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部隊編成方針決定

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「では、周囲を囲む部隊と突入部隊でわける、という事で」
「あ、マルクスさんヴェンツェルさん。すみませんが少し人数を裂いて他の部隊も作って欲しいんですけど……」
「他の部隊? リク殿、何をさせるんだ?」
「えーと、鉱山でモリーツさんを見つけた時や、その後に調べた時にですね……」

 ヴェンツェルさん達へのお願いは、さっきまで考えていた事だ。
 二人に鉱山で隠し通路を作っていた事を伝え、もしかしたら突入した俺達が間に合わず、そこから逃げる人もいるかもしれないと説明する。

「ふむ、つまり逃げた者がいないかを探す部隊だな。……新兵には任せられんか、マルクス?」
「了解しました。不備なく事を運べるような兵士を、部隊に編成します。魔物との遭遇も考えられますし、逃げる際にオーガを連れている可能性も考えると、未熟な者には任せられないでしょう。新しく陛下から支給されたワイバーンの鎧は強固ですが……だからと言って、任務をこなせるわけではありませんからね。私は取り囲む部隊の新兵を指揮しますので、捜索部隊の士気ができる者も選出いたします」
「頼んだ。私はリク殿達と共に、逃げる者がいないよう努めなければな。……あの鎧、私や他の兵士達も欲しがっていたのだが、陛下から新兵の生存率を上げ、良い兵士に育つようにとのお達しだからな、仕方がない」
「ワイバーンの素材も希少ですからね。あれ、素材が大量に持ち込まれたとかで、軍全体とは言わないまでも、多くに行き渡るように作成中らしいです。まぁ、先に新兵からとしたのは、軍全体の事や兵士の事を考えてくれていると感服したものです」
「うむ……まぁ、そうだな……」

 マルクスさんが称賛しているのを聞きながら、俺にちらりと視線をよこすヴェンツェルさんに、黙って口元へ人差し指を立てて内緒にするよう伝える。
 ワイバーンの素材を使っての鎧は、俺が姉さんに新兵を生かすためにどうかと提案した事だったけど、わざわざ俺が……なんて主張しなくてもいいからね。
 まぁ、ベテラン兵士さんとかも上等な鎧は欲しいだろうけど……新兵さんがうっかりしたミスや、未熟な部分で命を落とすかも、と考えたら先に支給して体を守れるようにした方がいいと考えたからなんだけど……評判良さそうだなぁ。
 ヴェンツェルさんも協力してくれたワイバーンからの素材獲得は、さすがに軍全体に行き渡る程じゃないらしいけど……機会があったら、また素材を取りに行ってもいいかなぁ? どこにワイバーンがいるのか知らないから、それを探す事から始めないといけないけどね。

「まぁ、とにかくだ。部隊を三つに分け、それぞれの作戦を実行する。作戦開始は明日だ。それまでに部隊の編成はマルクスに任せる。リク殿は、突入部隊として私と一緒に来てもらう、でいいか?」
「はい、大丈夫です。まぁ、冒険者ギルドへの名目はヴェンツェルさんの護衛ですから、見られていないとしても、一緒にいた方がいいでしょうからね。――モニカさんも、それでいいよね?」
「えぇ。リクさんはギルドと関係なく、爆発に対処できるのだから突入以外にないでしょうけどね。――ヴェンツェル様、私も突入部隊として参加させて頂きます」
「あぁ、わかった」

 そうして、ざっくりとした作戦会議は終了。
 突入部隊、包囲部隊、追跡と探索部隊の三つに分かれて、明日研究施設を襲撃する事が決まった。
 細かい作戦行動に関しては、それぞれの部隊でやる事が違うから、全体というよりも部隊ごとに決めるそうだ。
 俺が参加する突入部隊は、状況によって一番臨機応変に対応する必要があるため、基本的に俺の結界や眠らせる魔法に頼ると言われたけど……それでいいのかな、軍の作戦行動って……。

 何はともあれ、突入してもヴェンツェルさん達に危険が及ばないように、注意しておこう。
 同じではないけど、先に鉱山でエアラハールさんに屋内での周囲警戒について教えてもらっていて良かったなぁ。


「それでリクさん、相談って何かしら? リクさんからって言うのは珍しい気がするわ」
「えーと、昼食の時の事なんだけど、兵士さんが欲し肉とかであまりいい物を食べていなかったでしょ?」
「んー、そうね。フィリーナもそうだったみたいだし、確かに荷物を最小限で済まそうと思ったら、余計な食料が持ち運べないのはわかるけど……」
「うん。だからね、夕食は皆に美味しい物を食べてもらうために、街へ買い出しに行こうかなと考えているんだ。エルサなら、今からでも夕食に間に合うでしょ?」

 今は、おやつの時間より少し早いくらいだ。
 偵察から移動、会議が早く終わったため、時間には余裕がありそうだ。
 大勢で移動する場合、統率が取れなかったりで移動に時間がかかったりするけど、こういう時訓練されている兵士さん達だと、新兵さんが多いとはいってもきびきびと動いてくれて助かった。

「街に? 確かに、エルサちゃんに乗せてもらえば、夕食の準備を始めるくらいの時間までには戻って来れると思うわ。それじゃ、リクさんはルジナウムに?」
「そうだね、ルジナウムがここから一番近いし、往復にも時間がかからないだろうからね」
「まぁ、フィリーナや兵士にも料理を手伝ってもらうとして……でもリクさん? フランクさんに言っておいた方がいいわよ? 場合によってはノイッシュさんもかしらね……?」
「え、さっさと買ってここまで戻って来ようかと思っていたんだけど……」
「リクさん……考えても見て? ここにいる人達に一食とはいえ、行き渡るように食料を買うのよ? かなりの大荷物になるし、場合によっては市場のお店にある物を大量に買い込む事になるわ。リクさんだから、あまり問題にはならないかもしれないけど、ルジナウムに住む人達が買う分だってあるはずよ? それこそ、品薄から品切れ、価格の高騰を招いてしまうわ」
「……言われてみれば、確かにそうだね」

 一食、余ったら明日の朝食くらいならと簡単に考えていたけど、ここにいる人数は下手をすると一つの村くらいになる。
 しかも、子供や老人はおらず、食べ盛りと言うと語弊があるかもしれないけど、多く食べそうな人たちばかり……中には小食の人もいるのかもしれないけど
 たった一食だからとは言っても、相当な量を用意する必要があるか……そこまで考えていなかったね、モニカさんに相談して正解だった。

「だから、リクさんが自分で市場に行って買い占めるんじゃなくて、フランクさんに相談して用意してもラった方がいいと思うの。あくまでも、今回だけ……とね? そうしないと、市場の方じゃまた大量に変われる事を予想していいのか、なんてちょっとした混乱を来たすかもしれないわよ?」
「フランクさんなら、領主でもあるから用意してくれて混乱したりしないよう、調整もしてくれそうだね。わかった、それじゃ真っ直ぐフランクさんの所に行って、できるだけすぐに用意してくれるように頼むよ」
「えぇ。私も一緒に行けたらいいんだけど……それだけの量を料理するのは手間だろうから、すぐに取り掛かれるように準備をしておくわ。まぁ、食べてもらうならできるだけ美味しい料理を食べて欲しいからね」


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