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第80話 勇者、敵を圧倒する
しおりを挟む「ちっ、仕留め損ねたか」
「さすがに先程のは危なかったぞ? 全力で防御していなければ、我だけではなく他の者達もやられていたであろう」
「フラン、リィムとマイア……ついでにアルベーリも頼む!」
「わかりました!」
「……我はついでか」
どうやら、先程鳴り響いた音は全力でルインが攻撃したかららしい。
アルベーリを追い詰めるとは……そこまでの力は、以前のルインには無かったはずだが……。
ともあれ、フランに頼んで動けない者達への対処を頼む。
何やらぼやいている魔王様がいた気がするが、筋肉があるから大丈夫だろう。
「させるか! ……何!?」
「……お前の相手は、俺だ」
フランが走ってリィム達の元へ行こうとするのを、剣を振りかざして阻止しようとするルイン。
その剣を、俺の剣が受け止め、フランがリィム達の所へとたどり着いたのを確認する。
「ちぃ……。ふ……はは……はははははは、ひゃーはっはっはっは!」
「……何を笑ってる?」
「これが笑わずにいられるか! お前は俺に剣を向けた。そして俺は勇者だ! ここでお前を倒せば、お前が偽物であり、俺が本物の勇者である事が証明される!」
狂ったように笑い始めたルイン。
こいつは……こんなに勇者である事にこだわっているのか……。
……微妙に言ってる事がちぐはぐな気もするが。
「だったら、やってみろよ?」
「……ふん、強がりもそこまでだ! 今までの俺と同じだと思うなよ!」
ルインは完全に他の事を意識から外し、俺だけを睨んでいる。
これで、動けないリィム達へ攻撃が向く事も無さそうだ。
「くらえっ!」
「おっと、危ないな。……その程度か?」
「くそっ! これで、どうだっ!」
剣を振って飛ばして来た剣気を、俺も同じように剣を振り、剣気を飛ばして相殺する。
挑発するように言ってやると、今度は両手で剣を持ち、力を込めて振り下ろす。
目に見えない剣気が、さっきまでと違い大きくなって俺に襲い掛かって来るのがわかる。
……これがアルベーリを倒した力……か……確かに勇者の力に見えるが……。
「その程度、か」
「何だと!?」
驚き、動きが止まるルイン。
ルインが全力で放った剣気は、同じ強さで放たれた俺の剣気に相殺される。
「今度は俺の番だな。ふんっ! ついでにこいつもだ、ファイアランス!」
右手で剣を振り、剣気を放つと同時、魔法を左手で発動。
「ぐあぁぁぁぁ!」
剣気を何とか自分の剣で防御していたルインだが、同時に襲って来る魔法には対処ができない。
まともに腕を撃ち抜かれ、魔法により焼かれて叫びと共に剣を落とした。
「どうしてだ……俺は勇者のはずなのに……何故お前は魔法が使える……?」
「万能勇者って知ってるか? ……一応、説明したと思ったんだがな……本来の勇者の力だけでなく、人間がなれる職全ての力を使えるんだよ」
「どうしてだ……俺は勇者……偽勇者なんかに……どうしてだ……どうしてだ……どうしてだ……どうしてどうしてどうしてどうしてぇぇぇぇ! ぐぅぅぅぅ!」
俺の話には聞く耳を持たず、両手が使い物にならなくなったルインは、狂ったように叫び始める。
……かと思えば、急に苦しみ始めたルイン。
一体何が起こってるんだ?
「ふむ……やはりでき損ないでは、役不足だったか……」
「……何だ……? ルイン……じゃないな」
突然動きを止めたルイン。
その口からは、ルインではない……それどころか、人間とすら思えない低くおぞましい声が聞こえて来た。
「イレギュラーか……厄介だな。今ここで滅するが良かろう」
「イレギュラー? 何を言ってるんだ? お前は何だ?」
「私は、儀式を受けた人間の嫉妬の具現者。望む職に就けなかった者、他人をうらやむ者達の感情が積もり重り集合した意識、その意識を持って、世界に反旗を翻す者だ!」
俺をイレギュラーと言った、ルインの形をした何者かがそう叫んだ瞬間、周囲に衝撃波を発生させる。
幸い、それは俺や、動けないリィム達を押す以外の事は何も無かったが。
おそらく、ルインの中にいた何者かの意識が表に出た余波だっただけで、攻撃の意思は無かったのだろう。
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