深い青を愛してる

あおなゆみ

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元恋人

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 図書館で彼女に声を掛けた時、色々な事を考えていた。
きっとこれから会うこともないだろう事務所の人間、元恋人。
彼らと交わした会話。
楽しかった事。
言われたくなかった言葉。
 
 元恋人は、ドラマや映画にも出たいと言っていたから、僕はいつか画面越しで会う事になるかもしれない。
その時僕は何を思うだろう。
不安や恐怖に打ち勝ち、音楽を続けていない自分に失望するのか。
音楽をやめるなら当たり前、という流れで別れた元恋人にも未練を感じるのか。
 

 元恋人に言われた事がある。

「次に曲を作る時、隣にいたらダメかな?」

僕はあからさまに嫌な顔をしたと思う。
曲を作る人ならきっとほとんどが嫌がるはずだ。
だけど焦点をあてるべきは、そこではない。

「ごめん、それはちょっと...」

「そうだよね。ごめんね。ダメだとは思ったんだけど、聞いてみたかったの」

元恋人は優しく微笑んだ。

 僕がするべき事は、曲を作る時に隣にいさせてあげる事ではなかった。
僕らの関係について、もっと考えを巡らせるべきだった。
僕の気持ちを少しでも表現するべきだったのだ。

 あまりにも元恋人に自分を見せない自分。
いつの間にか、不安にさせてしまっていたのかもしれない。
元恋人が一人で恋をしていると思わせるような、空気感。
僕は僕を好きだと言ってくれる人に甘えていた。
   
 僕は本音を見せる事ができないと分かっていた。
本音を見せない事に特別なものを感じていたから。
本音を見せない事が僕を作る、もしくは曲を作る上で重要な要素となっている、と。
想いを言葉にしてしまうと、心の何かが変わってしまう。
音楽が変わってしまう。


 告白も向こうからだったし、元恋人がいつも僕を笑わせてくれて、逆に怒る時も向こうが一人で怒っていた。
沢山のきっかけを作ってくれたのは、全て元恋人で、僕ではなかったのに、別れのきっかけだけが僕になってしまった。


 深い青の夜は僕だけのもの。
でも、深い青の夜に生まれた曲には、元恋人に影響された感情だって含まれていたはずだ。
それなのに、何もしてあげられなかった。
僕の曲を好きだと言い、僕の何気ない目配せが好きだと言った元恋人。
付き合っていた3年間。
その分、誰にも言えない秘密が増えた3年間。


 僕が図書館で彼女のもとへ向かった事実。
時間など関係ない、概念。
彼女になら本音を見せられるのではないかという直感。
そういう出会いはあって、瞳だけで伝わってしまう感情もある。
醸し出す空気感に安心し、少しだけでもそばにいたいと願う人がいる。
考えが多く、面倒くさい、弱さにかまける僕が前を向く為に出会った彼女。
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