勇者パーティを追放された万能勇者、魔王のもとで働く事を決意する~おかしな魔王とおかしな部下と管理職~

龍央

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第79話 勇者、ルインと再会する

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「気配……勇者の気配ってやつか……でもな……」

 ドラゴンが感じた勇者の気配とやらは、王城を目指して移動していると言ってたな。
 だが、一世代に一人しかいないはずの勇者は、俺なんだよなぁ。
 なのに何で、勇者の気配を別に感じるのか……?
 このドラゴンの感覚が狂ってる……とは、この城内の様子を見る限り思えない。
 それにしても、これだけ傷付けられてるのに、城の兵士はどうしてるんだ?

「お」
「カーライル様、お戻りですか!」

 兵士の事を考えていると、タイミング良く通路の奥から兵士の一人が出て声を掛けて来た。
 その兵士は、来ている鎧のあちこちが切り裂かれたようになってる……が、怪我をしている様子はない。

「何かあったのか?」
「賊が侵入しました。剣を持った人間です。その人間、剣を振るだけで、遠くにいる我々をも切り刻むことができるのです」
「遠くにいても……?」
「なんだか、カーライルさんがやってるみたいですね?」

 剣を振って剣気を飛ばし、それで離れた相手を斬る……これは勇者にだけできるはずの所業だ。
 勇者だけが使える、魔力にも似た力を剣に乗せて飛ばす事で、それが可能なんだが……いよいよドラゴンの言っていた事が正しいように思えて来た。
 俺とは別の勇者……いったい何者なんだ?

「そいつはどこへ行った?」
「アルベーリ様の執務室へ向かいました。なんでも、魔王を倒すのは使命だとか……我々も駆け付けようとしたのですが、いかんせん怪我人の治療に手いっぱいで……」
「わかった。後は任せてくれ、俺が行く!」

 鎧があちこち裂けているのに、怪我をした様子が見えないのは、魔法で治療をしていたからか。
 城内の壁や柱を見る限り、相当派手にやったようだ。
 かなりの数の兵士に怪我人が出ているのだろう。
 兵士に治療を任せ、俺とフランとドラゴンは、真っ直ぐアルベーリの執務室へ急いだ。


 ズガァンッ!

「何だ!?」
「何事ですか!?」
「何なのじゃ!?」

 アルベーリの執務室までもう少しという所で、城内にまた大きな音が響き渡った。
 少し建物自体も揺れた気がするな……驚き立ち止まったフランと顔を見合わせ、執務室まで走る。

「何が起こってるんだ!?」
「……遅かったなぁ、カーライル?」

 執務室へたどり着いた俺達が見たのは、入り口が完全に破壊され、その中で砂塵が舞い散る様子だった。
 叫んだ俺に、聞いた事のある声が答える。

「この声は……?」
「俺だ、カーライル。久しぶりだなぁ、偽勇者ぁ」

 砂塵で塞がれていた視界が少しづつ晴れ、中にいる人物が見えて来た。

「ルイン!? どうしてお前がここに!?」

 そこにいたのは、俺を追放した張本人、ルインだった。
 俺を偽勇者呼ばわりした事と言い、こいつが勇者だってのか?

「どうしても何も、お前が不甲斐ないから、こうして勇者としての使命を果たしに来たんだがな?」
「勇者としての使命だと?」
「あぁ。勇者とは魔王を打ち倒す存在。偽勇者であるお前とは違って、本物の勇者である俺が代わりに役目を果たしに来たってわけさ」
「なにを馬鹿な事を……はっ、リィム、マイア!」

 勇者としての使命ってのは、ドラゴンが言っていた魔王が世界に混乱を……とかなんとかだったか。
 しかし、アルベーリは世界を相手に、何か大それた事をしでかそうとはしていないはずだ。
 単なる筋肉バカだしな。
 砂塵が収まり、執務室の中がはっきり見えるようになった時、リィムとマイアが床に倒れているのを見つけた。
 リィムに至っては、血を流している様子だ。

「あぁ、そいつらか。よりにもよって。魔王の味方をするようだったからな……」
「お前……!」

 リィム達は、ルインにやられたようだ。
 しかし、アルベーリはどうしたんだ……? これくらいでやられるような奴じゃないと思うんだが……?

「アルベーリ!」
「我はここだ……」
「無事か……」

 マイア達よりもさらに後ろ、壁際でうずくまるようにしていたアルベーリを見つけて、俺は胸を撫でおろした。


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