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恋人への懺悔
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私は高校一年の夏、中学から付き合っていた恋人を亡くした。
どうして良いか分からなくなった私は、恋人が好きだと言っていた小説を読み始める。
いくら薦められても、読書が好きじゃなかった私は頑なに断り続けていた。
それなのに、いなくなったら、恋人の好きだったものを必死に求めた。
そして、その物語に恋人を重ね、恋人の体温を思い出すような涙を流した。
私が彼と彼の音楽に出会ったのはその頃だった。
恋人に会えない悲しみを癒やしてくれた存在。
彼はデビューして3年目、私は小説を書き始めていた。
物語は物語でありながらも、ノンフィクションの部分が多く、3日で書き終えた。
この後の選択がいけなかったのだと思う。
私だけの秘密にしたのならどれほど良かったか。
私は、小説投稿サイトにその物語を投稿した。
閲覧数は増え、ついには小説化しないかという誘いまできた。
私は、恋人の母親に相談した。
人生で一番勇気を振り絞って発言した事だった。
彼女は涙を流しながら、
「沢山の人に、息子の一部でも知ってもらえるなら。私は嬉しい。息子が誰かの心に、間接的にでも残ってくれると思うと...ありがとう」
と私の手を握った。
この頃の私は現実感というのが少し欠けていたんだと思う。
全てが眠りと現実の間みたいな、そんな感覚があった。
だから私は、勇気を簡単に乱用できたし、臆病な心も麻痺していた。
普段の自分なら選択しない事ばかりを選ぶ。
一年も掛からず、私の本は書店に並んだ。
その頃には私は現実感に引き戻され、恋人を亡くしてとった行動に後悔している最中だった。
まるで、恋人を自分の利益の為に使ってしまったような、そんな罪悪感。
恋人との物語を、恋人への想いを自分の中だけで紡ぎ続けるべきだったと。
本名で小説を書いた訳ではなかったから、私が小説を書いた事を知っているのは自分の両親と、恋人の母親だけだった。
両親はこのまま小説家になる事を望んだが、私は
「もう小説は書きたくない。真面目に勉強して...今はまだ何がしたいか分からないけど、やりたい事を見つけて働く」
と強い意志を持って伝えた。
その強い意志は、恋人への懺悔のようだった。
本心は、自分の起こした行動に対する恐怖で、どこか深いところへ隠された。
勉強の為に図書館に行くようにはなったけれど、図書館へ行く時にはいつも、なんとも言えない胸騒ぎがした。
それは嫌なものではなく、何かを私に訴えかける、深い青の夜に聴く彼の歌みたいだった。
沢山の本に囲まれる空間で、物語を再び書きたいという本心が声を上げようとする。
そして、恋人をまだ恋人と呼んで良いのか、それにも迷っていた。
どうして良いか分からなくなった私は、恋人が好きだと言っていた小説を読み始める。
いくら薦められても、読書が好きじゃなかった私は頑なに断り続けていた。
それなのに、いなくなったら、恋人の好きだったものを必死に求めた。
そして、その物語に恋人を重ね、恋人の体温を思い出すような涙を流した。
私が彼と彼の音楽に出会ったのはその頃だった。
恋人に会えない悲しみを癒やしてくれた存在。
彼はデビューして3年目、私は小説を書き始めていた。
物語は物語でありながらも、ノンフィクションの部分が多く、3日で書き終えた。
この後の選択がいけなかったのだと思う。
私だけの秘密にしたのならどれほど良かったか。
私は、小説投稿サイトにその物語を投稿した。
閲覧数は増え、ついには小説化しないかという誘いまできた。
私は、恋人の母親に相談した。
人生で一番勇気を振り絞って発言した事だった。
彼女は涙を流しながら、
「沢山の人に、息子の一部でも知ってもらえるなら。私は嬉しい。息子が誰かの心に、間接的にでも残ってくれると思うと...ありがとう」
と私の手を握った。
この頃の私は現実感というのが少し欠けていたんだと思う。
全てが眠りと現実の間みたいな、そんな感覚があった。
だから私は、勇気を簡単に乱用できたし、臆病な心も麻痺していた。
普段の自分なら選択しない事ばかりを選ぶ。
一年も掛からず、私の本は書店に並んだ。
その頃には私は現実感に引き戻され、恋人を亡くしてとった行動に後悔している最中だった。
まるで、恋人を自分の利益の為に使ってしまったような、そんな罪悪感。
恋人との物語を、恋人への想いを自分の中だけで紡ぎ続けるべきだったと。
本名で小説を書いた訳ではなかったから、私が小説を書いた事を知っているのは自分の両親と、恋人の母親だけだった。
両親はこのまま小説家になる事を望んだが、私は
「もう小説は書きたくない。真面目に勉強して...今はまだ何がしたいか分からないけど、やりたい事を見つけて働く」
と強い意志を持って伝えた。
その強い意志は、恋人への懺悔のようだった。
本心は、自分の起こした行動に対する恐怖で、どこか深いところへ隠された。
勉強の為に図書館に行くようにはなったけれど、図書館へ行く時にはいつも、なんとも言えない胸騒ぎがした。
それは嫌なものではなく、何かを私に訴えかける、深い青の夜に聴く彼の歌みたいだった。
沢山の本に囲まれる空間で、物語を再び書きたいという本心が声を上げようとする。
そして、恋人をまだ恋人と呼んで良いのか、それにも迷っていた。
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