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第四十七話〜終~
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「そんな……、黒猫が二匹いるなんて……」
私は呆然としながら呟いた。
「それしか考えられません」
そう言って遥香は、私の顔をじっとみつめた。
「それに、西側の黒猫は凶暴です」
遥香が、少し怯えながら言った。
「東側の猫は、巫女の呪いで怪異を引き寄せているかもしれませんが、どちらかと言うと傍観者です」
私は、遥香の目を見て頷いた。
「でも、西側の猫は直接怪異や事件を引き起こしています」
私は、遥香の言葉に震えた。そして、私達二人の間に沈黙が流れる。それを打ち破ったのは遥香だった。
「私、黒猫の件からは手を引こうと思います」
私は、遥香の言葉に驚いてしまった。
「なっ、どうして」
「危険だからですよ。私が巻き込んだのに、本当に申し訳ありませんが、美里さんも手を引いて下さい」
遥香が真剣な目でそう言った。
「そうじゃないと、美里さんまで危ないめに会うかもしれません」
遥香は、私の事を心配しているのだろう。また、自分がこの件に巻き込んだ事を後悔しているのかもしれない。
「解ったわ。でも少し時間をちょうだい」
私は、遥香にそう答えた。
「実際、どちらの黒猫に対しても、私達では何もできないし……」
私はそう言った。これは本音だ。本当に私達では、この二匹の黒猫がおこす事件に対処できない。
呪いを解く事もできなければ、事件を止める事もできない。
「それに、今までの内容を記事にできるかも微妙だし……」
実際、私の知っているオカルト雑誌でも、取り扱ってくれる可能性は低いように思う。
「だから、手を引く事になると思う」
遥香が真剣な目で私を見ていた。
「ただ、ライターとして、キリが良いところまでは調べたいの」
「わかりました。でも、深入りは絶対しないで下さい」
私の言葉に、遥香は何度もそう言っていた。私達は、この後少しの時間、情報交換をして別れた。
別れ際に、私は聞き忘れていた質問をした。
「そう言えば、初めて黒猫の話をした時、そういう都市伝説があるって言ってたわよね」
「ええ、あの街では有名な都市伝説ですよ」
そう答えた遥香に、私は少し違和感を感じていた。
「調べてみたんだけど、そんな都市伝説見つからなかったのよ」
「えっ!」
遥香が驚いた声を出す。
「そんなはずありません」
遥香が真剣な顔で言った。
「その、黒猫の都市伝説って誰から聞いたの」
私は、遥香に優しい口調で聞いた。何か、おかしな雰囲気を感じたからだ。
「そう言えば、私、誰から聞いたんでしたっけ」
遥香がぼんやりとした表情で言っていた。
「いえ、絶対誰かから聞いたんです」
遥香が、私に信じてくれと言わんばかりの勢いで言った。
その表情は、真剣そのものだった。
「解ったわ。ただ、ネット上では黒猫の都市伝説は見つけられなかった。他も調べてみたけど、同じように見つからなかったの」
「そんな……」
遥香は、呆然としているようであった。
そのような会話の後、私達は別れた。
遥香は、黒猫の都市伝説を、誰から聞いたのかを、本当に覚えていないようだった。
「なんか、不可解な事がおきているような気がする……」
私は、街中を歩きながら、独り言のように呟いた。
遥香と別れた私は、あの街に来ていた。
日は暮れ初め、周りは薄暗くなっていた。
雨が降りそうな雲行きが、より一層街全体を暗くしているように感じられた。
「確か、もう少し先の方よね」
私は、黒猫が関わっている事件の現場を、もう一度、確認してみたくなったのだ。
「ニャー」
その時、私は猫の鳴き声を聞いたような気がした。
「こっちから鳴き声が聞こえたような……」
私は、そう呟きながらビルの間の路地に入って行った。
ガラン、ドン
ガシャン
そんな凄い音がした。気が付くと、私は水溜りの上でうつ伏せで寝ていた。
体が全く動かない。いや、体の感覚が全く感じられなかった。
かろうじて、私の体の上に何かが乗っている事が解った。
周りに同じ物が散らばっている。たぶん鉄骨だ。
工事現場やビル工事で使われるものだ。私は、その時気付いた。
私は水溜りの上で寝ているわけではなかった。その液体は、私の血だ。
「寒い……」
私は、声にならない声で呟いた。
どんどん、体温が落ちていっているのが、自分でも解った。
周りには人集りができ、ザワザワと人の声が聞こえる。
その中に、怒号と叫びが混ざっていた。
「ニャー」
そんな時、猫の鳴き声がした。
その方向に視線を移すと、黒猫が座ってこっちを見ていた。
