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第一章 幼少期編
9 皇帝への報告
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ヴァレリア帝国の皇宮にある大会議場。
そこではヴァレリア帝国の重鎮たちが一堂に会し、帝国の今後を決める会議が行われていた。
だが、そんな重要な会議の最中、一人の騎士が大会議場へと駆け込んできた。
「陛下、取り急ぎご報告がございます!!」
そう言いながら、会議場に飛び込んできたのは先程までアルメリアの護衛として彼女の魔力判定式の場にいた近衛騎士であった。
「貴様、今は大事な会議中だ!! 無礼だぞ!!」
そう叫ぶのは会議に参加していた内の一人だ。その男は勢いよく立ち上がり、近衛騎士の行動を咎めようとした。
だが、その男の行動を制止する者がいた。
「よい」
そう言うのはヴァレリア帝国の皇帝であるガイウスだ。
「陛下っ、ですがっ!!」
「よいと言っている。同じ事を二度言わせるな」
「はっ……」
そして、ガイウスは視線を先程部屋に飛び込んできたその男へと向ける。
「さぁ、その取り急ぎの報告とやらを話せ」
「はい。先程、アルメリア皇女殿下の魔力判定式が行われました」
その言葉に事情を知らない貴族たちは再び騒ぎ始めるがその直後、ガイウスは目を細めてその男達を睨む。
次は無い、と言わんばかりの皇帝のその視線に会議の参加者の貴族たちは一斉に静まり返った。
「そうか。して、その結果は?」
「こちらをご覧頂ければ、お分かりになられると思われます」
そう言いながら、彼は皇帝の傍まで向かうと懐から先程アルメリアから預かった指輪をガイウスへと差し出した。
そして、彼は指輪を手に取り、黒く染まった宝石部分を一瞥した後、口元に笑みを浮かべた。
「アルメリアはこの指輪は確かに身に着けていたのだな?」
「はっ、間違いありません。この目で確認しております。殿下は確かにこの指輪を身に着け、魔力判定式に臨まれました」
「クハハハッ。そうか、そうか、そうか!! 遂に、遂に来たか!!」
突如として、笑い始めた皇帝の姿に一連の事情を知らない者達は困惑を隠せない。
「此度の会議はこれにて終了とする。行くぞ、お前たち!!」
「はっ!!」
そして、彼は自らの最側近たちを連れてこの場から去っていく。会議場に残された者たちは何が起きたのかを理解できず、呆然としかできないのだった。
一方、会議場から去ったガイウスは自らの執務室に自身の側近たちを集めていた。この場にいるのは、彼が最も信頼する側近たちであり、同時に彼の計画を知る者達でもあった。
「お前たち、これを見よ」
「これは……、確か陛下が錬金術師たちに作らせていた魔道具でしたか」
そう、この指輪は帝国が誇る錬金技術の粋を集めて作られた特殊な魔道具であった。
指輪には魔力を持つ者がこの指輪を身に着けると、1度だけだが魔力判定の水晶に魔力を感知されないという効果が付与されていた。
そして、この効果が発動すると指輪の宝石部が黒く染まるようになっていた。
つまり、この指輪の宝石部が黒く染まっているという事は嘗ての魔王と同じ、魔力の持ち主が現れたことに他ならない。
「して、現れた魔力の持ち主というのは一体誰なのですか?」
「余の娘が一人、アルメリアだ」
「アルメリア殿下、ですか。確か、その名は……」
アルメリア、その名前には彼らも聞き覚えがあった。皇帝が時折、お気に入りの娘だと話題に挙げていたからだ。
「確か、陛下がアルティエル王国の王女に産ませたお方でしたね」
「つまりは、あの伝承は真実であったと、そういう事ですか」
「ああ、そうだろうな」
アルメリアの母親の母国であるアルティエル王国の王家にはある伝承が残されていた。
それは、アルティエル王国の初代国王がかつての魔王の子孫であったという伝承だった。その伝承自体も別の国を攻め落とした際にその国の王城の書庫の奥に隠されていた書物にほんの少しだけ記されていた程度の眉唾物の記述でしかなかった。
それでも、アルティエル王国を攻め落として王国の姫君に子を産ませた甲斐があった。
「アルメリアには今後、余より試練を与える。そこで、アルメリアの資質を見定めるつもりだ。そして、その試練を乗り越えた際にはアルメリアを余の後継者にする」
「皇女殿下が陛下の後継者、ですか」
ガイウスの言葉に側近たちは流石に困惑を隠せなかった。
「無論、お前たちの懸念も理解できる。前例が無い事だからな。お前たちの懸念もそこだろう?」
「はい、その通りです」
このヴァレリア帝国の帝位は男子継承が基本とされていた。今までの歴史の中で皇女が皇帝になった例は一度もない。
前例とは厄介な物だ。前例ない事をすればそれだけで反発する者達が現れる。しかも、それが皇族の後継者に関わる事だとすればなおさらだろう。
更に言うなら、アルメリアには政治的な後ろ盾が一切ない。
政治的な後ろ盾もない皇女が皇帝の後継者になる。それがどれだけの反発を生むのか、想像に難くない。
特に自分の縁者を皇帝にしたい大貴族たちからの反発は必至だろう。しかし、そんな事は当然ガイウスも十二分に理解している。その上で彼はアルメリアを後継者にしようとしていた。
「余はな、アルメリアから皇帝としての確かな資質を感じるのだ。それも、他の皇族を上回るほどのな」
ガイウスは確信を以ってそう告げる。しかし、その側近たちは如何に皇帝の言葉だとしても流石に信じられない様子だ。
「幸い、時間はまだまだ残されている。共にアルメリアの資質を見極めようではないか。それを見た上で判断するのも遅くなかろう?」
