猫を探しています!~その町の怪異がある所にその黒猫がいる!私はその黒猫を……~

坂道冬秋

文字の大きさ
26 / 47

第二十六話〜タクシー2~

しおりを挟む
「こっちビール下さ~い!」



片桐遥香がいつものようにビールをおかわりしていた。



「また~!飲み過ぎないでよ!」



そう言った私も、目の前のビールジョッキを手に取り、一気に飲み干した。



「美里さんもじゃないですか~!」



私を美里さんと呼んだ遥香は、私の後輩だった。と、言っても私が前に働いていた雑誌社での話だ。



私がフリーになった後は、時々こうやって会って愚痴を言い合う仲だ。



ただ、最近は会って話す内容が変わってきている。



「それで?」



「何がですか?」



「何かあったから呼んだんでしょ!」



私は、そう言って、遥香の話を促した。



「本当は、もう少し酔ってから話したかったんですけど~!」



そう言いながら、遥香はスマホを取り出した。



「まず、この動画を見ていただけませんか!」



そう言って、遥香は私にスマホを渡す。私は指示された通りスマホの画面を見た。



「何これ?」



私は、その動画を見て、思わず声を出していた。



「その動画、ある事件の目撃者が持ってた動画なんです」



遥香がそう説明した動画には、黒猫の後ろ姿が映っていた。






動画には、黒猫が何処かの道路に座っている。黒猫の前に大きな道路がはしっていた。少し段差があるので、黒猫は歩道に座っているようだ。外野で、カワイイとかいう声が聞こえている。おそらく撮影者の声だろう。しばらくすると、黒猫の前にタクシーが止まった。そして、黒猫はタクシーに乗った。タクシーは、普通にお客を乗せたように、ドアを閉めて、はしっていってしまった。






「ちょっと!何この動画?」



私は混乱していた。黒猫が動画に映っている事もだが、内容が異様であった。



猫がタクシーに乗るなんて考えられない。これが、この街の黒猫でなければ、面白い映像なのかもしれない。



でも、私には不気味に思えた。



「少し前に、◯◯駅の近くの道路でタクシーが事故にあった事件、知ってますか?」



私は、記憶を探りながら遥香の言う事件を思い出していた。



「確か、タクシーが事故って運転手が死亡した事件よね」



私が、うろ覚えの記憶を引っ張り出す。



「そのタクシーから、行方不明事件の女性の遺留品が出たんだっけ?」



「はい、その事件です」



事件の概要は下記の通りである。






20××年12月18日、◯◯駅の近くの道路で、タクシーが電柱に衝突する事故がおきた。この事故により、タクシー運転手の山下耕平四十二歳が死亡した。この事故がおきた道路は直進だったが、何らかの原因でハンドル操作を誤り事故に至ったと推測された。なお、ブレーキ痕は無く、猛スピードで電柱にぶつかったようである。この事故の後、このタクシーから女性もののバッグが見つかり、持ち主は菅井由希二十四歳の物と断定した。菅井由希は、当時、行方不明であり捜索願いが出ていた。



警察は、山下耕平の自宅を家宅捜索。そこから、行方不明になっている女性の遺留品を多数発見した。また、パソコン内に彼女達を縛り監禁していると思われる画像が見つかり、その画像を解析したところ、某所の山中と判明。捜索したところ複数の女性の遺体を発見した。この事から、山下耕平がタクシーに乗車した女性を拉致監禁し、殺害した後、この山中に埋めたと警察により結論づけられた。なお、犯人である山下耕平が死亡している事から、被疑者死亡のため、検察庁に書類送検という形で

