白銀皇女の覇道譚 ~侵略国家の皇女は覇道を歩む~

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第二章 学園編

26 クラリッサのお茶会

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 お茶会へ招待されたアルメリア達が到着したのは学園内にある貴族子女のみが使用できるサロンであった。
 そして、サロンに入るとそこには既に複数人の女子生徒が談笑を始めているのが見えた。その中には先程出会ったクラリッサやその取り巻きたちたちもいた。

(これも派閥争いの一環といった所かしら?)

 現在のヴァレリア帝国内では皇太子最有力候補と言われていたアルベルト第三皇子が戦死してからというもの次の皇太子の座を巡って水面下では小競り合いが頻発しているという。
 今はまだ戦死してから日も浅く、そこまで激しいものではないようだがそれが表面化するのも時間の問題だろう。

 また、今年の入学生の令嬢の中で一番地位が高いのが第四皇子の婚約者であり今回のお茶会の主催者でもあるクラリッサだ。
 このお茶会の目的も言ってしまえば、学園内での自身の派閥形成と将来に向けた囲い込みなのだろう。サロンを見渡すとお茶会の参加者はアルメリア以外の殆どが貴族令嬢だった。

 そんなサロンの状況を見ながらも彼女は用意されていた席へと向かっていく。アルメリアに用意されていたのはサロンの一番端に用意されていた席だった。
 同じテーブルには既に何人かの女子生徒たちが座っていたが、彼女達の間には会話はなく、ただ無言で怯えながら、このお茶会が終わる時をじっと待っていた。恐らく、彼女たちもアルメリアと同じ様に半ば無理やりこのお茶会に参加させられたのだろう。

 その一方、このお茶会の主催者であるクラリッサはサロンの中央に用意されていた席に座り、教室で見た彼女の取り巻きたちと談笑していた。

「次の皇太子妃はクラリッサ様で間違いありませんわ」
「第三皇子殿下がお亡くなりになった今、次の皇太子は第四皇子殿下で間違いありませんもの」
「そうなれば、第四皇子殿下の婚約者であるクラリッサ様は次の皇太子妃ですわ」

 実際、第三皇子がいなくなった今、次の皇太子最有力候補と言われているのが彼女の婚約者である第四皇子なのだという。
 今の皇位継承権第一位が第四皇子だというのが、その証拠だった。

「ふふっ、皆様にそう言って頂けるなんて、わたくしも光栄ですわ」

 クラリッサも取り巻きたちの言葉に気分を良くする。
 しかし、その一方でアルメリアはこのお茶会に酷く落胆していた。

(はぁ、つまらないですわね……)

 離宮にいた時にしていたマリアーナとのお茶会はとても楽しかった。だからこそ、このお茶会にもほんの少しだけ期待していたのだ。
 しかし、蓋を開けてみれば主催者は自分を賛美するだけの取り巻きたちとの談笑。そして、アルメリア達と同じテーブルにいる子女たちはまるで添え物の様に扱われている。
 サロンの中央にいるクラリッサは主演女優で、アルメリア達は彼女の舞台を彩る装飾品といったところだろうか。
 この時点でアルメリアはこのお茶会という名の茶番に完全に見切りをつけていた。

「クラリッサ様こそが次の皇太子妃に相応しいお方。皆さんもそう思いますよね」

 クラリッサの取り巻きの令嬢の内の一人がサロン内にいる他のテーブルにいる女子生徒たちに向かってそう言う。
 彼女のその言葉にサロン端の座席に座る女子生徒たちは一瞬ビクリと体を震えさせると、そっと口を開いた。

「は、はい……」
「そうだと思います……」

 そう答える彼女たちは全員が下級貴族の令嬢だ。その一方でクラリッサの取り巻きたちは全員が上級貴族の令嬢だ。そんな彼女たちの言葉に反対意見を述べる事などできる筈も無い。

