深い青を愛してる

あおなゆみ

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無防備な表情

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 18時を告げる鐘が鳴る。
その子は僕を見ていたようだった。
制服を着ている。
高校生くらいだろうか。
視線を感じ、僕がその子の方を見た時には、慌てたように去っていくところだった。
その慌て方が、少しだけ面白い。
だが、正体がバレてしまったかもしれない、という不安が押し寄せてくる。
噂というのは一気に広まる。
だから、さっきの子が誰かに話せば、僕はこの町を出る事になるだろう。

 それから一週間後。
公園のすぐ近くにある図書館に行ってみることにした。
17時になろうとしている時間だった。
 僕が好きだと言った小説に、図書館での場面が多く登場する。
この町が舞台なのだから、もしかするとこの図書館がモデルになっているかもしれない、なんて思った。
 
 図書館にいる人は本に夢中で、誰も僕に気付いている様子はない。
だから僕は安心しきっていた。
図書館に来たからこそ読めるような本を探そうと、棚から一冊本を取った時。
その反対側にいた人と目が合う。
棚と本の隙間から見えるその人の表情は、凄く驚いているようだった。
その慌てたような、焦ったような姿に、見覚えがる。
目を大きく開き、口も少しだけ開いている。
その無防備な表情が、強く僕の胸を強く打つようだった。
 実際にどれくらいの間、目を合わせていたのか分からない。
先に目を逸らしたのは、彼女だった。

 何事もなかったフリをしている自分が恥ずかしいのか、自分でも気付かない不安があったのか、僕は本棚の反対側に向かった。
この時、僕を動かした要因は何だったのだろう。
彼女に僕がここにいる事を秘密にしてもらわないといけない、という不安要素だったのか。
もう僕には、少しでも希望のある行き場所がないから。
あるいはただ、彼女に興味を持ってしまったからなのか。


 この時の不安は、その後の僕にも説明は出来ないものだったし、彼女がいなければきっと、ただただ暗い方へと進むしかなかったかもしれない。
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