聖女召喚に巻き込まれて、異世界にきたオレは追放されて聖人になる

坂道冬秋

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ACT7〜決意〜

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フュッ!という風を斬る音が辺りに響く。オレは、剣を上段から自分の喉元の高さまで切り落としていた。日課の素振りだ。この村に来て、毎朝この素振りだけはするようにしていた。

「朝食できたよ~!」
家の窓から顔を出したニナが、オレに声をかけた。

「ああ!ありがとう!すぐに行くよ」
オレは、そう言って水で濡らしたタオルで顔を拭いた。

「アレ?ピラム変えた?」
「うん、いつも使ってるのと、違う野菜を使って作ってみたの」

ニナは楽しそうに言いながら、オレの前の席に着いた。ピラムとは、元の世界で言うピクルスのようなものだ。朝ごはんのお供の漬物みたいなものだ。

「こっちの方が、このパンに合うと思うの!」
ニナは、そう言いながらピラムをパンに挟んでいた。

ドン!ドン!ドン!
その時、ドアを乱暴に叩く音がした。

「マサノリ!ニナ!居るか?」
ゲランの声だった。どうやら、大分急いでいるらしい。

「どうしたんですか?慌てて」
オレは、ドアを開けるなり家に飛び込んできたゲランに、そう声をかけた。

「国境付近で大規模な衝突があった!」
「帝国とですか?」

オレ達の住むヴァンライズ王国の東側には、リンドギル帝国という国がある。この二つの国は、潜在的な敵国だった。昔から何度も戦争をしている。ここ数十年は大きな戦争はしていないが、国境付近では小競り合いが続いていたらしい。

「今までも小競り合いはあったが、今回は少し規模が大きいみたいだ」
国境付近にあるこの村にも、大きな影響があるのだろう。

「もしかしたら、この村も巻き込まれるかもしれない!いつでも逃げれる用意をしてくれ」
「わかりした!」

オレ達は、ゲランにそう答えた。おそらく、この村が戦場になる事はない。問題なのは、侵攻した敵兵が紛れ込んでくる事だ。そして、一番厄介なのは、警備兵がこの村に来る事だ。

戦況という点では、味方である警備兵が村に来る事は問題ではない。ただ、オレとニナの場合はそうではない。オレ達はあくまで逃亡者だからだ。魔術で作った手配書は、元いた世界の写真並に正確だ。バレる危険がある。

「とりあえず、最悪を想定して逃げれる準備をしましょう」
ニナがそう言って、部屋の奥に移動していった。オレもそれに従う。



太陽が頭上に上がった頃、オレとニナは家の中にいた。どんな状況にも対応できるようにだ。

「何?今の声!」
遠くで悲鳴が聞こえていた。ニナは、その声を聞いたのだ。

「何かあったんだ!」
村から悲鳴が聞こえる理由は一つしか考えられない。敵である帝国兵士が、この村に来たのだ。

「家から出たらダメよ!マサノリ!」
「ああ!わかってる」

オレは、ニナにそう答えていた。でも、魔術や剣術を訓練したオレが行けば、助けれる人間がいるかもしれない。オレは、そう考えずにはいられなかった。

「ダメよ!マサノリ!」
オレの表情から、考えている事を理解したのだろう、ニナがオレに言う。

「本当なら、ここで隠れていれば、やり過ごせるんだろうけど」
オレがそう言うと、ニナがオレの腕を掴んだ。

「ごめん!オレ、様子を見てくるよ」
「魔術は強力よ!この辺境で使える人間はいないわ!だから、力にはなれると思う」
そう言ったニナの目も決意に変わっていた。

「でも、それをすれば私達はここにいれなくなる」
「ごめん!それに、魔術を使わなくてすむかもしれないし」
これは、オレの希望的観測でしかない。悲鳴が聞こえ続ける現状に行けば、戦う事になるのは必然だった。

