20 / 23
第20話 ほんとうの幸い
しおりを挟む
数年後の夏。
夕立の通り過ぎた街は、コンクリートの匂いに薄い土の涼しさが混じっていた。
母校の理科棟は、外壁の白が少しだけ褪せて、それでも“天文部”の札は昔と同じ場所にある。
屋上へ続く鉄扉の前に、ポスターが一枚。
夜空のプラネタリウム
— 学校屋上・公開観察会/初心者歓迎 —
「0 も 記録」/「東は いつも はじまり」
美月はそのポスターの角を軽く押さえてから、鉄扉を開けた。
赤いセロファンのライトが、夏の夜をやわらかく縁取る。
シート、双眼鏡、空気枕。配布用の観測カードは、昔より厚手で、隅に小さく「ひとこと の 例」が印刷されている。
——それは、彼と二人で書いてきた“橋”の最新版だ。
「部長、赤ライト追加しました!」
新堂——いまや社会人一年目——が笑って持ってくる。
柏木は「安全第一!」と昔と変わらぬ声で段差にテープを貼る。
そして、風の向こうからあの人の足音。
「間に合った」
白いシャツの袖を肘までまくり、望月怜が手を振る。
大学院で観測と理論の間に橋を渡し続けている彼は、いつのまにか“先生”と呼ばれることも増えたらしい。それでも赤いフィルム越しの笑顔は、夏の二等星みたいに落ち着いている。
胸のどこかが、昔と同じ位置でふっと明るくなる。
「起点はここ。——東」
怜は手すりから一歩離れ、指で空の輪郭を描く。
東の低いところに薄く広がる夏の気配。
ベガ、アルタイル、デネブ。
「夏の大三角」を最初に教わった夜が、胸の中で再生される。
「今日の月齢、新月明け。——天の川、勝てる」
「はじまり、だね」
二人の合図の言葉は、相変わらず短い。
観察会が始まると、初心者の子どもたちが「ベガ!」と指をさし、
保護者が「ほんとだ、W!」とカシオペヤを見つけて笑う。
配ったカードの“ひとこと”欄には、つたない字で**“同時”や“長い尾”が並び、なかには堂々と“0”と書く子もいる。
「0 も 記録、偉い」
怜がそう言うと、少年は胸を張った。
——“0も書く”。
あの夏、私たちが手に入れた待つの方法は、ちゃんと次へ渡っている。
「先生、“ハンガー星団”ってほんとにハンガー?」
「双眼鏡で見てみよう。こぎつね座のあたり、逆さまに……ほら、引っかかってる」
「わ、ほんとだ!」
笑い声が、赤い光の中で柔らかく跳ねる。
美月は配布テーブルの端に置いた小さな冊子を並べ直した。
表紙には『初心者むけ星見ノート(改訂3版)』とある。
最後のページには、小さく——
付録:東はいつもはじまり(一ノ瀬美月の言葉から)
視界の端で、柏木がにやりとする。
「二人とも、もう“橋”の設計者ね」
「柏木先輩だって、安全の女神です」
「女神は言い過ぎ」
ひととおりの案内が終わり、参加者に「寝転び配置」を勧める。
空気枕が一斉にぷしゅっと鳴り、風が一段やさしくなる。
そのとき、美月の肩を指で軽く叩く気配。
振り向くと、髪を肩で結んだ彼女——従姉妹が笑って立っていた。
隣には、気の優しそうな男性。
紹介された名前には聞き覚えがある。予備校の化学の彼。
二人は「去年、籍を」と照れながら言った。
胸の奥で、遠い夏の小石が完全に溶けてなくなる音がした。
「怜、赤いフィルムの使い方講義、任せたよ」
「はいはい」
従姉妹は、私の手をぎゅっと握る。
「ほんとうの幸い、ね」
それだけ言って、私たちのあいだの古い線に、静かにリボンをかけてくれた。
★
「一分法、いくよ——スタート」
怜の声で、屋上の時間がゆるく刻まれ始める。
右上、1。
次の一分、0。
「0 も 記録」が赤い光の下でいくつも書かれていく。
空の深さが増すたび、東の高みにベガが鋭く、アルタイルが通路を作り、デネブが起点で支える。
天の川の帯が、実体より“気配”でこちらへ近づいてくる。
一分のあいだに、細い一条。
