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探知魔法とは
しおりを挟む「リク殿はそんな事もできたのか……」
「遠くなればなる程、はっきりとしなくなるので本当に魔物かはわかりませんけど。それに、どこまででも調べられるわけではありませんから」
探知魔法の範囲としては、ルジナウムでの戦い以後魔力量が増えて範囲が広がったんだけど、それでも広い農地よりも少し広いくらいだろうか……。
正確にはわからないけど、俺を中心に十キロ四方くらいだと思う。
正確に調べられる距離はさらに短くて、せいぜい二、三キロの範囲だね……離れれば離れる程、反応が曖昧になって行ってよくわからなくなる。
「結界を使った後、結界以上に薄い何かがリクを中心に広がったように見えたのは、そのせいなのね。魔力が結界になった効果だと思っていたわ」
「そういう事。一応俺の役目は終わったから、ちょっと見て来るよ」
「わかったわ。安置所を見て回るのは私だけでいいからね」
「そういう事ならリク殿、アマリーラとリネルトを連れて行ってくれ。リク殿を直接見ていない兵士にも顔が利く。それに、もしもの際には伝令代わりに使えるだろう。……リク殿にもしもがあるとは思えんがな」
そう言って、離れた場所で兵士さんと話していたアマリーラさん達を呼ぶ、シュットラウルさん。
もしも……と言う部分で苦笑していたけど、俺だって油断したり危ない事もあるだろうから、一緒に来てくれる人がいるのはありがたい。
「リク様、微力ながら同行させて頂きます。何なりとお申し付けください」
「よろしくお願いしますね~、リク様~」
「うん、こちらこそよろしくお願いします」
呼ばれたアマリーラさん達が、シュットラウルさんに言われて、俺と同行する。
膝を付いて敬礼までしている小柄なアマリーラさんと、緩い感じで手を振る大柄なリネルトさん。
相変わらず対照的な二人だけど、その耳と尻尾が忙しなく動いているのには、ついつい目線が行ってしまうね。
「リク、邪な事を考えるんじゃないのだわ」
「エルサ……起きていたのか。というか、邪な事なんて考えてないから」
「あんな馬鹿魔力を垂れ流していたら、起きて当然なのだわ。まったくリクは誰彼構わず……」
「馬鹿魔力って言うな。はぁ……はいはい、俺にとって一番のモフモフはエルサだから」
「……わかればいいのだわ」
アマリーラさん達の揺れるモフモフ……もとい耳や尻尾を見ていたら、いつの間にか目を覚ましていたエルサが、俺の頭を締め付けながら言ってくる。
エルサは、安置所を回る間暇だからと昼食の時以外、くっ付いたまま寝ていたはずなのに。
馬鹿魔力って言われるのはちょっと心外だけど、確かに結構な魔力を使った気がするから、エルサが起きるのもわからなくもないけどね。
ともかく、アマリーラさん達の耳や尻尾にやきもちを焼くエルサに対し、手で撫でながら宥めておいた。
「リク様、本当に魔物がいるのでしょうか? 周辺は兵士達が警戒をしているはずなので、もし魔物がいたら報告されるはずなのですが……」
「もしかしたらいるかもしれない、という程度ですね。はっきりと魔物とまでは……」
「兵士の警戒を抜けたのかな~?」
別行動をするシュットラウルさんやフィリーナと別れ、アマリーラさん達と話しながら東側へと移動。
結構距離があるから、早歩き……ジョギングくらいの速度で移動しているんだけど、アマリーラさんもリネルトさんも息を切らす事なくついて来ていて、話せる余裕もあるのはさすがだね。
周辺を警戒してくれているから、北側ではアダンラダを早めに見つけられて、奇襲されたりはしなかったんだろう。
俺自身、魔物が絶対にいると言い切れないくらいおぼろげな反応なので、本当にいるかはわからないけど……もしいなければそれでいいし、いたらいたで被害を未然に防げたと思えばいい。
「本当に魔物がいるとして……リク様はどうやって、離れた場所に魔物がいるとわかったのでしょうか? いえ、先程からリク様の事を疑うような事ばかりを言ってしまい、申し訳ありません」
「いやいや、確実な情報かどうかを疑うのは大事だし、俺も自分がわからないのに他の誰かが、あっちに魔物がいる! なんて言ったら疑うかもしれませんから。気にしていませんよ。そうですね……離れた場所を調べる方法ですけど……」
ユノやエルサが言ったのであれば、信じるとは思うけど……それは俺がユノ達を信頼しているからだね。
アマリーラさん達とは昨日会ったばかりだし、英雄だとか色んな噂話を聞いていても、人間やエルフ、獣人を問わずこれまでできなかった事をしている人を見れば、すぐに信じられなくても無理はないと思う。
小走りで移動しながら、器用に頭を下げるアマリーラさんに笑いかけながら、離れた場所を探る方法を伝える。
「探知魔法って勝手に呼んでいるんですけど……えっと、魔力を薄く広範囲に広げて、その反応からどこに何がいるのか、あるのかを調べる方法なんです。自分の魔力って、変換して魔法を発動していない状態だと、自分との繋がりがありますから」
そもそも変換していない純粋な俺の魔力だから、変換というプロセスを経て発動する魔法とは違うため、探知魔法と呼んでいいのかはわからないけど。
イメージしやすいから、この呼び名が定着しちゃったし、これでいいか。
「確かに、魔力は持っている本人と密接にかかわっているため、放出しても変換されなければ自然の魔力の中に溶け込めなかった魔力は、戻って来ると聞いた事があります」
魔力、そんな性質があったんだ。
魔法が発動した後の余剰魔力などは、自然の魔力に溶け込むっていうのは聞いた事があるけど。
「でも~、魔力を広範囲に広げるなんて~よくわからないわ~」
「そもそも、個人の魔力は自然の魔力を集める核にするためのもの、と言えるからな。全てがそうとは言えないが、魔法を使ううえでの基本だ」
「そうよね~。私もそう教えられたわ~。でも、自然の魔力を集めずに広げるなんて~誰も考えた事がないんじゃないかしら~?」
アマリーラさんとリネルトさんは、魔力を放出するまではともかく、薄く広げるのがよくわからない様子で話している。
まぁ、これも魔力量が多い事が関係しているんだし、そもそもイメージするだけで魔力や魔法が自由に使える、という時点で他の人達とは違うからね。
人が扱う魔法とは根本から違うのだから、二人が理解できないのも仕方ないのかも。
「まぁ、ちょっと特別なんですよ。特殊な使い方をする、そう考えておいて下さい。ともかく、広げた魔力をソナー……えっと、返ってくる反応で魔物や人、木とかの自然物なんかを調べる事ができるんです」
ドラゴンとの契約だとか、魔力量が異常とかは移動中のため、詳細は省かせてもらう。
とりあえず他にはない使い方をする、くらいに考えておいてもらえばいいかな。
「ただ、はっきりわかるのはあんまり広い範囲じゃないんです。この農地で言うと、見晴らしがよくて遠くまでよく見えますけど、周囲を見回して見える範囲くらいがはっきりわかります。それより離れると、途端におぼろげになるというか……」
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