神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
469 / 1,955

皆にもスイカは好評

しおりを挟む



「おう、お疲れさん。今日の戦場は、中々手強かったな!」

 お客さんがほとんど帰った頃、厨房の仕事を終えたマックスさんから声をかけられる。
 あとは、残ってる数人のお客さんが帰った後の食器洗いや、掃除、働いた皆の夕食を用意するくらいしかないから、顔を出したんだろう。
 修羅場とも言える忙しさを、戦場と言うのは以前からあるマックスさんの癖のようなものだけど、確かにさっきまでの忙しさは戦場と言っても過言じゃないと思う。
 お腹が減ってるお客さんは、殺気立ってるからね……特に冒険者さん達とか。

「お疲れ様です」
「稀に見る忙しさだったな。手伝ってもらえて助かった」
「いえ、お世話になっているので、これくらいは」

 部屋を使わせてもらってるんだから、これくらいは手伝わないとね。

「あぁそうだ。昨日言っていたスイカっての、仕入れておいたぞ。夕食後に皆で食べよう」
「わかりました。えっと、食べ方は?」
「昨日、リクからも聞いていたから、ちゃんと切ってみるつもりだ。八百屋のオヤジ、美味い食べ方を教えてもらって、売れそうだって喜んでたぞ?」
「あはは、役に立てたのなら良かったですよ」

 予定通り、八百屋さんからスイカを仕入れる事はできたみたいだ。
 集まっていた他の人達にも、スイカを切って食べてもらったりしてたから、すぐに売り切れたりしないか心配だったけど、まだ残ってたみたいだね。
 八百屋のオジサンが考えてるように、美味しさが伝われば、すぐに売れるだろうから、早めにマックスさんに教えられて良かった。

「予想より大きい物だったな……幾つか仕入れられたんだが、一個でよさそうだな」
「皆で食べると言っても、エルサやユノが食べ過ぎなければ、多く切る必要はないと思いますよ」

 エルサは気に入っているし、当然ユノも気に入ってる。
 あの無尽蔵の胃袋に任せて食べるとかでなければ、多く考えて一個を皆で分けるくらいで十分だろう。
 俺やマックスさんの顔よりも大きいくらいだし……夕食後のデザートだしな。

「あぁ、ソフィーさん。お帰りなさい! ……ルギネさん?」
「モニカ、ただいま。帰っている途中で会ったのでな。昨日の事を覚えていて、スイカとやらを食べるつもりでこちらへ向かっていたんだ……帰り道での勧誘が少し面倒だったが……」
「いい加減、ソフィーは私達のパーティに入るべきだ!」
「本当はねぇ……ルギネ、もう一人誘いたい人がいるみたいよぉ?」
「余計な事を言うんじゃない、アンリ!」
「お姉さまは、私がいれば十分なのに……」
「……お腹空いた……焦げた肉、食べてもいい?」

 マックスさんと話していると、店の入り口が開き、ソフィーさんが戻ってきた。
 近くにいたモニカさんが、声をかけてソフィーさんを迎えたが、それに続いて見せに入ってきた集団を見て、首を傾げる。
 どうやら、昨日言っていたように、スイカを食べるためにやってきたらしい……ルギネさんの顔色も悪くないようだし、魔力はちゃんと回復してるみたいだ。
 騒がしい集団を引き連れて戻って来たソフィーさんは、少しうんざりしたような表情をさせながらも、どこか楽しそうな雰囲気だった。
 久しぶりに会った知り合いと、しっかり話せて楽しかったのかもしれないね……いや、結界相手に思い切り剣を振れたから、という可能性もあるかも……?

「リク、もう一つ多めに切るか……」
「……そうですね」

 マックスさんと顔を見合わせ、大きなスイカを二つ切る事を決めた――。


「おぉ、スイカだ!」
「また食べられるのねぇ……」
「これが、スイカ?」
「焦げた肉より赤い……生肉よりは……同じくらい?」
「あの丸々とした物を切ったら、中身が赤いとはなぁ……」
「この黒いのは……種かしら? 野菜というより、果物に近そうね」
「リクさんやユノちゃん達が、美味しいと言ってたのがこれね」
「そのようだ。初めて食べる物だが、リク達が美味しいと言うのだから、間違いないのだろう」
「中身が赤いのは知っていたけれど、こうして見ると、印象が変わるわね。皮でお腹いっぱいになった私って……」
「スイカなの! 美味しそうなの!」
「キューだけじゃなく、スイカも食べられるなんて、いい日なのだわ! なんて日だ! なのだわ!」

 リリーフラワーのメンバーも加えて、夕食を皆で取った後、マックスさんが切って皿に入れたスイカが、皆の前に持って来られた。
 大きなスイカ二つを、食べやすいサイズに切っているだけあって、その量は多い。
 ……まぁ、皆で食べれば残る事はないだろうけど。
 大量のスイカがテーブルに置かれたのを見て、皆が口々に声を上げるけど……とりあえずエルサ、その言葉はいい意味で使われる言葉じゃないから、間違ってるぞ?
 まったく、俺の記憶からとはいえ、変な言葉は使わないで欲しい。

 切り方については、念のため俺がマックスさんに教えた。
 とはいっても、難しい切り方ではなく、よくある半分に切った後また半分に……と切っていって、最終的に片手で持てるくらいの大きさで三角になるように、というくらいだけどね。
 食べ方の一つとして、塩をかけて食べると言うのも教えようと思ったけど、日本と違って塩は調味料の中でもそれなりに値段が高いので、止めておいた。
 とにかく最初はスイカそのものの味を楽しんでもらいたいし、あれは好みが別れる事もあるからね。
 ちなみに俺は、塩をかけるのは嫌いじゃないけど、そのまま食べるのが一番好きだ。

「これは……確かにリクが言う通り、作って数を増やすべきだと思うわ!」
「そうね、甘くて瑞々しくて……多くの人に受け入れられそうね」
「そうだな。汁が少々べたべたするが、これも甘いためだろう。喉も潤うし、いい食べ物だ」
「でしょ?」

 フィリーナやモニカさん、ソフィーが感心しながら食べるのを見て、鼻高々な俺。
 いや、一番自慢するべきなのは、このスイカを作った人達だけど、なんとなくね。
 スイカを作る事に懐疑的だったフィリーナも、一口食べてからはヘルサルで作るのも賛成してくれる様子だ。
 やっぱ美味しい物って、多くあった方がいいからね。

「八百屋のオヤジが、売れると言っていたのも頷けるな。数が少ない事が悔やまれる……」
「確かにねぇ。仕入れをした時、これ以上は……って言われたんだっけ? また入荷したら、いち早く教えてもらわないと」
「しかし、数が少ないと店には出せないな。幸い、一つでかなりの量だから、多くの数を仕入れる必要まではなさそうだが。まぁ、何か工夫したり、料理に使えるかを考えてからだな」

 マックスさんとマリーさんは、スイカを店に出す事を考えて何やら相談している様子だ。
 スイカを使った料理かぁ……皮や種を使ったり、果肉を使ったりといった料理があるらしいとは、俺も聞いた事はあるけど……どうやって調理したらいいのかまでは知らない。
 そのまま食べるのが一番美味しいとは思うけど、マックスさんの腕で新しい味というか、違う食べ方が考え付くのに期待しよう。
 美味しく食べる方法は、いくらあってもいいからね……後で、塩をかける食べ方も教えておいた方が良さそうだね――。

しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・

Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・ 転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。 そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。 <script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...