少年が「同時!」と叫ぶと、怜は笑って「一分に入れて」と返す。
あの夏と同じやりとりが、別の世代に移っていく。
——橋は、残る。
ふと、美月の胸ポケットで、薄いカードが指を押した。
“新月/21:00/東=座標”
数年、離れた土地で続けてきた“ひとこと交換”の習慣。
くぐもった夜や、雲の多い夜、そして“0”の夜も、文字で渡し合った。
“0”が並ぶメッセージだって、同じ地図の上にある。
その地図を、今夜ようやく同じ屋上で重ねられる。
「少し、歩こうか」
怜が囁く。
柏木が笑って親指を立て、「行ってこい、二分で!」
新堂が「三分!」と言って柏木に叱られる。
屋上の端、手すりから一歩離れたいつもの場所。
風、赤い光、遠くの国道。
昔と変わらないレシピで、夜ができている。
「——遠い話の、続き」
怜は、胸ポケットから小さな封筒を出した。
そこには、見覚えのある字で短い手紙。
新月/21:00/東——続ける?
待つ と 行く を同じ地図で。
「研究はこれからも遠くへ行く。行くを選び続けると思う。
でも、もう“待ってて”とは言わない。一緒に行こうって言う。
移る空でも、同じ座標で会えるように——家を作ろう」
胸の中心で、視差という単語がふっと浮かぶ。
星の距離は測れても、人の距離は単位がない。
だから座標で重ねる。
だから家を作る。
息がすっと整う。
「……はい」
返事は短い。
けれど、今までの“ひとこと”の全部をまとめたみたいに、胸の奥で大きく響いた。
怜は、ほっと笑って、ふいに言葉を足す。
「君を待っていてもらうわけにはいかないって言ったあの日の続き。
やっと言える。——美月、君と、行きたい」
泣き笑いの中で、空がすっと明るくなる。
長い尾。
太い一本が、夏の三角形を横切って、痕を残した。
「記録!」
二人同時に鉛筆を走らせて、それから顔を見合わせて笑う。
ひとこと:見えない線は、ふたりの家路(美月)
ひとこと:起点は同じ、方角は一緒(怜)
二行は、あの夜みたいに、赤い光の下で静かに並んだ。
観察会の終盤、少年が手を振った。
「ねえ先生、“ほんとうの幸い”って、何?」
怜が困った顔で私を見る。
私は笑って、最初の教室の黒板を思い出しながら答えた。
「自分だけの光じゃなくて、誰かと同時に見える光のことかも。
“0”の夜も“同時”の夜も、一緒に記録できること。
それを続けられる座標を、ふたりで作ること」
「難しい!」と少年は言って、それでも「“同時”書いとく!」とカードに大きく書いた。
未来のどこかで彼がこの言葉を意味ごと拾ってくれたら、と遠い願いをひとつだけ空に置く。
「——そろそろ、お開き」
柏木の声。
赤いライトが一つずつ落ち、シートが丸められていく。
「階段はゆっくり」「白い光は外で」
口癖の号令も、今夜で何度目だろう。
それでも飽きない。飽きないことを、幸いと言ってもいい。
最後に、屋上に二人だけが残る。
風は、夏と秋のあいだ。
東の低いところには、フォーマルハウトがひとつ、孤独に見えて、孤独ではない明るさで滲んでいる。
「君の名前、やっぱり星にぴったりだ」
怜が笑う。
「満ち欠けしても、月は月。——望むだけじゃ足りないから、行くと帰るを、一緒に計画しよう」
「計画、得意です。“ひとこと”で」
二人で笑って、手すりから一歩離れた位置を確かめる。
段差、ライト、方角。
全部、昔と同じ順番で。
その「同じ」を、これからは一緒の家で重ねていく。
ふと、怜が胸ポケットから古い一枚を取り出す。
端に小さな汗の輪が残る、あの観測カード。
ひとこと:見えない線でつながる三つ
「ここから始まったんだと思う」
「うん。——東で」
カードをそっと元に戻す。
起点は、変わらない。
東は、いつもはじまり。
★
帰り道。
昇降口の白い蛍光灯は、もう目に刺さらない。
暗さに慣れる方法も、眩しさに慣れる方法も、二人で覚えたから。
商店街の角で、風鈴が一度だけ鳴る。
