深い青を愛してる

あおなゆみ

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もう少しだけでいい

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 二人で図書館に戻り、二人で沢山の本棚を見て回った。
彼女は楽しそうに自分の好きな小説やエッセイや美術書について小声で話してくれた。
極力短い言葉で、魅力的に。 
あまり話しすぎるのはよくないから、彼女の持っていたノートに文字を書き、それで会話もした。
難しい単語は使わないけれど、少しだけ飾られた言葉。
そうやって僕らはお互いの秘密を、最愛を語り合った。
大切なものを、誰かに話すのは僕にとって簡単な事ではなかったはずなのに、彼女にはいとも簡単に話す事ができる。

 深い青の夜を思い出した。
僕が特別になれたあの夜。
深い青の夜に似ている彼女。
僕らにとっての最愛は秘密だ。
その秘密を少しだけ明かし合った今日。



 図書館を出て別れ際に彼女は言った。

「私も、今日おすすめした好きな本について、誰にも話した事なかったです」

恥ずかしそうにする彼女。
多分、恥ずかしい時に唇を噛む癖がある。
3年も付き合った元恋人の癖も知らないのに、僕はどうかしている。

「教えてくれてありがとう。早速読んでみるよ」

「楽しかったです。ありがとうございました」

「こちらこそ」

別れるタイミングだと分かっていても、僕は彼女より先にその場を去ろうとは思えなかった。
二人とも、今日が最後だと思っていた。
同じ町にいるとしても、そんなのは関係なく最後だと。
理由は分からない。
”いつか”は分からないけれど、”今”はひとまず終わりだと。

彼女が勇気を振り絞ったような、少し緊張の伝わる声で言う。

「またいつか、会いたいです」

やっぱり唇を噛んだ彼女。
だから僕も勇気を振り絞って言った。

「僕も会いたい。絶対に」

彼女は深くお辞儀をし、その後恥ずかしそうに手を振った。
本棚越しに目が合ったあの日のように、彼女は可愛かった。
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