「わかった!私も行くわ」
「ニナ」
オレはニナを見つめた。

「戦闘に関しては、マサノリより訓練を受けてるしね」
そう言って、微笑んだ。その笑みは力強いものにオレは感じられた。



村の中心部まで来たオレとニナは、信じれない光景を見た。敵である帝国兵士が、村人を襲っていたのだ。人数は十人はいないだろうが、複数の兵士がいる。

「ふざけるなよ!」
オレは、そう言いながら走り出す。ニナもオレに並走していた。チラっと顔を見ると、見た事のない怒りの表情を浮かべていた。

「これでもくらいなさい!」
ニナがそう叫びながら水の魔術を打ち出す。水が槍のような形になって、敵兵士に突き刺さる。

「消えろ!」
オレは、そう叫びながらニナに少し遅れて炎の魔術を打ち出した。

「なんだ!オマエ達!」
そう言いながら、敵兵士が剣を両手で持ち直しながら向かってきた。

「覚悟は決めたんだ!今回はな!」
オレは、そう言いながら剣を抜き放ち敵兵士を迎え撃つ。

「死ね!」
そう言いながら、斬りかかってきた敵兵士の剣を打ち落としつつ剣先で相手の喉を突く。

「ぐぇ!」
オレは、そんなうめき声を上げながら倒れる兵士を横目で確認しつつ、二人目に斬りかかる。

「ガキンッ!」
相手の兵士が剣で受け止めた。オレは、片手で相手の剣の柄を握り、押し上げると同時に脇腹に自らの剣を突き立てた。

「ぐえ!」
敵兵士は、崩れ落ちた。オレの手には嫌な感触が残っている。

「次はどいつだ!」
オレが、残った兵士を見る。オレ達の魔術と、オレが二人を斬った事で、ほとんどの敵兵士は倒れていた。残った兵士は二人だけだ。

「クソ!引くぞ!」
そう言って、二人の兵士は走り去って行った。

「大丈夫?マサノリ!」
ニナがオレに駆け寄ってきた。

「ああ、大丈夫!今回は覚悟を決めてきたから」
ここに来るという事は、戦う可能性があるという事だ。そしてそれは、人を殺す可能性があるという事だ。殺される可能性があるという事だ。

「前に逃げて森で戦った時とは違う!今回は自分の意思で戦った」
「本当に大丈夫?」

ニナが心配した顔を見せる。この世界の命の価値と元の世界の価値には、大きな違いがある。この世界の命の価値は軽い。オレは、倒れている兵士を見て、それを思い出していた。

「オイ!なんでこんな所にいるんだ!」
倒れている兵士を見ながらゲランが駆け寄ってきた。どうやら、村人を避難させていたらしい。

「これは、オマエ達がやったのか」
「すいません!ほっとけなくって」
オレは、ゲランに謝る事しかできなかった。

「いや、すまない!こっちこそ助けて貰ったな」
そう言いながらゲランは、今の現状を説明してくれた。

「国境付近で戦闘があって、一部の帝国兵士がこの辺りまで来たらしい」
「なんで、こんな所まで?」
オレは、ゲランに聞いていた。村が国境に近いと言っても、それなりに国境からは離れている。

「戦闘で本隊からはぐれた奴らが、この辺りまで逃げて来たらしい」
「それで村を襲ったんですか?」
「食料とか物資を奪おうとしたんだろうな」

戦場から離れた兵士が、この村まで来て逃げるために略奪をする。元の世界のマンガとかで見た事がある。この世界では、本当にある事なのだと実感した。

「ゲラン!すぐに来てくれ!ケガ人が多数出た」

「何処だ!」
「今、ケガ人は教会に集めている!」
ゲランを追って来た村人が報告していた。教会とは、村の中心にあるアルティア正教の教会だ。

「ニナ!ごめん!やるよ」
オレは、ニナに静に言った。

「うん、わかった!」
ニナは、オレが考えている事を理解しているのだろう。短く答えていた。

「ゲランさん!オレも行きます!」
「教会にか?オマエまさか?」
ゲランも、オレが考えている事を理解したようであった。

「オレなら助ける事ができます!」
オレは、そう言いながら歩き出した。

「オマエ、聖属性魔術で治療するつもりか?」
「はい!」
ゲランの言葉にオレが短く答える。

「そんな事したら、騎士や中央にオマエ達がここにいる事がバレるぞ!」
「わかってます!」
オレは、そう答えながら歩き続ける。

「オマエ…」
ゲランが言葉を失っていた。そして教会に着いたオレの前には、多数のケガ人がいた。重傷者や今にも死にそうな村人も見て取れた。

「ヒール!」
「ヒールフィールド!」
オレは、回復魔術を連発した。


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