遠くで小さな花火の音。
夏は、やさしく終わる準備をしている。
手をつなぐ。
それは合図でも、宣言でもない。
ただ、座標の確認みたいなもの。
同じ地図の上を、同じ方向へ歩くための。
——ほんとうの幸い。
それは、向かい合うだけじゃなく、同じ方角へ並んで歩けること。
0の夜も、同時の夜も、“ひとこと”で渡し合えること。
そして、何度でも東に合わせ直せると知っていること。
見えない線は、今夜も濃い。
これから先も、濃くできる。
二人で、行くと待つを持ち寄って——家へ帰る道すがら、
空の下で、そっと笑った。
夕立の通り過ぎた街は、コンクリートの匂いに薄い土の涼しさが混じっていた。
母校の理科棟は、外壁の白が少しだけ褪せて、それでも“天文部”の札は昔と同じ場所にある。
屋上へ続く鉄扉の前に、ポスターが一枚。
夜空のプラネタリウム
— 学校屋上・公開観察会/初心者歓迎 —
「0 も 記録」/「東は いつも はじまり」
美月はそのポスターの角を軽く押さえてから、鉄扉を開けた。
赤いセロファンのライトが、夏の夜をやわらかく縁取る。
シート、双眼鏡、空気枕。配布用の観測カードは、昔より厚手で、隅に小さく「ひとこと の 例」が印刷されている。
——それは、彼と二人で書いてきた“橋”の最新版だ。
「部長、赤ライト追加しました!」
新堂——いまや社会人一年目——が笑って持ってくる。
柏木は「安全第一!」と昔と変わらぬ声で段差にテープを貼る。
そして、風の向こうからあの人の足音。
「間に合った」
白いシャツの袖を肘までまくり、望月怜が手を振る。
大学院で観測と理論の間に橋を渡し続けている彼は、いつのまにか“先生”と呼ばれることも増えたらしい。それでも赤いフィルム越しの笑顔は、夏の二等星みたいに落ち着いている。
胸のどこかが、昔と同じ位置でふっと明るくなる。
「起点はここ。——東」
怜は手すりから一歩離れ、指で空の輪郭を描く。
東の低いところに薄く広がる夏の気配。
ベガ、アルタイル、デネブ。
「夏の大三角」を最初に教わった夜が、胸の中で再生される。
「今日の月齢、新月明け。——天の川、勝てる」
「はじまり、だね」
二人の合図の言葉は、相変わらず短い。
観察会が始まると、初心者の子どもたちが「ベガ!」と指をさし、
保護者が「ほんとだ、W!」とカシオペヤを見つけて笑う。
配ったカードの“ひとこと”欄には、つたない字で**“同時”や“長い尾”が並び、なかには堂々と“0”と書く子もいる。
「0 も 記録、偉い」
怜がそう言うと、少年は胸を張った。
——“0も書く”。
あの夏、私たちが手に入れた待つの方法は、ちゃんと次へ渡っている。
「先生、“ハンガー星団”ってほんとにハンガー?」
「双眼鏡で見てみよう。こぎつね座のあたり、逆さまに……ほら、引っかかってる」
「わ、ほんとだ!」
笑い声が、赤い光の中で柔らかく跳ねる。
美月は配布テーブルの端に置いた小さな冊子を並べ直した。
表紙には『初心者むけ星見ノート(改訂3版)』とある。
最後のページには、小さく——
付録:東はいつもはじまり(一ノ瀬美月の言葉から)
視界の端で、柏木がにやりとする。
「二人とも、もう“橋”の設計者ね」
「柏木先輩だって、安全の女神です」
「女神は言い過ぎ」
ひととおりの案内が終わり、参加者に「寝転び配置」を勧める。
空気枕が一斉にぷしゅっと鳴り、風が一段やさしくなる。
そのとき、美月の肩を指で軽く叩く気配。
振り向くと、髪を肩で結んだ彼女——従姉妹が笑って立っていた。
隣には、気の優しそうな男性。
紹介された名前には聞き覚えがある。予備校の化学の彼。
二人は「去年、籍を」と照れながら言った。
胸の奥で、遠い夏の小石が完全に溶けてなくなる音がした。
「怜、赤いフィルムの使い方講義、任せたよ」
「はいはい」
従姉妹は、私の手をぎゅっと握る。
