神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

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新しい興味

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 エクスさんの長い名前の紹介から、以前の事やこうして訪ねてきた事に感謝するように、謝辞を述べながら芝居がかった礼をした。
 芝居がかったと言っても本人はいたって真面目だし、美形の老エルフ名だけあって様になっている。
 って、俺に対してそこまで丁寧にする必要はないんだけど、まぁ今更か。
 また謙遜を、とかいやいや……とかになってしまいそうなので、さっさと本題に入った方が良さそうだ。

「えーと、エクスさん。今回ここを訪ねて来た事に関してですけど……」

 感謝されるのもそこそこに、ここへ来た目的を簡単に話す。
 暖房魔法具、と俺は勝手に言っているけど、要は部屋を暖めるための魔法具の研究を実用化させたいという事だね。

「ふぅむ……他ならぬリク様の申し出、私の研究を認めて下さるのは喜ばしいとは思います。ですが、未だ研究は完成に至っておりません。まだまだ興味は尽きないですからな。その研究を他人に渡すというのは少々……いえ、誤解をされないよう申しておきますが、決して人間を嫌ってこう言っているわけではないのです」

 アルネが予想していた通り、エクスさんは研究成果を伝える事に難色を示す。
 何も知らずに聞いたら、苦労した研究成果を人間に渡す事を嫌っているのかな? と思っただろうけど、想定通りだから本人が否定している通り、人間とかエルフというのは関係ないんだろう。

「研究が完成していないと言ったが、それは魔法具自体まだ実用化できないという事か?」
「いや、それはできる。リク様の魔法からヒントを得た私は、暖めるための魔法具開発には成功した」
「では、完成と言えるのではないか?」
「元々の研究するきっかけは、どんな寒い場所でも暖めて快適にするため、という研究からだからな。まだそこまでには至っていないというだけだ」
「それじゃ、魔法具自体はできているんですね」
「はい。ですが、求める出力ではないうえにまだまだ効率も悪く……」

 エクスさんが最初に暖房魔法具に着手したきっかけは、ただ部屋を暖めるとかではなく、ものすごく寒くても簡単に暖められる魔法具の研究のようだ。
 なので、一応物自体はできていてもまだ出力が足りなくて、満足は行っていないという事なんだろう。
 多分だけど、エクスさんの興味は極寒の地でも、魔法具で暖めて暮らせるかどうか……といったところにありそうだ。

「成る程な……だが、現時点でも……」
「いや、しかしな……」

 アルネが現状である程度完成しているならと、人間や他のエルフと共同で研究を進めてみるのは? などを持ち掛けて、研究成果を公表できないかと交渉するが、依然と難色を示し続ける。
 研究を独り占めしたいとか、その研究成果を誰かに教えたくないというよりは、興味をもった研究成果の結論を自分で導き出したい、という印象を受けた。
 アルネやエヴァルトさん達は、エクスさんの事を偏屈と評していたけど、俺からすると興味や疑問を持って問題に取り組んでいるけど、どうしても答えが導き出せず、かといって誰かから答えを教えてもらいたくないと、意固地になっている子供のようにも見えた。

 俺も小さい頃、どうしても自分で問題を解きたくて、解き方や答えを教えると言ってくれる姉さんに反抗して、意固地になっていたりしたなぁ……結局わからなかったんだけど。
 まぁ、エクスさんは俺どころかアルネよりも年上みたいだし、長寿のエルフだから数百年と生きていて子供というのは失礼かもしれない。
 でも、研究熱心になるには、そういった部分も必要なのかも。

「どうしても研究成果は渡せない、と?」
「アルネやリク様に請われ、そして自分の研究を認められるというのは、やはり嬉しいものだがな。しかし、この研究は私が興味を持って取り組んでいる事だ。完成するまではな……」

 後から聞いた話だけど、俺やアルネが相手じゃなければ、本人が完成したと思っていない研究成果を求めた場合、エクスさんが怒って追い出されたり、交渉の余地がなくなっていた可能性があったんだそうだ。
 魔法から研究を進めるヒントが得られた俺がいたり、エクスさんも認めているアルネが相手だからこそ、落ち着いて話していられたらしい。
 そういう対応をされたら、確かに偏屈という評価になってもおかしくないか。

「そうか……まぁ、そういうだろうとは思っていた。だが……」

 交渉はしてみたけど、結局は駄目だったアルネは深く息を吐いて、少し諦めかけた雰囲気を出す。
 ここに来るまでにも何度か話していたから、これは縁起なんだろうなぁ。
 おそらく、エクスさんが別の研究に興味を示すよう仕向けるため、かな? ちょっと回りくどいけど。

「先程、カイツの所に行ってきたのだがな?」
「ほぉ……まぁ、先程聞いた話によれば、暖めるための魔法具以外にも、冷やす魔法具も必要らしいから、それは当然か。あ奴なら、特にこだわる事もなく成果を渡してくれただろう」
「あぁ、その通りだ。そのうえ、もっと効率の良い魔法具にするための協力もしてくれる事になった。それはまぁ、いいんだが……その時にな、少々不思議な事があったんだ」
「ほぉ?」

 エクスさんが興味を持ってくれるようにだろう、焦らすように、回りくどい説明をするアルネ。
 アルネが興味を持たせたい事は、暖かい空気が上へと向かう事に対し、冷たい空気が下に向かうという、俺がクールフトで効率よく冷やすための提案をした時に伝えた話だ。
 成る程……科学的な部分に興味を持たせて、それを研究させようという事かぁ。
 でも、それって魔法とか関係ないけどいいんだろうか?

「……それは、私も疑問に思っていた。暖める魔法具を研究するうえで、暖かい空気は上へ向かい、大して冷たい空気は下へと向かうのは、わかっている。だからこそ、完成にも手間取っているのが現状なのだが」

 お?

「不思議だな……空気というのはどこにでもある物で、暖かい、冷たいなどはあれど我々は重さすら感じない。なのに、上下に別れる必然性がある」
「確かにな。なぜそのような現象が起こるのか……よくよく考えてみれば、我々の目には見えない物だが、それがなんなのかは判明していない」

 おぉ?

「だろう? その空気という物はなぜそうなるのか、どういう存在なのか、気になるだろう?」
「空気はなぜそこにあり、なぜ存在しているのか……か……」

 えーっと、酸素とか二酸化炭素だったりとか云々かんぬんで、光合成した植物が二酸化炭素を酸素に……とか、地球では成分というか空気の種別とかは解明されているんだけど……ここで教えるのは野暮ってものか。
 せっかくエクスさんが興味を持ち始めたようだし、変に教えて暖房魔法具の研究に戻って欲しくない。
 それに、漠然と知っているだけで、細かく聞かれても答えられるかは微妙だし……そもそもこの世界と地球で違う事があるかも。
 生き物が呼吸をしているし、植物もあるし、火も燃えるから酸素と二酸化炭素の関係は大きく変わらないだろうけど、俺が知らない成分が空気中に混じっていてもおかしくないからね。
 それこそ、魔力だって空気中に溶け込んでいるって話だし――。


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