猫を探しています!~その町の怪異がある所にその黒猫がいる!私はその黒猫を……~

坂道冬秋

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第三十五話〜見つけた!~

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私は黒猫である。名前はまだない。



私は、公園の木の枝の上で昼寝をしている。



人間の背よりやや高い位置にあり、私の身体がゆうに横たわれるこの枝が、私のお気に入りだ。



「二十年前ぐらいにさ、深夜番組で不気味な映像を見た事があるんだ」



「なんですか?不気味な映像って?」



私が昼寝をする枝の下で、二人の男が話していた。



サラリーマン風の二人は、手に缶コーヒーを持ちながら話している。



「小学生の高学年くらいの話なんだけど」



「先輩が小学生の時の話ですか?」



どうやら、二人は会社の先輩後輩のようだ。



「白黒の映像でさ!マリオネットがカクカク踊っている映像なんだ」



「なんですか?その映像!深夜に不気味じゃないですか?」



後輩の男が答える。



「ああ!不気味な映像だった。その上、時々黒く塗りつぶされたような女の顔が映り込むんだ」



「それ、怖いですよ!」



男は、遠い目をしながら話していた。



「まるでノイズが入るように、黒い女の顔が画面に映り込むんだ」



男の目は虚ろだ。



「そして、少しづつ近づいて来るんだよ」



「それで、どうなるんですか?」



後輩の男は、この話に興味を持ち始めたようだ。



「わからない!」



「え?わからないって、どういう事ですか?」



後輩の男が聞く。



「まだ子供だったからな!怖くなって、テレビを消して両親の部屋に逃げた!」



「なんですか、それ!」



後輩の男は笑いながら答えた。



「ただ、おかしいんだ!」



「何がですか?」



後輩の男が疑問の顔をしていた。



「大人になって、ふと気になって調べたんだけどな」



「見つかったんですか?」



後輩の男の興味が、復活したようだ。



「全然見つからないんだ!映像はおろか、いろんなサイトに書き込んで聞いてみたんだが、知っている人がまるでいない」



「それって、子供の頃の話でしょ?」



後輩の男が聞く。



「オレの勘違いとか、夢とか言いたいんだろ?」



「もしかしたら…」



後輩は、少しためらい気味に言った。



「オレも夢だったのかもしれないと思ってたんだ」



「何か、手がかりがあったんですか?」



後輩の声に力が入っていた。



「昨日の深夜に、その番組を見たんだ!」



「昨日ですか?」



後輩の男は、驚いて聞き返した。



「ああ、気になっていたからな!最後まで見てやろうと思ったんだ」



「最後まで見たんですか?」



後輩の男は興奮気味に聞いていた。



「ああ、最後まで見た!」



「どんな内容だったんですか?」



後輩の男の興奮は最高潮になっていた。



「マリオネットが踊る白黒の映像で、黒い女がノイズのように時々現れる」



「子供の頃の記憶通りだったんですね!」



後輩の男が続きを促す。



「黒い女は、少しずつ近づいて来て、大きな口を開け閉めしてるんだ」



「それで、最後はどうなるんですか?」



後輩の男が身を乗り出すように聞いた。



「画面いっぱいに黒い女の顔が映って、最後にこう言ったんだ!やっと見つけた!って」



「それ、すっげー怖いですね!深夜でしょ?」



後輩は、面白そうにそう言った。だが、映像を見た男は、呆然としているようだった。そして…



「見つかってしまったんだ…」



そう独り言のように呟いた。



後日、偶然聞いた話だが、映像を見た男は、あの日以降すぐに行方不明になったらしい。



見つかってしまったからだろうか。





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