深い青を愛してる

あおなゆみ

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ついてもいい嘘

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 私は彼に嘘をついた。
目の前の私が、その物語を書いた本人だとはどうしても言えなかった。


「うん。変わると思う。それほど僕が好きな物語を書いた人だから」

彼がそう言った時の私の感情や、心臓が震え上がるような気持ち。
彼の強い瞳に、もしかすると彼は私の正体を知っているのではないか、とさえ思えてくる。
彼は続けて言った。

「変わる事が、また音楽を始める事に繋がるかは分からない。でもきっと、前向きな方に進めるのは間違いない」

私から視線を逸らすと、下を向き、少しだけ切ない横顔を見せた。
何も言えずに黙っていると、空気を変えるように明るい表情でこっちに向き直る。

「もしかして、受験生?」

「はい、そうです」

「そっか。じゃあ図書館で勉強してるんだ?」

「はい」

彼は私の将来について聞いたりしなかった。
私の苦手な質問。
ほとんどの受験生が苦手とする質問かもしれない。
将来について聞かれるのは、どうも落ち着かない気持ちになる。
だから彼がこの後も、そういう事を聞かないとは分かっていたけれど、話の展開を変えたかった。

「勉強もしますけど、本も沢山読みます。どっちかというと、勉強より読書の割合の方が多いかもしれません。昔は読書が好きじゃなかったんですけど、今は大好きで」

「もし良かったらなんだけど...」

「はい」

彼はどうしてか、囁くような声で言った。

「おすすめの本があったら教えてくれないかな?」

きっと彼にとっては、秘密に近い質問なのだろうと悟った。
自分の好きな小説を誰にも言わない人にとっては、誰かに好きな小説を聞くというのは、とても貴重で、とても親密なものなのかもしれないと。
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