「ふふっ、皆さんならそう言っていただけると思っていましたわ」

 そんな事情を知ってか知らずか、クラリッサは参加者たちのそのあからさまな言葉にも満足げな表情を浮かべる。

「はぁ、本当に滑稽で下らないですわね……」

 そんな彼女たちを眺めながら、アルメリアは小声でそんな事を呟いた。非公式ではあるが既に皇太子は決まっている。故にクラリッサが皇太子妃になりうる可能性など皆無だ。
 だが、目の前にいる彼女達はそんな事すら知らずに、取り巻き達の中心にいるクラリッサは既に皇太子妃になったつもりでいる。
 アルメリアからすれば、彼女たちの言葉と振る舞いはまさに道化という他なかった。
 しかし、クラリッサやその取り巻き達の耳にはアルメリアのそんな呟きが入ったようだった。

「……あなた、先程何と仰ったのかしら?」
「……わたくしは何も言っておりませんわ」
「いいえ、私は確かにあなたの呟きが聞こえました。先程、あなたが仰った言葉をその口から言ってごらんなさい」

 アルメリアは一瞬考えこむ。ここで、口を閉ざすのは簡単だ。正直に話せば面倒な事になるのは間違いない。だが、アルメリアは面倒事になったとしてもこんなつまらないお茶会という名の馬鹿らしい茶番にこれ以上付き合うのは御免だった。

「……はぁ、仕方がありませんわね。わたくしは滑稽で下らないと言いましたわ」
「…………滑稽で下らない、ですって……?」
「ええ、皇帝陛下はまだ次の皇太子を選ばれていないというのに、既に皇太子妃気取りの愚か者。滑稽で言葉も出ませんわね」

 アルメリアのその愚弄の言葉にいち早く反応したのは、クラリッサの取り巻きの令嬢たちだった。

「言うに事欠いてクラリッサ様の事を皇太子妃気取りの愚か者ですって!?」
「この方はあなた如きが口答えできる方ではないのよ!?」
「恥を知りなさい!!」

 取り巻きの令嬢たちが怒りの形相で迫ってくるがアルメリアからすれば全く恐ろしさを感じない。
 正直、離宮にいた時に模擬戦をしていたマティアスの方が迫力という点では遥かに勝っている。
 それ故にアルメリアが彼女たちの怒りに怯える道理は一切なかった。

「あなた、確かアルメリアさんでしたわよね。一体、何が滑稽で下らないのかしら?」
「決まっていますでしょう。このお茶会そのものですわ。お茶会とは名ばかりの下らない茶番劇、滑稽でという他ありませんわ」

 このお茶会そのものに既に見切りをつけていたアルメリアは表面すらも取り繕う事なく、思った事をそのまま口に出した。
 だが、アルメリアのその言葉はクラリッサにとっては癪に障るものだった様だ。   

「……あなたはわたくしを敵に回すおつもりかしら。その意味は分かっておりますわよね?」

 そして、クラリッサは扇でそっと口元を隠した。

「ですが、わたくしは寛大ですの。今ここでわたくしに平伏し謝罪するのであれば、許して差し上げます」
「……どうしてわたくしがあなたに謝罪をしなければならないのですか? 早くこの下らない茶番からわたくしを……」

 だが、アルメリアの言葉は最後まで紡がれる事は無かった。

 ――――――パァァァァァン!!

 そんな音がサロン全体に響き渡ったからだ。それはクラリッサがアルメリアの頬を扇で叩いた音だった。扇には鉄でも仕込まれていたのだろう。アルメリアの頬は赤く腫れ上がっている。

「あなたの様な無礼者、招待した事が間違いだった様ですわね。平民の分際でわたくしを敵に回した事、必ず後悔させて上げますわ。今すぐ、このサロンから出ていきなさい」

 ある意味、その言葉を待っていたアルメリアは心の奥で笑みを浮かべた。

「分かりましたわ。それでは、わたくしはここで失礼いたしますわね」

 そして、見事なカーテシーを披露し、そのままサロンを退室するのだった。
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