「あなたは、どっちの黒猫……」
私の質問は、最後まで続かなかった。
私は呆然としながら呟いた。
「それしか考えられません」
そう言って遥香は、私の顔をじっとみつめた。
「それに、西側の黒猫は凶暴です」
遥香が、少し怯えながら言った。
「東側の猫は、巫女の呪いで怪異を引き寄せているかもしれませんが、どちらかと言うと傍観者です」
私は、遥香の目を見て頷いた。
「でも、西側の猫は直接怪異や事件を引き起こしています」
私は、遥香の言葉に震えた。そして、私達二人の間に沈黙が流れる。それを打ち破ったのは遥香だった。
「私、黒猫の件からは手を引こうと思います」
私は、遥香の言葉に驚いてしまった。
「なっ、どうして」
「危険だからですよ。私が巻き込んだのに、本当に申し訳ありませんが、美里さんも手を引いて下さい」
遥香が真剣な目でそう言った。
「そうじゃないと、美里さんまで危ないめに会うかもしれません」
遥香は、私の事を心配しているのだろう。また、自分がこの件に巻き込んだ事を後悔しているのかもしれない。
「解ったわ。でも少し時間をちょうだい」
私は、遥香にそう答えた。
「実際、どちらの黒猫に対しても、私達では何もできないし……」
私はそう言った。これは本音だ。本当に私達では、この二匹の黒猫がおこす事件に対処できない。
呪いを解く事もできなければ、事件を止める事もできない。
「それに、今までの内容を記事にできるかも微妙だし……」
実際、私の知っているオカルト雑誌でも、取り扱ってくれる可能性は低いように思う。
「だから、手を引く事になると思う」
遥香が真剣な目で私を見ていた。
「ただ、ライターとして、キリが良いところまでは調べたいの」
「わかりました。でも、深入りは絶対しないで下さい」
私の言葉に、遥香は何度もそう言っていた。私達は、この後少しの時間、情報交換をして別れた。
別れ際に、私は聞き忘れていた質問をした。
「そう言えば、初めて黒猫の話をした時、そういう都市伝説があるって言ってたわよね」
「ええ、あの街では有名な都市伝説ですよ」
そう答えた遥香に、私は少し違和感を感じていた。
「調べてみたんだけど、そんな都市伝説見つからなかったのよ」
「えっ!」
遥香が驚いた声を出す。
「そんなはずありません」
遥香が真剣な顔で言った。
「その、黒猫の都市伝説って誰から聞いたの」
私は、遥香に優しい口調で聞いた。何か、おかしな雰囲気を感じたからだ。
「そう言えば、私、誰から聞いたんでしたっけ」
遥香がぼんやりとした表情で言っていた。
「いえ、絶対誰かから聞いたんです」
遥香が、私に信じてくれと言わんばかりの勢いで言った。
その表情は、真剣そのものだった。
「解ったわ。ただ、ネット上では黒猫の都市伝説は見つけられなかった。他も調べてみたけど、同じように見つからなかったの」
「そんな……」
遥香は、呆然としているようであった。
そのような会話の後、私達は別れた。
遥香は、黒猫の都市伝説を、誰から聞いたのかを、本当に覚えていないようだった。
「なんか、不可解な事がおきているような気がする……」
私は、街中を歩きながら、独り言のように呟いた。
遥香と別れた私は、あの街に来ていた。
日は暮れ初め、周りは薄暗くなっていた。
雨が降りそうな雲行きが、より一層街全体を暗くしているように感じられた。
「確か、もう少し先の方よね」
私は、黒猫が関わっている事件の現場を、もう一度、確認してみたくなったのだ。
「ニャー」
その時、私は猫の鳴き声を聞いたような気がした。
「こっちから鳴き声が聞こえたような……」
私は、そう呟きながらビルの間の路地に入って行った。
ガラン、ドン
ガシャン
そんな凄い音がした。気が付くと、私は水溜りの上でうつ伏せで寝ていた。
体が全く動かない。いや、体の感覚が全く感じられなかった。
かろうじて、私の体の上に何かが乗っている事が解った。
周りに同じ物が散らばっている。たぶん鉄骨だ。
工事現場やビル工事で使われるものだ。私は、その時気付いた。
私は水溜りの上で寝ているわけではなかった。その液体は、私の血だ。
「寒い……」
私は、声にならない声で呟いた。
どんどん、体温が落ちていっているのが、自分でも解った。
周りには人集りができ、ザワザワと人の声が聞こえる。
その中に、怒号と叫びが混ざっていた。
「ニャー」
そんな時、猫の鳴き声がした。
その方向に視線を移すと、黒猫が座ってこっちを見ていた。
「あなたは、どっちの黒猫……」
私の質問は、最後まで続かなかった。
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