これからもずっとありのままでいてね。
もしも、健也がまた辛いなと思う時は必ず、健也のそばにいて、健也が元気になれるように頑張るから。
END
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