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宿屋で魔物討伐の打ち合わせ

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「リザードマンはともかく……グリーントータルとビッグフロッグか……厄介だな」
「ええ。何故一緒にいるかはわからないけど……」
「グリーンタートルですか……生半可な剣で斬ったら、剣の方が折れそうですね」

 皆で男性部屋に集まり、イオニスさんと話した事も含めて、魔物に対する対策会議だ。

「えぇと……俺はグリーンタートルとか、ビッグフロッグはよく知らないんだけど……面倒なの?」
「そうだな、まずはリクに説明しよう。説明する中で、対処も思いつくかもしれないしな」
「そうね」

 マックスさんから聞いた魔物の話では、リザードマンくらいしかわからない。
 さすがに、色んな種類がいる魔物を、短期間の詰め込みで全部覚えられないからね。
 教えてもらったのは、冒険者がよく会う可能性が高い魔物と、要注意が必要な特殊で危険な魔物の事ばかりだ。

「ビッグフロッグは……そうね、見た目そのまま蛙ね」
「そうだな、蛙だ」
「それはわかるけど……他の特徴は?」

 モニカさんとソフィーが説明してくれるようだけど、名前からわかる、蛙である事しか言わず、それを聞いたマルクスさんも頷いてる。
 いや、蛙って事はわかってるんだけど……。

「そうね……大きい?」
「大きいな」
「そりゃ、ビッグって名前だからね。どのくらい大きいの?」
「そうだな……リクがパレードの時、乗っていた馬がいるだろう?」
「うん」
「ビッグフロッグは、あの馬よりも大きいわ」

 それは……確かにビッグだね。
 あの馬は、大体3メートルくらいで、馬にしては大きい方らしいけど……それよりも大きいのか……。
 巨大な蛙……気持ち悪そうだ。

「ビッグフロッグは大きい事以外、特に特徴はないわ。長い舌を出して相手を捕まえ、口に入れて食べる」
「あとは、巨体を使って相手を押しつぶす……だな」
「成る程。じゃあ、その舌と大きさに注意してれば良いだけなんだね?」
「そうね。冒険者としては、DランクかCランクで対処できると考えられてるわ」
「気を付けないといけないのは、相手を捕まえる舌だが……食べられても、すぐに倒して腹を裂けば死ぬことはほとんどない……代わりに、色々な物で汚れるがな……」
「うわぁ……」

 想像しただけで、ちょっと気持ち悪い。
 リザードマンも、そうやって食べられるんだろう。
 食べられた時に、唾液とか消化液とか……色々な物で汚れてしまうんだろうなぁ……すぐに助け出せば死ぬ事はほとんどないそうだけど、食べられないように気を付けよう。

「問題はグリーンタートルだな」
「えぇ、あの甲羅はちょっとね……」
「そんなに硬いの?」

 ビッグフロッグの説明が終わり、グリーンタートルの説明になって、モニカさんとソフィーが難しい顔をしながら顔を見合わせる。
 亀だし、甲羅が硬いのはわかるけど……そんなに硬いのかな?
 甲羅を無視して、顔とかを狙えば倒せそうだけど……。

「グリーンタートルは、甲羅を割らないと倒せないのよ」
「甲羅が本体だからな」
「甲羅が本体?」
「ええ。甲羅がグリーンタートルの体……というより、グリーンタートルそのものなの。甲羅の間から出て来る顔や手足をいくら傷つけても、倒せないわ」
「痛がりはするみたいだけどな。でも甲羅を無視して倒したという事は聞かないな」
「そうなんだ……」

 顔や手足をいくら潰しても死なないのが、どういう仕組みなのかはわからないけど……甲羅を割らない限り倒せないという事か。

「それに、グリーンタートルの甲羅は、リザードマンと一緒でツルツルなのよ……変な粘液が覆ってるしね」
「生半可な攻撃だと、剣の刃が滑るっていう?」
「そうだ。そのうえ、そこらの金属よりも硬い。下手に攻撃すると剣が滑るし、その硬さで剣が折れる事もある」
「滑るし折れる……」
「つまり、剣で斬ろうとすると粘液で滑って威力が半減……さらに金属よりも硬い……余程の達人か、折れない物を力任せに叩き付けるしかないんだ」
「ランクで言うと、Dランクなんだけどねぇ……」
「そんなに面倒そうな相手なのに、Dランクなの?」

