白銀皇女の覇道譚 ~侵略国家の皇女は覇道を歩む~

YUU

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第一章 幼少期編

21 エピローグ

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 アルメリアの暗殺未遂騒動から数日後の事、アルメリアは父であるガイウスから招待された二人だけの晩餐会に参加していた。



「まずは、お前を称賛しよう。彼奴の企てを退けたようだな」

「まぁ、一体何の事でしょう?」

「彼奴の愚かな企ての事だ。隠さなくとも良い、余は昨晩に起きた事は全て知っている」

「あら、やはりお父様はご存じでしたか」

「余はこの皇宮の主、故にこの皇宮にて起きた全ての事が余の耳に入ってくるのだ」



 そう言いながらガイウスは不敵な笑みを浮かべる。そして、アルメリアは自身の予想を確信に変えるべく、一つの質問を投げかけた。



「あの地図を持っていたあの者もお父様の手の者なのでしょう?」

「ああ、その通りだ」

「つまりは、すべてお父様の掌の上、という事でしたのね」

「ふっ、怒っているか?」

「いえ、むしろ今回の一件ではお父様には本当に感謝していますわ。これほど素晴らしい力を目覚めさせるきっかけをくださったのですもの」



 そう言いながらアルメリアは手から闇を僅かに産み出した。すると、それを見たガイウスは満足そうに笑みを浮かべる。



「その力が何なのか、今のお前に分かっているな?」

「ええ。この力は嘗ての魔王が持っていたという魔力なのでしょう?」

「その通りだ。では、余から一つだけ警告しておこう。お前のその力を人前で無暗に開放してはならんぞ。その意味は当然分かっているな」

「ええ、分かっておりますわ」



 アルメリアにとっては素晴らしいとしか表現できないこの力だが、それ以外の殆どの人間は忌み嫌う力だ。

 無暗に使うべきではないだろう。今は、まだ。



「分かっているのであれば良い。後日、お前の力を隠匿するための魔道具を用意しよう」



 すると、ガイウスは懐から豪華な宝飾が施された箱を取り出し、アルメリアへと渡した。



「お父様、これは?」

「この中にはヴァレリア帝国の皇族の身分を示す紋章と皇太子のみが所持を許される指輪が入っている。今この時よりお前は余の後継者、ヴァレリア帝国の皇太子だ」



 非公式でこの場にいる二人以外誰も知らない事ではあるがここにアルメリアの立太式は成された。今はまだこの場にいる二人しか知らないことであるが、この事実はこの国だけではなく後の世界に多大な影響を与えることになる。



「お前は余の用意した試練を超え、力を示した。故にお前には褒美を与えよう。願いを言ってみると良い。余に叶えられる願いであれば、叶えてやろう」

「……では、二つほど」

「よかろう、言ってみろ」

「まず一つ。あの子をわたくしに下さいませんか?」



 アルメリアの言うあの子とは、リリアの事だった。彼女には忠誠を誓わせたが、今のアルメリアは皇宮での人事権を持っていない。故にいい機会だと思い、こうして願い出たのだ。

 ガイウスもそれが分かったようで満足気に頷いていた。



「あの娘の事が相当気に入ったようだな」

「ええ、とっても」

「よかろう。今後はあの娘をお前の専属として仕えさせよう。願いはそれだけか?」

「では、二つ目を。近々、お兄様が初陣を迎えられるそうですわね。その際の行き先を最も敵国の抵抗が激しい激戦地にしていただきたいですわ」



 すると、アルメリアのその願いを聞いた彼はその予想外の願いに思わず破顔してしまった。

 普通、皇族の初陣となれば戦死の可能性が低い場所に送られるだろう。実際、現行の予定では小規模な街への制圧戦に送られる予定となっている。

 だが、アルメリアの言うような場所に送ってしまえば、アルベルトは戦死する可能性は極めて高い。アルメリアは実の兄をそんな場所に送ろうというのだ。彼が破顔するのも当然だろう。



「クッ、クハハハっ、面白い!! よかろう!! その望み、叶えてやろう!!」



 しかし、ガイウスの言葉に当のアルメリアは意外そうな顔を浮かべた。



「アルメリアよ、どうしたのだ」

「わたくし、お父様はこの望みは叶えて下さらないと思っていましたわ」

「余もこの王座に至るまでに血を分けた兄弟を何人も自らの手で殺めてきたのだ。それに比べれば、お前の願いなど可愛いものだろう」



 父のその言葉にアルメリアは少しだけ微笑む。



「お父様、感謝いたしますわ」

「しかし、願いがその二つだけとは、なんとも欲が無いものだ」

「あら、これでもわたくしはとっても強欲なつもりですのよ」

「そうか。また願いがあれば何時でも言うが良い。では、お前の今後について話しておくとしようか」



 そして、二人だけの晩餐会は続いていくのだった。







 晩餐会から数か月後の事。アルメリア達の元に一通の報告が入ってきた。



「姫様、アルベルト第三皇子殿下が戦地にて敵軍に討たれ、亡くなったようです」



 そう告げるのはアルメリア専属の侍女となったリリアだ。彼女はあの日の約束通り、アルメリアの侍女兼護衛として仕えている。

 因みにだが、彼女の母はあれから何事もなく、無事にリリアに看取られて逝く事が出来ていた。



「あら、やはりそうなりましたか。残念でしたわね」



 その報告を聞いたアルメリアはそう呟きながら、心底残念そうな表情を浮かべる。その表情は自らの手で兄を激戦地に送ったとは思えない様な表情だった。



「ありがとうございます」

「あら、何の事かしら?」

「アルベルト殿下の事です。姫様が何かをなさったのですよね」

「ふふっ、何の事だか分かりませんわね」



 しかし、事の経緯を知っている彼女から見ればアルメリアがアルベルトからリリアへの報復行為を妨げる為に彼を激戦場に送らせたようにしか見えなかった。



「それにしても、残念ですわね。お兄様には少しばかり期待していたのですが」

「期待、ですか?」

「ええ、戦場に出た人間は大きく変わることがある、と聞いた事もありましたし、お兄様もこれを機に大きく変わってくださればと思っていましたのに……。

 その前にあっけなく死んでしまうなんて本当に残念ですわ」



 だが、そう言うアルメリアの表情からは残念そうな感情は一切見られなかった。しかし、それについてリリアは何も考えない。



「そういえば、入学式は来週だったかしら」

「はい。すでに入学の準備も整えております」

「ふふっ、次の場所でも何か楽しい事が待っているような予感がしますわね。本当に楽しみですわ」



 そして、アルメリアは次なる地への思いを馳せるのだった。
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