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ヘルサルの農地
しおりを挟む「モニカ、そのリクの魔法と農地っていうのは?」
「ヘルサルにゴブリンが押し寄せた時、リクさんが魔法を使って殲滅しました」
「それは聞いているわ。王都で使った魔法よりも、凄まじかったとも」
「はい。その魔法を使った場所は、元々林になっていたのですが……リクさんが魔法を使った後は、見渡す限り何もなく……」
「……あー……そうなの?」
「えーと、うん……」
モニカさんに質問した姉さんは、説明を聞いて微妙な表情で俺に視線を向ける。
説明は正しいので、俺も正直に頷くしかなかった。
国内の土地を、林ごと消滅させたなんて……怒られるかなぁ?
ヘルサルに、何度か来た事のあるハーロルトさんは、その場所を見た事があるんだろう。
特に表情を変えてなかったけど、ヒルダさんやエフライムは驚愕の顔で俺を見ている。
ヒルダさんはまだしも、エフライムには説明してたと思うんだけどなぁ……。
あ、いや……ゴブリンを全て倒したくらいしか説明してなかったっけ。
「その土地を、ヘルサルの街は農地として利用すると考えているようでした。あれから数カ月経っていますから……」
「リクの偉業は置いておいて……もしかしたら、既に準備が整っているかもしれないのね」
「はい。進捗はわかりませんが、これから農地を用意するよりかは、時間がかからないかも……と」
「ふむ……そうね。農地化を進めていれば、人員の確保にも動いているだろうし、時間は大分短縮されるわ。ただ、既に作物が植えられている可能性もあるわね」
「はい、そうなると、今からキューに植え替えるのは難しいかもしれません……」
「なんにせよ、まずは確認が必要ね。ハーロルト」
「はっ、至急ヘルサルへ使いの者を出し、確認を急ぎます」
「頼んだわよ」
モニカさんの提案で、ヘルサルの農地計画がどうなっているのかの確認をする事が決まった。
それを利用するかどうかはともかく、先に確認して使えるかどうかを知るのは必要な事だと思う。
向こうが別の作物を作るつもりだったら、話し合って調整しないといけないしね。
姉さんの言うように、既にキュー以外の物を植えてたら難しいし……今から植え替えさせるのもね……。
ともあれ、ヘルサルの農地確認、子爵領での増産要請をする事を決め、本決定は城内での文官達を交えた会議で、となった。
子爵領に関する事なため、その会議にはエフライムも参加。
ヘルサルの確認はハーロルトさんが使者を出して、確認と確保に動くとなった。
執務室からは、ハーロルトさんが退室し、ヒルダさんも夕食の準備のために退出。
俺と姉さん、モニカさんとエフライムが残っている。
「はぁ……なんとかなるかはまだわからないけど、少しは状況を改善できる見込みができたわね」
「ヘルサルの農地が大きいですね。確保している大きさにもよるとは思いますが……」
「それは大丈夫ですよ。リクさんが使った魔法のおかげで、かなりの広範囲が農地に使えるようになっています。元々、木々の隙間を縫って、ゴブリン十万以上がひしめき合っていた場所ですからね。……もしかしたら、ヘルサルの街より大きいんじゃないですか?」
「ヘルサルの街……アテトリア王国内で、王都を除いたら一番の大きさと言われている街をもか……。それだけの広さを農地にするのであれば、かなりの量を見込めるな」
「いや、さすがにヘルサル程の広さはないんじゃあ……?」
提案会のような場もお開きとなり、さらにリラックスした様子で息を吐く姉さん。
エフライムが、ヘルサルの農地の広さを心配している様子だったのに対し、モニカさんが広さの説明をする。
とはいえ、モニカさんの言うようにヘルサルの街程の広さはないと思う。
正確な距離を測ったわけではないけど……ヘルサルの街中は建物があって、遠くを見渡す事ができないのに対し、魔法を使った場所は遠くまで見渡せるから、そう感じるのかもしれないね。