「ほんとうの幸い、ね」
それだけ言って、私たちのあいだの古い線に、静かにリボンをかけてくれた。
★
「一分法、いくよ——スタート」
怜の声で、屋上の時間がゆるく刻まれ始める。
右上、1。
次の一分、0。
「0 も 記録」が赤い光の下でいくつも書かれていく。
空の深さが増すたび、東の高みにベガが鋭く、アルタイルが通路を作り、デネブが起点で支える。
天の川の帯が、実体より“気配”でこちらへ近づいてくる。
一分のあいだに、細い一条。
少年が「同時!」と叫ぶと、怜は笑って「一分に入れて」と返す。
あの夏と同じやりとりが、別の世代に移っていく。
——橋は、残る。
ふと、美月の胸ポケットで、薄いカードが指を押した。
“新月/21:00/東=座標”
数年、離れた土地で続けてきた“ひとこと交換”の習慣。
くぐもった夜や、雲の多い夜、そして“0”の夜も、文字で渡し合った。
“0”が並ぶメッセージだって、同じ地図の上にある。
その地図を、今夜ようやく同じ屋上で重ねられる。
「少し、歩こうか」
怜が囁く。
柏木が笑って親指を立て、「行ってこい、二分で!」
新堂が「三分!」と言って柏木に叱られる。
屋上の端、手すりから一歩離れたいつもの場所。
風、赤い光、遠くの国道。
昔と変わらないレシピで、夜ができている。
「——遠い話の、続き」
怜は、胸ポケットから小さな封筒を出した。
そこには、見覚えのある字で短い手紙。
新月/21:00/東——続ける?
待つ と 行く を同じ地図で。
「研究はこれからも遠くへ行く。行くを選び続けると思う。
でも、もう“待ってて”とは言わない。一緒に行こうって言う。
移る空でも、同じ座標で会えるように——家を作ろう」
胸の中心で、視差という単語がふっと浮かぶ。
星の距離は測れても、人の距離は単位がない。
だから座標で重ねる。
だから家を作る。
息がすっと整う。
「……はい」
返事は短い。
けれど、今までの“ひとこと”の全部をまとめたみたいに、胸の奥で大きく響いた。
怜は、ほっと笑って、ふいに言葉を足す。
「君を待っていてもらうわけにはいかないって言ったあの日の続き。
やっと言える。——美月、君と、行きたい」
泣き笑いの中で、空がすっと明るくなる。
長い尾。
太い一本が、夏の三角形を横切って、痕を残した。
「記録!」
二人同時に鉛筆を走らせて、それから顔を見合わせて笑う。
ひとこと:見えない線は、ふたりの家路(美月)
ひとこと:起点は同じ、方角は一緒(怜)
二行は、あの夜みたいに、赤い光の下で静かに並んだ。
観察会の終盤、少年が手を振った。
「ねえ先生、“ほんとうの幸い”って、何?」
怜が困った顔で私を見る。
私は笑って、最初の教室の黒板を思い出しながら答えた。
「自分だけの光じゃなくて、誰かと同時に見える光のことかも。
“0”の夜も“同時”の夜も、一緒に記録できること。
それを続けられる座標を、ふたりで作ること」
「難しい!」と少年は言って、それでも「“同時”書いとく!」とカードに大きく書いた。
未来のどこかで彼がこの言葉を意味ごと拾ってくれたら、と遠い願いをひとつだけ空に置く。
「——そろそろ、お開き」
柏木の声。
赤いライトが一つずつ落ち、シートが丸められていく。
「階段はゆっくり」「白い光は外で」
口癖の号令も、今夜で何度目だろう。
それでも飽きない。飽きないことを、幸いと言ってもいい。
最後に、屋上に二人だけが残る。
風は、夏と秋のあいだ。
東の低いところには、フォーマルハウトがひとつ、孤独に見えて、孤独ではない明るさで滲んでいる。
「君の名前、やっぱり星にぴったりだ」
怜が笑う。
「満ち欠けしても、月は月。——望むだけじゃ足りないから、行くと帰るを、一緒に計画しよう」
「計画、得意です。“ひとこと”で」
二人で笑って、手すりから一歩離れた位置を確かめる。
段差、ライト、方角。