 攻撃がほとんど通用しない……という事を考えると、Cランク以上はありそうだ。
 二人の口ぶりだと、Dランクの冒険者が剣を使っても勝てそうに思えない。

「グリーンタートルは、ほとんど危険はないのよ」
「危険がない? 魔物なのに?」
「甲羅に閉じこもるだけだからな。魔法を使ってくるわけでもないし……人が死ぬような攻撃はしてこない。だから、ゆっくり近づいてハンマーなんかの鈍器で甲羅を割るのが普通だ」
「あー……そうなんだ」

 攻撃はしてこないのか……だったら確かに危険は少ないだろうね。
 甲羅の硬さが異常なだけで、冷静に対処すれば良いのなら、確かにランクは低くくなるだろうし。

「ただ、グリーンタートルは土を食べるからなぁ……」
「土を食べるの?」
「ええ。だから、農家にとっては天敵なの」
「作物を育てるような、農地の土が大好物らしい。そして、土を食べたあとは代わりに粘液を出して、作物の育たない場所にするんだ」
「……それは……この村にとって致命的だね……」
「あぁ。農業で生計を立てる村だからな。だから、見つけたらすぐに討伐する事が推奨される」

 成る程ね……そう考えると、他の魔物よりグリーンタートルがいる方が、村にとっては被害が大きくなるのかもしれない。
 とは言え、危険が少ないとはいえ魔物は魔物。
 村の人で討伐は難しいのかもしれないし、今回は他にもリザードマンやビッグフロッグがいるから、イオニスさん達は手の出しようがなかったんだろう。

「そのグリーンタートルを倒すのって、簡単なんだよね?」
「そうねぇ……甲羅を割る方法さえ確立したら、倒すのは簡単ね」
「だが、周囲にビッグフロッグやリザードマンがいるからな……甲羅を割る事に集中はできないだろう」
「だったら、先にビッグフロッグやリザードマンを倒してから、落ち着いてグリーンタートルを倒すのでいいんじゃない?」
「それがな……グリーンタートル自体はあまり危険がないのだが……」
「甲羅を使って、他の魔物が盾にする事があるのよ。知能が低くても、戦闘に使える物を使うくらいの知恵はあるようね」
「そうかぁ……」

 グリーンタートルの数が多い場合、先に他の魔物を倒せば……と考えたけど、それも難しいようだ。
 硬い甲羅を盾に使うのなら、倒せなくなるわけじゃないけど、1体相手に苦労する事になる。
 だから、同時もしくは先にグリーンタートルを倒した方がいいのだろうね。

「んー……なら、モニカさんやソフィーでビッグフロッグとリザードマンを相手にして、俺がグリーンタートルを倒す……というのはどう?」

 俺はいつも力任せに剣を振ってるから、他の皆より力があると思う。
 ヴェンツェルさんやマックスさんみたいに、大柄じゃないから力自慢……というわけではないけど、甲羅を割ったり斬ったりくらいはできるかもしれない。
 それに、ヘルサルで買った剣も頑丈だしね。

「悪くはないわね……でも、私達だけでグリーンタートル以外を相手にできるかしら?」
「リザードマンの攻撃を避けながら、離れた場所からビッグフロッグの舌が伸びて来るか……数が多ければ、難しいかもしれないな……」
「私もグリーンタートルとリザードマンを倒すの!」
「ユノちゃんが?」

 難しい顔をして考えるモニカさんとソフィーに、ユノが手を上げながら主張する。
 ユノかぁ……ユノなら達人のように剣を使うから、グリーンタートルの甲羅を斬る事ができるかもしれない。
 それに盾も持ってるから、リザードマンの攻撃を防ぐのもできるだろうしなぁ。
 

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