「……畏まりました」
そして、側近たちは皇帝に恭しく頭を下げるのだった。
そこではヴァレリア帝国の重鎮たちが一堂に会し、帝国の今後を決める会議が行われていた。
だが、そんな重要な会議の最中、一人の騎士が大会議場へと駆け込んできた。
「陛下、取り急ぎご報告がございます!!」
そう言いながら、会議場に飛び込んできたのは先程までアルメリアの護衛として彼女の魔力判定式の場にいた近衛騎士であった。
「貴様、今は大事な会議中だ!! 無礼だぞ!!」
そう叫ぶのは会議に参加していた内の一人だ。その男は勢いよく立ち上がり、近衛騎士の行動を咎めようとした。
だが、その男の行動を制止する者がいた。
「よい」
そう言うのはヴァレリア帝国の皇帝であるガイウスだ。
「陛下っ、ですがっ!!」
「よいと言っている。同じ事を二度言わせるな」
「はっ……」
そして、ガイウスは視線を先程部屋に飛び込んできたその男へと向ける。
「さぁ、その取り急ぎの報告とやらを話せ」
「はい。先程、アルメリア皇女殿下の魔力判定式が行われました」
その言葉に事情を知らない貴族たちは再び騒ぎ始めるがその直後、ガイウスは目を細めてその男達を睨む。
次は無い、と言わんばかりの皇帝のその視線に会議の参加者の貴族たちは一斉に静まり返った。
「そうか。して、その結果は?」
「こちらをご覧頂ければ、お分かりになられると思われます」
そう言いながら、彼は皇帝の傍まで向かうと懐から先程アルメリアから預かった指輪をガイウスへと差し出した。
そして、彼は指輪を手に取り、黒く染まった宝石部分を一瞥した後、口元に笑みを浮かべた。
「アルメリアはこの指輪は確かに身に着けていたのだな?」
「はっ、間違いありません。この目で確認しております。殿下は確かにこの指輪を身に着け、魔力判定式に臨まれました」
「クハハハッ。そうか、そうか、そうか!! 遂に、遂に来たか!!」
突如として、笑い始めた皇帝の姿に一連の事情を知らない者達は困惑を隠せない。
「此度の会議はこれにて終了とする。行くぞ、お前たち!!」
「はっ!!」
そして、彼は自らの最側近たちを連れてこの場から去っていく。会議場に残された者たちは何が起きたのかを理解できず、呆然としかできないのだった。
一方、会議場から去ったガイウスは自らの執務室に自身の側近たちを集めていた。この場にいるのは、彼が最も信頼する側近たちであり、同時に彼の計画を知る者達でもあった。
「お前たち、これを見よ」
「これは……、確か陛下が錬金術師たちに作らせていた魔道具でしたか」
そう、この指輪は帝国が誇る錬金技術の粋を集めて作られた特殊な魔道具であった。
指輪には魔力を持つ者がこの指輪を身に着けると、1度だけだが魔力判定の水晶に魔力を感知されないという効果が付与されていた。
そして、この効果が発動すると指輪の宝石部が黒く染まるようになっていた。
つまり、この指輪の宝石部が黒く染まっているという事は嘗ての魔王と同じ、魔力の持ち主が現れたことに他ならない。
「して、現れた魔力の持ち主というのは一体誰なのですか?」
「余の娘が一人、アルメリアだ」
「アルメリア殿下、ですか。確か、その名は……」
アルメリア、その名前には彼らも聞き覚えがあった。皇帝が時折、お気に入りの娘だと話題に挙げていたからだ。
「確か、陛下がアルティエル王国の王女に産ませたお方でしたね」
「つまりは、あの伝承は真実であったと、そういう事ですか」
「ああ、そうだろうな」
アルメリアの母親の母国であるアルティエル王国の王家にはある伝承が残されていた。
それは、アルティエル王国の初代国王がかつての魔王の子孫であったという伝承だった。その伝承自体も別の国を攻め落とした際にその国の王城の書庫の奥に隠されていた書物にほんの少しだけ記されていた程度の眉唾物の記述でしかなかった。
それでも、アルティエル王国を攻め落として王国の姫君に子を産ませた甲斐があった。
「アルメリアには今後、余より試練を与える。そこで、アルメリアの資質を見定めるつもりだ。そして、その試練を乗り越えた際にはアルメリアを余の後継者にする」
「皇女殿下が陛下の後継者、ですか」
ガイウスの言葉に側近たちは流石に困惑を隠せなかった。
「無論、お前たちの懸念も理解できる。前例が無い事だからな。お前たちの懸念もそこだろう?」
「はい、その通りです」
このヴァレリア帝国の帝位は男子継承が基本とされていた。今までの歴史の中で皇女が皇帝になった例は一度もない。
前例とは厄介な物だ。前例ない事をすればそれだけで反発する者達が現れる。しかも、それが皇族の後継者に関わる事だとすればなおさらだろう。
更に言うなら、アルメリアには政治的な後ろ盾が一切ない。
政治的な後ろ盾もない皇女が皇帝の後継者になる。それがどれだけの反発を生むのか、想像に難くない。
特に自分の縁者を皇帝にしたい大貴族たちからの反発は必至だろう。しかし、そんな事は当然ガイウスも十二分に理解している。その上で彼はアルメリアを後継者にしようとしていた。
「余はな、アルメリアから皇帝としての確かな資質を感じるのだ。それも、他の皇族を上回るほどのな」
ガイウスは確信を以ってそう告げる。しかし、その側近たちは如何に皇帝の言葉だとしても流石に信じられない様子だ。
「幸い、時間はまだまだ残されている。共にアルメリアの資質を見極めようではないか。それを見た上で判断するのも遅くなかろう?」
「……畏まりました」
そして、側近たちは皇帝に恭しく頭を下げるのだった。
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