全部、昔と同じ順番で。
その「同じ」を、これからは一緒の家で重ねていく。
ふと、怜が胸ポケットから古い一枚を取り出す。
端に小さな汗の輪が残る、あの観測カード。
ひとこと:見えない線でつながる三つ
「ここから始まったんだと思う」
「うん。——東で」
カードをそっと元に戻す。
起点は、変わらない。
東は、いつもはじまり。
★
帰り道。
昇降口の白い蛍光灯は、もう目に刺さらない。
暗さに慣れる方法も、眩しさに慣れる方法も、二人で覚えたから。
商店街の角で、風鈴が一度だけ鳴る。
遠くで小さな花火の音。
夏は、やさしく終わる準備をしている。
手をつなぐ。
それは合図でも、宣言でもない。
ただ、座標の確認みたいなもの。
同じ地図の上を、同じ方向へ歩くための。
——ほんとうの幸い。
それは、向かい合うだけじゃなく、同じ方角へ並んで歩けること。
0の夜も、同時の夜も、“ひとこと”で渡し合えること。
そして、何度でも東に合わせ直せると知っていること。
見えない線は、今夜も濃い。
これから先も、濃くできる。
二人で、行くと待つを持ち寄って——家へ帰る道すがら、
空の下で、そっと笑った。
0
あなたにおすすめの小説
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
元恋人が届けた、断りたい縁談
待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。
手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。
「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」
そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?
氷華の吸血鬼ー銀氷の貴方と誓う永血の恋ー
四片霞彩
恋愛
霧の街で目覚めた私は契約を結ぶ――氷鏡の彼の人は孤独なヴァンパイアだった。
海外に暮らす祖母の元に向かっていたエレナは古びた鍵を拾ったことでヴァンパイアの国・ワムビュルス王国に転移してしまう。
辿り着いた街で人間を「餌」として捕えるヴァンパイアたちから逃げている最中、鍵に導かれるままにとある古書店の扉を開けてしまうのだった。
そこで出会った白銀のヴァンパイアの青年――ロシィから「説明は後だ」と告げられて、主従の契約を強引に結ばれたエレナ。
契約によってロシィの従者となったエレナの姿は子供へと変化して、やがて元の姿からかけ離れた愛くるしいヴァンパイアの少女に変わってしまう。
そして主人となったロシィから「ノエリス」と名付けられたエレナは、ヴァンパイアたちから保護してもらう代わりにロシィに仕えることになるのだった。
渋々ロシィが営む古書店で働き始めたエレナだったが、素っ気ない態度ながらも甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるロシィに次第に心を許し始める。
しかし砂時計の砂が全て落ちた時に2人の立場は逆転してしまう。
エレナは「ヴァンパイアの麗しき女主人・ノエリス」、ロシィは「女主人に仕える少年従者・ロシィ」へと姿まで変わってしまうのだった。
主人と従者を行き来する2人は種族や生まれの違いから何度もすれ違って衝突するが、やがてお互いの心を深く知ることになる。
氷鏡のような白銀のヴァンパイアが異なる世界から現れた人間に心を溶かされ、やがて“等しく”交わった時、主従の信愛は番の最愛へと変わる。
ダークファンタジー×溺愛×主従の恋物語。
凍りついた主従の鎖は甘く蕩けるような番の結びとなる。
※他サイトでも公開予定
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる