聖女召喚に巻き込まれて、異世界にきたオレは追放されて聖人になる

坂道冬秋

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ACT40〜第二王子との面会〜

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オレ達が王都に戻った時は、凱旋といった感じではなかった。

魔物を討伐した騎士団を見物に来る人間は少なからずいたが、歓迎されているという程でもなかった。

通常の騎士団帰還といった感じでしかなかった。

「おい、ミラン!見ろよ!あれが、前に言っていた聖人様だよ」

「マーク!そんなに押さなくても見えてるよ!異世界人なんだよな?なんか、普通の異人みたいだな」

そんな声が近くで聞こえた時、王都にもオレが聖人と呼ばれている事が、噂になっている事が実感できた。

「この王都まで、聖人の噂は広まってるみたいね」

ニナがオレの近くまで来て、小声で話しかけてきた。

「みたいだな!」

オレは、自信が預かり知らない所で話が広まっていく事に恐怖を覚えていた。

考えてみれば、オレが元いた世界ではネットによって、さらに広範囲に噂が拡散されていた。

オレ自身が噂になった事がなかったのと、仮にそうなっても命の危機を感じる事は少ない。

だが、この世界の噂は、命の危険を伴う場合がある。実際、聖人の噂のおかげで暗殺されかけたのだから。

「大丈夫ですか?」

オレが、そんな事を考えていると、心配したのかリーシオが声をかけてきた。

ニナとナミナもオレを見つめていた。

「あ!ゴメン、ちょっと考え事をしちゃって!」

そう言って、オレは乾いた笑いをしていた。





「さあ、こっちだ!」

ゲランさんがそう言った。ゲランさんとガイム団長の二人が、オレを王宮の一室に促した。

オレとニナ、ナミナとリーシオの四人は、王宮に到着してすぐに、この部屋に連れて来られていた。

「入ります!」

ゲランさんが、ノックをした後そう言ってドアを開けた。そこは、執務室のような部屋だった。

正面に大きな机があり、その前に来客用のソファが並んでいた。

「やっと顔を合わせる事ができますね!待ちわびましたよ、どうぞ!」

正面の机に座っていた青年が、笑顔でオレ達をもてなしていた。

「はじめまして、私はこの国の第二王子、ヘンスード・フォン・ヴァンライズです」

気さくな感じで挨拶した青年は、王国の第二王子を名乗った。

「は、はじめまして、藤本正則です」

オレは、少し動揺しながら自己紹介をした。

「そんなに緊張しないでください!あなた方を招いたのは私の方ですから」

ヘンスード王子は、また微笑みながら言った。その後、少し言葉を交わして、オレ達は机の前のソファに座った。

オレとゲランさん、ガイム団長がソファに座り、正面に腰をかけたヘンスード王子に対する。

ニナ達三人は、オレ達の後ろで立って話の行方を見守っていた。

「まず、王族の代表として、マサノリ殿への今までの非礼をお詫びさせていただきます」

ヘンスード王子は、そう言って頭を下げた。

王族がこのような事をするのは、異例の事らしい。

「いえ、ヘンスード殿下が謝る事ではないので…」

オレは、咄嗟にそう言って、口をモゴモゴさせていた。

「いや、これは王族としてハッキリさせねばならない事ですから」

そう言って、ヘンスード王子は、また頭を下げていた。

「そして、このような非公式の場でしか、お詫びをできない私を許して欲しい」

さらに、ヘンスード王子はそう言った。

「いえ、頭を上げてください」

「ありがとう!」

オレが、そう言うとヘンスード王子は、笑顔でお礼を言った。

「先程も言ったが、この面会は非公式なものです。国王を差し置いて公式に謝罪する訳にもいかないので、ご容赦下さい」

「いえ、そんな、気にしてませんから!」

オレがヘンスード王子に答えた。

「その上でお願いがあるのです!」

ヘンスード王子が、姿勢を正すようにして言った。

「お願いですか?」

オレは、いきなり話が変わったので、ドギマギしながら答えた。

「はい!魔物の討伐に力を貸していただきたいのです!」

「魔物の討伐ですか?」

オレは、今までもずっと魔物の討伐をしてきた。

今さら、改めてお願いされる事に違和感を感じていた。

「あなた方にとっては、今までも討伐をされてきたので、特別な事とは思わないかもしれませんが、私達と一緒に討伐を行うという事は、特別な事なのです」

「王族の後ろ楯がつくという事は、国家事業として認められるという事だ!そして、国家から援助も受けられる!」

ゲランさんが、王子の説明に付け足すように言った。

「もちろん、オマエの命を狙う事は難しくなるだろうし、魔物の討伐もやりやすくなる」

ゲランさんがさらに説明を続けた。

「実際、アルティア正教は、あなたを異端認定しようとしていました。今回は、私が後ろ楯になる事で、それについては白紙に戻す事ができました」

なんでも、オレはアルティア正教から異端認定されるところだったらしい。

異端認定された場合は、今まで以上に正教から命を狙われるだけでなく、王国にいる正教の信者全てが、オレを狙うという事でもある。

また、それらの弾圧が正当化されるという事でもあった。

ただ、異端認定を決定するには、書類の審査など時間がかかるのだそうだ。

まあ、簡単に決められるシステムなら異端者だらけになってしまう。

今回は、その手続きの最中に、ヘンスード王子が後ろ楯になり、白紙になったそうだ。

「一つ聞いてもいいでしょうか?」

後ろで聞いていたニナが、恐る恐る口を開いた。

「何かな?」

ヘンスード王子は、ニナに笑顔を向けて答えた。

「殿下がマサノリの後ろ楯になった場合、聖女様を推しているローレンツ王子と対立する事になりませんか?」

「そうなるね!」

ニナの質問に、ヘンスード王子は簡単に答えた。ニナが驚いた顔で固まっていた。

「兄上だけでなく、国王派閥とも対立しかねないだろうね!」

「そんな!それでは、国が割れてしまいます!最悪…」

リーシオが耐えきれずに口を開いた。

「最悪内戦になる!かな?大丈夫、父上、国王には話しをしてある!国王派閥との対立はないだろうね」

「では、ローレンツ王子とは?」

ニナが恐る恐る聞いた。

「そこは対立するだろうね。兄上は聖女様を推してる訳だしね」

ヘンスード王子が簡単に言ってのけた。

「あと、アルティア正教とも対立するだろう!」

ゲランさんが付け加える。

「でもね!今はそんな事を言っている時ではないと、私は思うんだ!魔物達は待ってはくれない!私達が対立している間に、国民が苦しむ事になる!」

「だから、オレ達の後ろ楯になって、魔物の討伐を行うと」

オレが王子の言葉に続けた。

「その通りだ!君達に力を貸して欲しい!」

オレは考えていた。王子の言う事が本心なのかと。

たぶん、色々な事を経験し過ぎて、素直に信じる事ができなくなってしまってるのだろう。

実際、この対立は、王位継承権が関わってくる問題でもあった。

オレ達を利用しているだけかもしれないのだ。

「わかりました!オレ達の力をお使い下さい!」

オレは、そう答えていた。王子の真意はわからない。

そして、周りの人間達もオレ達を利用しようとするだろう。

でも、それでも多くの人を守れるのなら、この話に乗るしかないと思ったからだ。

これにより、このヴァンライズ王国は、色々な意味で動き出す事になる。

そして、その中心にいるのが、オレと聖女なのだろう。

オレは、この時、何となくそれを感じていた。




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