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冒険者ギルドでベルンタさんとの話

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「えっと、ベルンタさんはいますか? ちょっと話したい事があるので」
「はい、いますよー。おじいちゃーん! リク様がいらっしゃいましたよー!」
「……アルテ、働いている時はギルドマスターと呼べと、いつも言っておるじゃろう。――リク、数日ぶりじゃが、今日はどうしたんじゃ?」
「ははは、アルテさんもベルンタさんも相変わらずですね。今日は、以前出した依頼の事を話そうかと思いまして」

 ベルンタさんがいるをか聞くと、振り向いて大きな声で奥へ呼びかけるアルテさん。
 すぐに奥からアルテさんを注意しながら出て来るベルンタさん……この二人は相変わらずだなぁ……仲が良さそうで微笑ましい。

「以前の依頼? あぁ、あの街から外へ続く道を調べる依頼か。……話しても大丈夫かの?」
「あぁ、こっちにいるのは皆事情を知っている人達なので、大丈夫です。紹介しますね、えっと……」

 ベルンタさんが用心しているのは、色んな場所にモリーツさんやイオスの関係者が紛れ込んでいる可能性を考えての事だろう。
 俺の後ろで、話を聞いているモニカさんやユノに目を向けていたから。
 お互い知らない状態で話すのもと考え、フォルガットさんの時と同じようにモニカさん達を紹介した。

「ふむ、冒険者でリクの仲間というわけか、なら大丈夫そうじゃの。それにしても……そんな子供まで一緒にいるとはのう……」
「ユノは子供じゃないの!」
「おぉ、すまんすまん。そうじゃの、嬢ちゃんも立派な冒険者じゃ」
「そうなの。どこかのお爺ちゃんとは違うの!」
「どこかのというのは、ワシの事か……しかし、嬢ちゃんは見た目は子供じゃから……」
「まぁまぁ、ユノの事は置いておいて……えっと、以前出した依頼があったじゃないですか?」

 ユノは正確には、見た目の年齢が問題で冒険者じゃないけど、子供と言われて怒ったベルンタさんが、宥めるために言っただけだろう。
 ギルドマスターだし、そのあたりもなんとなく察していてもおかしくない。
 それはともかく、エアラハールさんやユノ、ベルンタさんで話が盛大に逸れてしまいそうだったので、軌道修正。

「うむ。すでに冒険者を選んで依頼を受けさせておる。……そろそろ、何かしらの成果が上がって来るかという頃合いかの?」
「その依頼した内容ですけど、ルジナウムに繋がっていました。向こうのギルドマスターのノイッシュさんと話したんですけど、向こうは向こうで調べていた事に繋がっていたようで……」
「ほぉ……?」

 ノイッシュさんの事も含め、むこうの冒険者ギルドで聞いた話と、ルジナウムとブハギムノンが魔力の線で繋がっていた話をベルンタさんに説明する。
 まぁ、依頼を受けた冒険者さんが戻って来て報告される事の一部ではあるだろうけど、先に話しておいて悪い事はないはずだ。
 依頼自体は、ちゃんと達成されているんだからね。

「成る程の、今回依頼した冒険者は低ランクながら、堅実にこなす者達を選んだが……上手くやったようじゃな」
「ちゃんと達成したみたいなので、イオスやモリーツさんとは関係ないみたいですね」
「そのようじゃのう。今回の事で決めつけるのは早計じゃが、あの者達はそういう事のだったのかものう……」
「あの者達?」
「依頼をする冒険者の中での、今回の依頼を受けるのに難色を示した者達がおるのじゃよ。元々、冒険者が数える程しかおらん場所じゃが、二人程おったんじゃ。他の冒険者は、稼げる依頼も少ないここで、やっとまともな報酬が出る依頼に飛びついておったのだがのう……」

 数少ないブハギムノングにいる冒険者の中で、二人程の人が依頼に対して懐疑的……というか拒否するような感じだったのか。
 確かにそれだけでイオス達の関係者というには、確証がなさ過ぎるけど、冒険者として危険ですらなく、それなりにちゃんとした報酬が出る依頼を断るというのは、あまり多いパターンじゃない。
 依頼が多くて選べる状況なら別だけど、鉱山がエクスブロジオンオーガの影響で採掘を止めていて、ほぼ依頼もない状況で、ちゃんとした依頼を断るのも変な話だ。
 生活に困っていなかったからとか、そういう事はわからないけど……怪しく見えて当然だね。

「それに、その者達はもうこの街にはおらん。元々、エクスブロジオンオーガが出て来る少し前に街に来た冒険者じゃったし、いつ別の場所へ拠点を移しても自由なのじゃが、依頼を出してから移動をするというのも、おかしな話じゃ。単純に、この街では儲けられないから、移ったと言えなくもないがの」
「そうですね……時期を考えても、怪しく見えるので可能性は高いと思います。その冒険者たちがどこへ行ったかは?」
「生憎、追う事はできんかった。怪しいと思った次の日にはいなくなっておったし、見た通り冒険者がいない状況のギルドじゃからの。ここも、アルテと二人でやっているくらいじゃ……人が足りん。ちなみに、残りの冒険者は三人じゃが、それらは依頼を受けた者達じゃな」
「まぁ、動かせる人がいなければ仕方ないですよね。すぐにいなくなるとも予想していませんでしたし」

 フォルガットさんにやガッケルさんに頼めば、人員を貸してくれたりもしたかもしれないけど、それを冒険者ギルドのギルドマスターがするのは、対外的にマズイだろう。
 本来人を貸し出すというか、依頼という形で派遣するのは冒険者ギルドの役割だからね。
 それに、鉱夫さん達は冒険者と違って、調べたり追いかけたりするような人達じゃないし、不慣れだ。
 兵士さんの方ならとも思うけど、クォンツァイタの運搬で人を使っているから、余裕があるか微妙なとこだから……もしかすると、そういう部分の情報を得て、今がチャンスと街から離れたのかもしれない、と思うのは考え過ぎかな?

「ちなみに依頼を受けた冒険者は、大分前からこの街にいる者達じゃの。まともに稼げないこの街に留まっている、奇特な者達じゃ。まぁ、稼げる依頼には飛びつくが、本人達は気ままにのんびりやっておるみたいじゃからの。この街が気に入ったとかじゃろう」

 冒険者だからといって、色んな依頼を達成してやる! だとか、魔物を討伐してランクを上げて……とか、とにかくお金を稼いでやる! と考える人達ばかりじゃない。
 ある程度自由になるお金を得て、気に入った場所で過ごす冒険者というのもいるからね。
 街や村を気に入ったりとか、そこで暮らす人と……なんて、理由は様々だ。
 今回依頼を受けてくれた冒険者さん達は、そんな人達だったんだろう。

「ともかく、いなくなった冒険者がイオス達の関係者だと仮定すると……そこから考えられるのは……」
「その場所で何かが行われる、または行われ始めた際、一緒に潜り込んでいる可能性が高い……という事じゃな。もちろん、その前に潜り込んでいる可能性もあるじゃろうが、大体何かがある前後と考えておいた方が良さそうじゃ」
「そうですね。ブハギムノングとルジナウムが繋がっていましたし、ルジナウムの方にもいるって考えても良さそうです」
「当然そうじゃの。時期としては前後しても、関係があるのであればそういった者が入り込んでいても、おかしくないじゃろ」
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