愛してると伝えるから

さいこ

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小僧

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 「おい、ここ?この建物?」

   ラブホ横の賃貸っぽいマンションの前で確認をする
 
 「はい、鍵、鍵…」

 瀧は上着のポケットを探るとキーケースを出した
 入り口を入りエレベーターに乗る

 203号室のドアでまた鍵を開けた


 なんとか部屋へたどり着き、玄関で靴を脱がせることに成功
   先にベッドの位置を確認しようと中に入る

   部屋は長方形のワンルーム、1人ならこんなもんで充分だろう
    
 俺は玄関に戻り瀧に声をかける

   「おい、もう少しだから頑張れ…」

 「んん…」

   まだ耳は聞こえてるみたいだ
   この重たい男を担いでヘッドへ横にする…と…


 …は?なんかおかしくね?
 瀧のベッドのはずなのに瀧が横になると…足りて無くない?

 普通のシングルベッド…なのかな?
 こんなデカい男がシングルベッドで足りるわけねぇよ…

 「はははっ!」

 瀧は面白いよ
 自分が住む場所にも寝るベッドにも無頓着っていうかさ

 飾らなくて可愛いよな

 
 「おい…帰るからな、あとで鍵閉めろよ」

 「ん、ん~…」

 瀧に聞こえていたかは不明だが、俺は部屋をあとにした



 明け方の街を歩きながら煙草に火をつける
 たまに俺みたいに朝まで飲んでた人を見かけるだけで、ほかには誰も居ない
 
 歩き煙草なんて普段はしないけど、こんな時間ならいいよな

 俺は気分が良かった…



 部屋に戻り、風呂に入る
 焼肉の煙も煙草の匂いもシャワーで流れていく

 冷蔵庫から出した酒を飲んだ

 …あ、そういえば修行の小僧、どうするかな…
 
 瀧と頭空っぽにして遊んで忘れていたけど悩みの種を思い出した


 「…明日にするか」

 俺はいい気分のまま寝ることにした




 ーーー翌日


 起きてからあの小僧のことを考えた
 修行といってはいたが、小僧がどの程度の熱量なのかにもよると思った
 
 もし、この業界をあまり知らずに一から勉強するのなら

 最初は適当なテキストでも与えて完全に下働きをさせているうちに「なんか違う」で辞めていくパターンも多い

 もしくは簡単なバイト的なノリで考えているのなら単純作業だけ教えればそれでいい

 
 問題なのは、独立を視野に入れてきっちり修業をしたい場合だ
 これは俺に面倒が見れるだろうか…?
 
 まぁいざとなれば藤原とかを紹介してしまう手もあるか…

 とりあえず小僧の話を聞いてみてその時の自分の心に従おう


 俺は小僧に聞いた連絡先にメッセージを入れた
 


 さて、俺は店を開ける
 毎日カウンターに立ち人間観察だ

 
 カランコロン…
 
 「いらっしゃいませ」

 「一条さん、ども~!」

 珍しく藤原が店に顔を出した
 …後ろに女性を連れていた



 「…今日はお休みで?」

 こいつの休みなんか知らないので聞いた

 「まぁ店はバイトに任せてるんで…で、彼女がぁ…」

 と藤原は女性を紹介する

 「バー初心者のバー巡りで、一番にここにお連れしましたぁ~」

 「あ、はじめまして…とおこと申します」
 
 なるほど女の我儘に付き合ってるのか、ご苦労なことだ

 「わたくし、店主の一条と申します…」

 
 
 藤原の店は駅前通りのビル2階に入っている
 広い店舗なのでスタッフもいくらか雇っている

 …まぁまだ廃業していない所を見ると頑張っているのだろう 

 今日は大事な店をバイトに預けて女の点数稼ぎか
 藤原もまだ若いし女にはいい顔したいよな…

 「最初の1杯はいかがいたしましょう?」

 ちゃんと伝票は付けるからな

 
 「ほらぁ、最初のオーダーちゃんと言って?」

 「あ、うん…」

 …いちゃいちゃと中学生カップルかよ、もうやだ帰って欲しい


 「あ、あの、スプモーニを…お願いします」

 女性は自信なさげにそう言った

 「かしこまりました」
 
 おそらく最初のオーダーに迷ったらこれを言え的なものを藤原が教えたんだろう

 2人は1時間ほどお喋りをして帰っていった


 次、藤原に会ったらあの女とセックスにこぎつけたか聞いてやろ
 今日見た感じは「これから」って距離感だった

 
  
 ーーー日曜日

 
 今日は小僧と話をする時間を取った
 小僧が16:00頃がいいというのでその頃に店で合流する

 俺は待ち合わせの時間を過ぎてから部屋を出る
 店の階段横のベンチには小僧の姿があった

 「…お待たせ」

 「あ、いえ、よろしくお願いします」

 店の鍵を開け中に入る

 
 ペットボトルの水を出し、カウンターに並んで座った

 「じゃあ連絡してた履歴書、見せて」

 「お願いします」


 小僧の名前は波多野 兼嗣はたのかねつぐ、年齢27歳…


 「おい、お前もうオッサンじゃねぇかよ」

 「違いますよ!27はまだオッサンではありません!」

 「…なんなのその可愛いツラは、オッサンが…」

 「ほんと困ってるんですよぉ…マスターも疑ってましたよねぇ?!子供じゃないかって!」

 30手前には見えないって…成人してるかどうかを疑ったんだから、20歳そこそこに見えたんだよ…


 「仕事にも差支えるし、男は歳上に見られないと損ですよ」

 え?めちゃ羨ましいけどね?

 「そんなこと言ってぇ…若い女食い散らかしてんじゃないのぉ?」

 「それセクハラですよ?」

 「…は?どうぞ、お帰りください」

 「いや…あの謝りますちょっと待っていただけますか…?」


 セクハラ?パワハラ??
   そんなこと言ってるなら帰れ

 別にセクハラでもないだろ今のは、男同士の軽口だろうが 

 なんでも脳死で「ハラスメント」と言うのはいただけない

 俺は対人関係において、そういう攻防は必要なコミュニケーションだと思っている


 「セックスを強要もしくは同意なしに体を触る、以外はセクハラじゃねぇんだけどOK?」

 「承知いたしましたぁぁ!!!」


 今の人間は自分を守ることに敏感になり過ぎている
 なにをそんなに守る必要がある?守ってないで攻めろよ……Byおじさん

 現代っ子め、分かったか…


 
   「そんで、お前が修行をしたい理由は?」

   「はい、実は学生時代に3年間バイト経験がありまして…」

   へぇ…カウンターに立ってたんだ
   それは即戦力かもね

   「卒業と共に適当なとこに就職を決めたので、バイトはそこで辞めました…」


   ところが波多野は、少し前に取り引き先に連れられてその方の気に入っているバーに入った

   そこはマスター1人が居る静かな店だった

   「そしたら再燃しちゃった?」

   「はい…それで今週、このエリアのバーは全部見てきたんです」

   「ああ、それでうちにも?」

   「…はい」   

 
   全部見てきた…は本気なんだろうなぁ
   
   俺は波多野の話をちゃんと聞かなければいけない予感がした 






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