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デート終了と王都への帰還

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 モニカさんと話しながら、上手く言葉が出ないような、よくわからない感覚がある。
 なんだろう、服を変えてからだろうか? それとも、モニカさんと手を繋いでからかな? いや、今日二人で街を見て回る事が決まってからか。
 ずっと、自分のペースがいつもとは違っている気がする。
 いつも自分のペースを貫き通す……なんて考えているわけじゃないけど、いつもとは違う感覚だ。

 でも、それが嫌とかは一切感じないし、むしろ心地いいとすら感じる。
 まぁ、俺自身が情けないなぁとは感じるけど。

「あ、このままここで話していてもいけないね。それじゃ……」
「そ、そうね。行きましょうか、リクさん?」
「うん」

 特に何かある場所でもないし、通行人の邪魔という程ではないけど、さっきから少ないながらも行き交う人達が俺達の事を見たりしている。
 このままずっとここで立ち話をしているわけにもいかないので、手を繋いだままのモニカさんと二人、同じ歩幅で歩きだした。
 特にどこを目指す……という目的はないけど、気ままに歩いて一緒に過ごせたらいいな、と考えている。
 モニカさんも近い事を考えてくれていたら、嬉しいな――。


「えっと……それじゃ、マリーさん。また折を見て様子を見に来ます」
「こっちはあまり気にしなくていいんだけどねぇ。まぁ、それがリクとも言えるわね。一応、気を付けて。心配する必要があるのかはわからないけど、色々あるみたいだからね」
「はい、ありがとうございます」
「ふぬーっ! むぬーっ!」

 ヘルサル南門から外に出て、見送りに来たマリーさんと話す。
 あの後しばらくしてモニカさんと二人の時間が終わり、考えていたよりも少し遅くなりながら、お昼の営業が終わった獅子亭に。
 ニヤニヤするマリーさんに、複雑そうな表情をしているマックスさんはともかく、なぜか隅の方で壁に向かって座り込み、床にのの字を書いているルギネさん。
 さらに、昨日より厳重に簀巻きにされた挙句、猿ぐつわっぽい物までされているクラウリアさん……状況はよくわからないけど、獅子亭は今日も平和みたいだ、うん。

 獅子亭に入る前に、繋いでいた手を離した時は寂しさを感じたけど、先に来ていたソフィー達から感想を求められてそれどころじゃなくなっていた。
 ちなみに、感想を求めらえた際にそういえばあんまり街の事を確認できなかったなぁとか、建物が爆破された跡や、火事を消火した後の匂いなどはそれなりにあったけど、見た限りでは皆大丈夫そうだった……と言ったら、溜め息を吐かれたりも。
 モニカさんだけは、笑っていたけど。
 その後、遅めの昼食を頂く間、俺の服が出かけた時と変わっている事を言われたり、元ギルドマスターが来た際にルギネさんが並々ならぬ気迫で臨んでいたという話を聞いたりして、王都へ出発前の時間を過ごした。

 クラウリアさんが厳重に縛られている理由も聞いた……魔法は使わなかったけど、魔力をお漏らししつつ必死に俺……というかモニカさんを追おうとていたかららしい。
 なりふり構わず魔法を使わないのは良かったと思うけど、どうしてそこまで追いかけたかったんだろうか、よくわからなかった。
 マリーさんはモニカさんをひたすらからかって、出発する頃には顔だけでなく首元まで真っ赤になっていたりも……何を言われたんだろう。

「少し遅くなったから、ちょっとだけ急ごう。頼んだよエルサ」
「了解したのだわー!」
「まぁ、遅くなったのはリクとモニカが戻って来るのが遅かったからだが……そこは私達も推奨したからな、仕方ない」
「リクとモニカが楽しそうだから良かったの!」

 マリーさんに手を振って街から離れ、大きくなったエルサの背中に荷物と一緒に乗り込む。
 そろそろ日も暮れ始めているから、考えていたよりも遅くなったため、少し急ぐように頼む。
 暗くなっても、エルサなら問題なく飛んで目的地に行けるんだけど、王城への到着はできるだけ遅くなり過ぎないようにしたい。
 まぁ、暗い方がエルサの姿が王都の人達に見えづらくて、いいのかもしれないけど。

 空へと浮かびながら、ソフィーとユノの言葉に苦笑しながら、王都へと移動を開始。
 簀巻き状態のクラウリアさんを掴んで挟みながら、モニカさんやソフィー、フィネさんは俺と街を歩いた話に花を咲かせていた。
 ソフィーは、急ぐために少し速めでなおかつ高く飛んでいるので、気を紛らわせていたのもあるんだろうけど。
 俺はアルネやユノと一緒に、王城に戻ったらどういう説明をするべきかを相談していた。

 姉さんやフィリーナには全部話していいと思うんだけど、他の人達にはどれだけの話をどういう風にするかとかだね。
 ユノが創造神だとか、破壊神が帝国に干渉して、エルフを創ったアルセイス様が……とか、全てを話すわけにもいかないから。
 ……信じてくれるかどうかもわからないし。


「降りるのだわー」
「頼むよエルサ」
「空から王城に入るのにも、慣れたわね……今更だけど」
「……私はまだ慣れませんけど、リク様だからと納得しています」
「リクだから、と考えたらほとんどの事が納得できるからな」
「……俺、そこまで色んな事をやり過ぎてるわけじゃないと思うけど……」

 体感で、大体一時間くらいだろうか。
 ほとんど陽が沈んで暗くなったくらいに、王城の上空に到着し、エルサが中庭に向けて降り始める。
 フィネさんは、直接空から王城に……というのはまだ慣れていない様子だけど、ソフィーが言うように俺だからという理由で納得しているらしい。

 ……俺だからって、そんなにおかしな事ばっかりしているわけじゃないと思うんだけどなぁ……単純に空を飛べるエルサが一緒にいるくらいで、あとは魔力の量が多いとか、そのくらいなんだけど。
 まぁ、今更言っても特に変わらないか。

「お帰りなさいませ、リク様」 
「ヒルダさん、ただいま帰りました」

 中庭に降り立つエルサの背中から降りて、荷物を降ろしたりしていると、ヒルダさんが迎えてくれた。
 多分、降りて来る途中で兵士さんとかが気付いて、連絡してくれたんだろう。

「今回は、荷物が多いようですね。これらは、リク様の部屋に?」
「エルフの集落で、魔法具を受け取って来ました。あ、俺の部屋じゃなくて……」
「研究室の方へお願いします。それと、エルフの集落から別のエルフが来る予定なので、よろしくお願いします」
「畏まりました……」

 クールフトやメタルワームを持つ俺達を見て、ヒルダさんから聞かれる。
 俺が直接研究したり使うわけじゃないから、とアルネに視線をやると、代わりにヒルダさんに指示をしてくれた。
 別のエルフがというのは、クールフトを作ったカイツさんの事だろうけど……いつの間に研究室なんて作ったんだろう?
 いや、フィリーナや王城の研究者と一緒に、クォンツァイタに関してあれこれやってくれていたけど、研究室が宛がわれていた事までは知らなかった。

 さすがに書庫で研究をするわけにもいかないからだろうけど……調べたり研究してもらったり、任せっきりで俺が特に聞こうとしなかっただけか。
 アルネに頼まれて、一度深くお辞儀したヒルダさんが兵士さん達に指示を出し、クールフトやメタルワームを運んで行った――。


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