幕を閉じた。






私は、遥香から渡された資料を読み終えて、視線を上げた。



「もしかして、この動画の黒猫が乗ったタクシーって……」



「はい、そうです。死んだ山下耕平のタクシーです」



私は寒気を感じていた。



「この動画は、たまたま歩道に座っている黒猫を見つけて撮影したものだそうです」



遥香が説明してくれた。確かに、猫好きなら歩道に座っている猫がいたら撮影するかもしれない。



「この動画の後、タクシーは電柱に突っ込んでいます」



そう言った遥香も、恐怖を感じているようだった。



撮影者は、黒猫がタクシーに乗った後、不思議に思ったが、撮影を止めて駅の方に歩き出したそうだ。



その直後、大きな音がして、振り返るとタクシーが電柱に突っ込んでいたのだと言う。



「タクシーに乗った黒猫はどうなったの」



私は、それが一番に気になっていた。



「タクシーからは猫の死体などは見つかっていないので、たぶん逃げたんだと思います」



それを聞いた私は、どこかで安堵している自分に気づいた。



「美里さん、どう思いますか」



「どうって」



私は、まだ考えがまとまっていなかった。



「もし、この事故が黒猫によって引き起こされたものなら、黒猫は制裁を加えたんじゃないでしょうか」



遥香の言葉を聞いて、私は恐怖を感じていた。それと同時に、何か違和感も感じていた。



「黒猫が、亡くなった女性の代わりに山下耕平に制裁を加えたって言うの」



「はい、そうとしか思えないんです」



遥香は、いつになく真剣な表情で言っていた。



「たぶん黒猫は、普通じゃない力を持っているんですよ」



「何、普通じゃない力って」



私は、否定的な言い方で遥香に答えた。でも、本当は私もそれを否定できなくなっていた。



「わからないですけど、そうじゃないと説明できない事が多過ぎます」



「言いたい事はわかるけど、他の事件では黒猫は……」



そう言いかけて、違和感の正体がわかったような気がした。



「どうしたんですか、美里さん」



「なんか、おかしくない?」



私は、遥香の顔を真っ直ぐに見た。



「この事件だけ、黒猫が直接的におこしたように感じるんだけど」



「そうですよ。だから、黒猫には特別な力があって……」



そこまで言って、遥香も何かに気づいたようだった。



「確かに、この事件だけ毛色が違うような気がします」



自身の中で何かを理解したように、遥香が言った。



「今までの事件にも、黒猫は必ず現れてた」



「でも、この事件のように、直接的に事件を引き起こすわけではなかったですね」



私の言葉の後を遥香が拾って言った。



「ええ、この事件だけ何か違うのよ」



私はそう言った。



「この事件にだけ、何か特別な事があるって事ですか」



「そうよ、何か黒猫が直接的に関わる理由があるのよ」



私の言葉に、遥香は頷いていた。



「私、もう少し調べてみます」



遥香は、そう宣言しながら半分残っていたビールを飲み干した。



私達は、もしかしたら黒猫の真意を知る、糸口を見つけたのかもしれない。



私は、その時そう感じていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

視える僕らのシェアハウス

橘しづき
ホラー
 安藤花音は、ごく普通のOLだった。だが25歳の誕生日を境に、急におかしなものが見え始める。    電車に飛び込んでバラバラになる男性、やせ細った子供の姿、どれもこの世のものではない者たち。家の中にまで入ってくるそれらに、花音は仕事にも行けず追い詰められていた。    ある日、駅のホームで電車を待っていると、霊に引き込まれそうになってしまう。そこを、見知らぬ男性が間一髪で救ってくれる。彼は花音の話を聞いて名刺を一枚手渡す。 『月乃庭 管理人 竜崎奏多』      不思議なルームシェアが、始まる。

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

輿乗(よじょう)の敵 ~ 新史 桶狭間 ~

四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】 美濃の戦国大名、斎藤道三の娘・帰蝶(きちょう)は、隣国尾張の織田信長に嫁ぐことになった。信長の父・信秀、信長の傅役(もりやく)・平手政秀など、さまざまな人々と出会い、別れ……やがて信長と帰蝶は尾張の国盗りに成功する。しかし、道三は嫡男の義龍に殺され、義龍は「一色」と称して、織田の敵に回る。一方、三河の方からは、駿河の国主・今川義元が、大軍を率いて尾張へと向かって来ていた……。 【登場人物】 帰蝶(きちょう):美濃の戦国大名、斎藤道三の娘。通称、濃姫(のうひめ)。 織田信長:尾張の戦国大名。父・信秀の跡を継いで、尾張を制した。通称、三郎(さぶろう)。 斎藤道三:下剋上(げこくじょう)により美濃の国主にのし上がった男。俗名、利政。 一色義龍:道三の息子。帰蝶の兄。道三を倒して、美濃の国主になる。幕府から、名門「一色家」を名乗る許しを得る。 今川義元:駿河の戦国大名。名門「今川家」の当主であるが、国盗りによって駿河の国主となり、「海道一の弓取り」の異名を持つ。 斯波義銀(しばよしかね):尾張の国主の家系、名門「斯波家」の当主。ただし、実力はなく、形だけの国主として、信長が「臣従」している。 【参考資料】 「国盗り物語」 司馬遼太郎 新潮社 「地図と読む 現代語訳 信長公記」 太田 牛一 (著) 中川太古 (翻訳)  KADOKAWA 東浦町観光協会ホームページ Wikipedia 【表紙画像】 歌川豊宣, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

ヴァルプルギスの夜~ライター月島楓の事件簿

加来 史吾兎
ホラー
 K県華月町(かげつちょう)の外れで、白装束を着させられた女子高生の首吊り死体が発見された。  フリーライターの月島楓(つきしまかえで)は、ひょんなことからこの事件の取材を任され、華月町出身で大手出版社の編集者である小野瀬崇彦(おのせたかひこ)と共に、山奥にある華月町へ向かう。  華月町には魔女を信仰するという宗教団体《サバト》の本拠地があり、事件への関与が噂されていたが警察の捜査は難航していた。  そんな矢先、華月町にまつわる伝承を調べていた女子大生が行方不明になってしまう。  そして魔の手は楓の身にも迫っていた──。  果たして楓と小野瀬は小さな町で巻き起こる事件の真相に辿り着くことができるのだろうか。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

放課後に消えた少女たち~意味が分かると怖い、学校の怪談〜

荒井竜馬@書籍発売中
ホラー
意味が分かると怖い、学校の怪談。 あなたはこの話の意味に気づけるか? 学校の怪談に関するホラー話の短編集。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

処理中です...