深い青を愛してる

あおなゆみ

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全てが私の糧になる

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 私は自分の為にも、彼の為にも物語を書き始めた。
恋人への罪悪感を言い訳に、小説を書く事の楽しみを深いところに追いやっていた。
私は物語を書くのが好きで、それを届けたい人がいる。

 図書館には行かなくなった。
秘密の共有が、私達を近づけ、遠ざけた。
彼も来るのをやめているとは思ったけれど、会うのは絶対に、新たな物語が彼に届いてからでなくてはならない。
彼に届け続けなければならない。

 私は深い青の夜だけに逃げるのをやめた。
もちろん深い青の夜も存在し続けているが、薄暗い朝にだって、眩しい昼にだって物語を書き続ける。
そしてどんな時にも、彼の作った曲が存在していた。
そうして、あっという間に時は流れていった。



 久しぶりに帰った故郷。
変わらない景色に笑みがこぼれる。
 自然と向かった先は、図書館だった。
最後に行ったあの日から、3年は経っている。
あの図書館。
彼と過ごした夢のような時間。
誰にも話したことのなかった話に、ついた嘘。

 中に入り、私は自分の書いた小説が全部揃っている事に感動を覚えた。
私の紡いだ物語は、彼に届いているのだろうか。
 
 あれから彼が歌手や作曲家として復活する事はなかった。
何度、彼の名前を検索した事だろう。
彼に関する記事も一切無く、現状を知るなど出来なかった。

 それでも私は良かった。
新しい彼の曲が聴けなくても、あの日、彼に出会えた思い出がある。
私を救った彼の曲。
彼が再び音楽を始めない事の切なさ。
全てが私の糧になる。
私を悲しみから救った、彼。


「あの...」

遠慮気味な囁き声が聞こえる。
私は何かに期待するべきなのだろうか。
でも、その声は、深い青の夜に何度も聞いたあの声に似ている気がした。
私は振り返る。
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