「人員にもよるけど、ヘルサルは隣に農業の街であるセンテがある。そちらの確保も難しくはないでしょうね。まぁ、ヘルサルが全てを農地にするかどうかは、まだわからないけど……あの街の代官は確か……?」
「えっと、クラウスさんだね」
「そうそう、そんな名前だったわね。クラウスにがどう考えているかによるわね」
「あぁ、あのリクさんのファンを公言している人ですね」
「リクのファン?」
「あははは……」
かなり広い範囲だから、全てをいきなり農地にするとは限らないのか。
まぁ、段階的に耕して、徐々に農地を広げる……というのも考えられそうだね。
姉さんが、ヘルサルの代官の名前を思い出せないようだったので、俺が教えておく。
以前にも言った気がするけど、色々な事を考えないといけないから、街の代官の名前を全て覚えるのは難しいか……。
必要なら、資料とかで名前を見て思い出すだろうしね。
そこに、モニカさんがクラウスさんの個人的な情報を付け加えて、姉さんとエフライムが首を傾げて俺を見る。
結構な年齢の男性に、ファンですと言われてたのを思い出したけど……俺には苦笑で返すしかできない。
とりあえず、モニカさんが防衛戦後の状況から、クラウスさんと獅子亭で話した時の事を説明してくれた。
「まぁ、実際にリクがゴブリンを殲滅するところを見たら、そうなるのもおかしくないわね。大体は、憧れるか恐怖するかの二択でしょうし」
「恐怖って……」
憧れられるのは、微妙な気分だけど、嬉しくないわけじゃない。
けど、恐怖って……怖がられるのはさすがに、ちょっと辛いな……。
確かに、目の前であれだけうじゃうじゃいたゴブリンが、一瞬で消滅したりすると、手に負えないと考えて恐怖するのも、わからないでもない……かな?
「そうねぇ……ふむ」
「陛下?」
クラウスさんの事を聞いて、何事かを考える姉さん。
「……リク、貴方……一度ヘルサルに向かいなさい?」
「え、俺がヘルサルに?」
「そうよ。ハーロルトの使いの者がヘルサルに向かうでしょうけど、リクも一緒に行く方がいいわね。そのクラウスが、リクのファンであるなら、話もしやすいと思うわ」
「そうなの?」
「えぇ。国からの使いの者だけだと、上からの命令や押さえつけるように感じる者もいるからね。リクが行ってお願いすれば、喜んで受けてくれそうでしょ?」
「うーん……そうなのかなぁ?」
俺のファンって言って、協力は惜しまないというような事を言っていたクラウスさんだけど、街の事となると話は別だと思う。
まぁ、国の方針とかもあるから、渋ったり嫌がったりは元々しないだろうとは思うけど……俺が行っただけで簡単に話が運ぶのかは、わからないな。
とはいえ、エルサに乗って行けば、王都との往復一日かからないくらいだし、気楽に行くのもいいかもしれない。
久しぶりに、獅子亭の料理も食べたいしね。
……あ、でも……。
「ちょっと難しいかなぁ……? 昨日、ヴェンツェルさんと約束した事があるし……」
「ヴェンツェルと? 何を約束したの?」
「えっと、ヴェンツェルさんの師匠のような人が、一週間後に来るらしいんだ。それで、その人に剣の訓練をしてもらおうという話になってて……ヴェンツェルさんが直々に頼んだようだし、その人を待たせるわけにもいかないかな、と……」
「まだリクは強くなろうとしてるの?」
「今以上にリクが強く、か。とんでもないな……」
ヴェンツェルさんが言うには、その師匠に当たる人が来るのは一週間……。
昨日言われたから、あと六日後か。
ヘルサルに行く事自体は構わないけど、わざわざ呼んで来てもらった人を待たせるわけにはいかない。
姉さんとエフライムは、俺がその人に師事して訓練をすると言う事に、呆れたような顔をしてた。
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