912 / 1,955
街側で捕らえておくのは不可能
しおりを挟む「帝都……リク様、やはり……私は行った事すらありませんが、帝都での出入りに関しては我が国の王都よりも厳しく調べられる、と聞き及んでおります。それを自由に出入りできるという事は……」
「そのようですね。間違いなく、帝国の中枢が拘わっているという事でしょう」
クラウリアさんが言う好き勝手、というのがどれくらいの事なのかはわからないけど、帝都……アテトリア王国で言うなら王都のような場所で、何もチェックされずに自由に出入りできるのは特別だと思う。
王都でも、出入りの際は一応チェックされるからね……最近は、ほとんどエルサで王城に直接行っているけど。
ともあれ、クラウリアさんの話で帝国そのものが深く組織とかかわりを持っていると判明した。
これは、姉さんにも報告しないと……。
「それじゃあ、俺は街の様子……というかモニカさん達の事が気になるので、そちらへ行きます」
「はい。私も、街全体の確認をしなければいけないでしょう。そろそろ、ある程度以上は確認されて、報告される頃でしょうからな。リク様、今回の迅速な事態収束、ありがとうございました」
「いえ、偶然戻って来た時に、今回の騒動に遭遇しただけなので……何か起こっていたら、街に住む人達が困らないよう尽力するのが、冒険者でもありますからね」
その後もある程度クラウリアさんから聞き取りをしたけど、特にこれといった情報は引き出せなかった。
聞き方の問題もあるとは思うけど、幹部と言っても知っている情報は限られているようだ……徹底的な秘密主義の組織って事だろう。
話を切り上げて、モニカさんやソフィー達にも話をしたり、向こうの確認をするためこの場を辞するために立ち上がると、クラウスさんからお礼を言われた。
隣でトニさんも頭を下げている。
とは言っても、俺がいなくても大きな被害はなく騒動は収まっていたっぽいけど……まぁ、元凶のクラウリアさんをさっさと捕まえた事で、早めに収めたのは間違いないか。
ちなみに、門が閉まっていたのは今回の騒動を起こしてすぐ、街の内部で起こった事のため、犯人を逃がさないようにすぐクラウスさんが指示したらしい。
門の付近、というか内側に兵士さんを配置しなかったのは、囮の意味合いもあって、逃げようと門に近付いた者を監視するためだったそうだ。
一応、数人の兵士が近くで門を監視していたとか……だから外から門を叩いても中からの反応がなかったのか。
内側からなら、外壁の上に上るのは容易でも外へ行くのは不可能……外へ向かって数メートルの高さで落ちる事になるから。
門を開けるのは、数が多くても仕組みなどを知らなければ時間がかかるため、逃げようとしても簡単には逃げられなくなっているからとかなんとか。
結局、逃げる事を考えさせる前に、俺が元凶に向かってクラウリアさんを捕まえたわけだけどね。
「ではリク様、そちらの女性は王都へ引き渡すようお願いいたします」
「……え? クラウスさんに引き渡そうと考えていたんですけど……」
やる事は終わった、と部屋を出ようとする俺にクラウスさんから、クラウリアさんの事をお願いされる。
クラウスさんが捕まえて、その後罰するか王都に護送するかだと思っていたんだけど……。
「リク様の願いでも、さすがにそれは……拘束をするくらいなら我々でもできますし、監視もできます。が……その、通常より多い魔力を持ち、何をするかわからないので、こちらでは万全に捕らえている状の維持が難しいかと……」
「以前、ヴェンツェルさんがツヴァイという、クラウリアさんと同等の幹部を捕まえた時、魔法具を使って魔法を使えないようにしていましたけど……?」
確かツヴァイの時は、体に身に着ける魔法具を使って、声が出ないようにして魔法を使わせなくしたんだっけ。
あれがあれば、クラウリアさんが抵抗して魔法を使おうとしても、発動しないから簡単に捕まえておけると思うんだけど。
「ヴェンツェル様方、王国軍とは違い我々にはそのような魔法具の準備がないのです。いえ、他に魔力を乱したり抑えて抵抗されないようにする魔法具はあります。ですが、それですと対応できない恐れがありまして……」
「あの時は、声が出ないようにする魔法具でしたけど、それは?」
「人の行動を抑制する魔法具は、多くを作られていません。本来一般に売られている魔法具は、役に立たせる物なので……人に作用して行動を阻害する物は、通常の商店では売られませんし、作られていないのです。なので……我々街の方で入手できなくはないですが、用意するのにも時間がかかるのです」
「あー、成る程……」
人の行動を阻害する魔法具って、使い方次第で悪い事にも使えるから、誰でも買える物にはならないよね。
それに、多くが作られていないなら、なんとかして集めるのにも時間がかかるのは当然だし……ツヴァイの時はヴェンツェルさんがいた事と、あらゆる事を想定して準備したから、あの時持って来ていたんだろう。
まぁ、魔力量が異常に多い相手を拘束するとは考えていなかっただろうけど、魔物と戦うのはわかっていた事だし。
「ですので、我々でなんとかしたいと思うのですが……万全ではない以上、リク様に頼むしかできません。申し訳ありません」
「クラウリアさん、抵抗せずに捕まってくれていたりは……?」
「え、私は貴方様について行く気満々ですよ!? それが他の場所になんて、我慢できるわけないじゃないですか! それに、おとなしく捕まっていたら組織から狙われ放題です。そんな危険がわかりきっているのに、抵抗しないなんてできませんよ!」
「自信満々に抵抗するって言われても……はぁ……痛めつけて動けなくする、とかもできるけど、さすがにそれはなぁ……仕方ないか」
「申し訳ありません、リク様」
「いえ、準備もなくクラウスさんや街の人達が困るのは望んでいませんから。まぁ、王都に連れて行って、もっと詳しく取り調べをしないといけないのは間違いないですし……わかりました」
頭を下げるクラウスさんに、苦笑というか、溜め息を吐いて承諾するしか道はないようだね。
でもクラウリアさん、そんな胸を張って抵抗するなんて言わなくても……いやまぁ、もし組織から本当に処分するように狙われたら、街の牢獄とかに捕まったりしていると居場所がわかりやすくて、襲撃される恐れもあるのかもしれないけど……。
その際、確実にクラウリアさん以外にも被害が出るだろうし、考えれば考える程俺が連れて行かなきゃいけないようだ……はぁ。
結局、クラウスさんやトニのお願いもあって、なぜかまとわりつこうとしたり、エルサのモフモフを触ろうとするクラウリアさんを、結界で阻みながら一緒に連れて行く事になった。
庁舎を出て、街中を歩いている際に、見えない壁に顔や体をくっつけている女性を連れて歩くのは、傍から見たら異様な光景だったのは間違いない……恥ずかしい。
結界を知らない人がほとんどなので、不思議そうに見られる事が多かった――。
0
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる