短い恋のお話

愛理

文字の大きさ
70 / 73

「君がいればどんな時でも」

しおりを挟む
   君がいるから俺はどんなことがあっても、
 前を向いて生きていこうって思えるんだよ。

 会社が休みの日曜日、俺が1人暮らししているマンションの寝室のベッドの上で目を覚ますと、昨日、この家に泊まって、一緒のベッドに寝ていたはずの俺の彼女の由衣菜がいなかったので、もう起きてるのかなと思い、リビングルームへ行った。
 するとリビングルームに置いてあるテーブルの上に美味しそうな和食のご飯が並んでいた。
 そして、この朝食をつくってくれた由衣菜はリビングルームの閉まったままの窓から空を見上げていた。
 だから、俺はそっと近づき後ろから由衣菜を抱きしめ、
「おはよう、由衣菜」
 とそう言った。
 すると由衣菜は俺の方を驚いた表情で見た。
「びっくりした、智弘、起きたんだ。でも、良かった。朝ご飯できたから、もう起こしにいこうかなと思ってたとこだったから」
「そのわりには窓から空を見てたけど?」
「だって、智弘が住んでるこのマンションって10階でしょ。私が今住んでるのは実家で2階建てだから、ここからは空が近いなあと思って」
「はは、何か由衣菜らしいな」
「でも、今日の空、澄んでいて、まさにスカイブルーって感じで凄く綺麗なんだよ」
 由衣菜はそう言いまた窓から空を見上げたので、今度は俺も由衣菜の隣に並んで一緒に空を見上げた。
「ホント、綺麗だな」
「でしょ? 智弘も共感してくれて嬉しい」
 由衣菜は嬉しそうにそう言い、また窓から空を見上げた。
 俺はそんな由衣菜を見ながら、でも、由衣菜、俺が今、由衣菜と一緒に空が綺麗だって共感できるのは、由衣菜のおかげだよ。
 だって、由衣菜と出会う前の俺は空を見て綺麗だとか全然、思わなかった。
 それに他人のこともイマイチ信じられなかった。
 だけど、由衣菜と出会って、今時、珍しいんじゃないかって思えるほどの純粋で心が綺麗な由衣菜と一緒にいるようになって、俺は日常の大切さや、こうした自然を見て感動できるようになった。
 まあ、それは由衣菜と今、一緒にずっとこうして生きていられるっていうのも大きいんだけど。
 俺は改めてそんなことを思い、今度は由衣菜を自分の方に向かせて前から抱きしめた。
「智弘?」
「俺、由衣菜に出会えて本当に良かった。今、改めてそう思ったし、これからもずっとずっと由衣菜と一緒に生きていきたい。だから、突然すぎるし、まだ、何も用意はしてないけど、由衣菜が良かったら、近いうちに俺の奥さんになってくれるかな? 俺、由衣菜が一緒に生きていってくれたら、これから先もどんなことがあっても乗り越えられると思うから」
 俺がそう言うと由衣菜はさっき後ろから抱きしめた時よりも、数倍、驚いた表情をして、
だけど、とても嬉しそうに、
「嬉しい、私も智弘と一緒にずっと生きていきたい。だけど、本当に突然すぎるけど」
 そう言った。
 俺達はその後、由衣菜がつくってくれた朝食を食べて、その後は時間が許す限り、2人でまったりとした幸せな時間を過ごした。

 そして、俺達はこの1年後、お互い、26歳になった年に結婚することになる。

                          END
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

私の推し(兄)が私のパンツを盗んでました!?

ミクリ21
恋愛
お兄ちゃん! それ私のパンツだから!?

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

処理中です...