81 / 84
第81話 勇者、嫉妬の悪徳と邂逅する
しおりを挟む「嫉妬の具現者だと……? 七つの悪徳……か」
「何だそれは、初めて聞いたぞ?」
何か思い当たる事があるのか、未だに動けないアルベーリが呟いたのに気づき、そちらへ近付く。
「全ての感情ある生き物により生まれる、罪へと導く欲望や感情の事だ。それらが一つの場所に集まる事で、おぞましい怪物が生まれる……と聞いた事がある。実際に見たのは初めてだがな」
アルベーリの説明を聞く間、ルインの形をした者はこちらを睥睨するように見ている。
「高慢、物欲、嫉妬、怒り、色欲、貪食、怠惰……これら七つの悪徳は、人の強い感情を集めて具現化するらしいのだ。……こいつは嫉妬と言ったな……嫉妬……インヴィディアか」
「そう、私は勇者への羨望、切望、そして嫉妬を具現化した者、インヴィディアだ。人間の儀式宝具を媒介に、この世界に具現化したのだ」
「儀式宝具……あれか」
ロラント王国にある、儀式に使う宝具。
あれによって、王国の人間は職を授かる。
俺も万能勇者という職は、その宝具からもらったものだ。
「悪徳……か。人を罪へと導く者という事なら、放っておいちゃいけないよな?」
「それは……そうだが……」
「たかがイレギュラー如きが、何ができるというのだ?」
「さぁな。けど、お前をこのままにしてはいけないという事はわかる」
ルインの体を使っているインヴィディアは、先程から背筋に嫌な汗が流れるくらいの気配を周囲にまき散らしている。
アルベーリの説明にあった通りなら、あまり良い者じゃ無い事は確かだ。
……このままにしてはおけないだろう。
「ふん、すこし分をわきまえぬ力を授かったとて、私に敵うとでも思ったのか? 痴れ者が!」
「くっ!」
「ほう、今のを消すか……」
ルインの体で、ルインの使っていた剣を振り、ルインよりも強力な剣気を放つインヴィディア。
さすがにこちらも手加減している余裕は無く、全力で剣気を放って相殺する。
「ならば……もっと私を楽しませてみろ!」
「……それはごめん被る。ボディストレンクサン」
ルインの体で、狂気に取り付かれた表情をしながら叫ぶインヴィディア。
それに対し軽く呟き、俺は今まで、どんな戦いでも使って来なかった魔法を発動させる。
「身体強化魔法だと!?」
「これを使った後は、疲れるから使いたくは無かったんだが……仕方ないな」
身体強化魔法……魔法で無理矢理体を強化し、通常ではあり得ない力を発揮する魔法。
確か……現在この魔法を使える人間はいなかったんだったっけか? まぁ、使った後、体が軋んで痛みが残る後遺症があるから 使えない方が良いのかもな……俺も使いたくは無かったんだが……。
「こざかしい……その程度の魔法で……はぁっ!」
「ふっ!」
「くそ……はっ! ふっ! ……これでどうだ!」
「は、ふ、とや」
忌々しそうに呟いたインヴィディアが、再び剣気を放つ。
それを、事も無げに振った剣でかき消した俺。
その様子に業を煮やしたインヴィディアは、さらに力を込めて剣気を連続で放って来た。
……身体強化を使った以上、この程度は剣気で対応するまでも無い。
片手で持った剣を事も無げに振るうだけで、襲い掛かる剣気は全てかき消されて行く……。
「ぬぅ……ならば魔法はどうだ! 魔法が使えるのは貴様だけでは無いのだぞ! ブリザードランス!」
「……さすがに魔法は厄介だなぁ……と言ってもこれがあるか」
「何だと!? ぐおぁぁぁ!」
ルインは魔法が使えなかったはずだが、今は嫉妬の悪徳とかいう、インヴィディアが支配しているからだろう。
無数の氷の槍を作りだし、それらを全て俺に向かって放った。
剣気と違って、これをかき消したりするのは無理だ。
とは言え、俺には以前、偶然だが作ってしまった盾がある。
左手に持っていたバックミラーの残骸で作った盾……それを迫りくる氷の槍に向かって突き出すだけで、全てインヴィディアに向かって跳ね返って行った。
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる