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周辺調査と囮
しおりを挟む「シュットラウルさんがですか?」
「もちろんだ。サマナースケルトンは、エルフの村での事があってから、要注意の魔物として警戒している。一体が確認されたくらいならまだしも、複数だからな……冒険者ギルドだけには任せられんさ」
複数いるサマナースケルトンを、放っておいて危険な事はエルフの村で起こった事が証明している。
だからこそ、今では警戒対象になっているんだろう……一体だけなら簡単に倒せるし、他にいなければ問題ない魔物ではあるけど。
「というわけだ。至急、センテ周辺の魔物……主にサマナースケルトンに関して調べるよう手配しろ」
「はい、畏まりました。ただ……街中での情報収集はいかがいたしましょうか? 侯爵家の手勢を連れてきてはいますが、何分数が足りません」
シュットラウルさんが、食堂に来ていた執事さんに対し、指示を出す。
街中の情報収集と、街外の調査を両立させるには当然ながら人数が必要だけど、どうやら足らない様子。
センテには俺が来るからと、わざわざ離れた場所から来ているから、シュットラウルさん側の人員が足りなくなるのも無理はないか……。
兵士さんもいるから、とは思うけどセンテはそれなりに大きな都市だし、周辺をしっかり調べようとすると五百人いる軍を動員しても少なく思えてしまうくらいだ。
とはいえ、応援を呼ぼうにも今日明日でどうにかなるわけじゃないし、今はここにいる人員でなんとかするしかなく、街中で聞き込みをしている人もそちらに回されるのは仕方ないのかもね。
「そうだな……街の方は少々少なくしても構わん。サマナースケルトンの方が重要だ。リク殿の協力は取り付けたが、できれば大事に至る前に防ぎたい。駐留している兵士も使って、周辺を徹底的に調べろ」
「畏まりました。すぐそのように手配いたし……」
「あ、ちょっと待って下さい」
なんて思っていたんだけど、そういえばと宿に戻る前エルサと話していた事を思い出し、執事さんとシュットラウルさんにストップをかける。
「どうした、何か気になる事でもあったか、リク殿?」
「えーとですね……単なる予想というか、なんとなくの感覚に頼ったものなんですけど……」
確証と言える事は一切なく、本当になんとなくそう感じるだけの予感を話すのは、少し気後れしそうだったけど、なんとか皆に飛びながらエルサと話した事を伝える。
「ふむ……つまり、リク殿は何者かが内部に入り込んでいると?」
「いえ、そこまでは……多分、街に潜んでいる程度だとは思うんですけど。俺達に気付かれずにこちらの行動を見ている人がいるんじゃないかなって」
「うぅむ……リク殿とエルサ様の感覚。無視はできんな。だとしたら、街中での情報収集の人員は減らせないどころか、増やす必要性すら感じる」
俺やエルサが、もしかしたら? という感覚頼りの予想ではあるんだけど、シュットラウルさんはそれを信頼してくれるようだ。
……これで何もなかったら、全力で謝らないといけない方向な気がする。
「……あ、それなら。こういうのはどうでしょう? あくまで、この場で話した事が漏れないって前提ではありますけど……」
「む?」
街中での情報を集めたい、周辺の調査もしたい、けど人の数が足りない……どうするべきかと悩むシュットラウルさんに、思いついた事を提案する。
概要は簡単だ、俺とエルサが明日以降調査をする時は他の人達とは別に行動し、空を飛んだりと動き回る。
それをシュットラウルさんの配下の人に監視してもらう、もちろん街中だけだし、監視しているようなあからさまな行動はできるだけ控えてもらう。
事前に誰が監視をするのかは、シュットラウルさんから教えてもらっておけば、何かあっても偶然会ったと装えるだろうから。
モニカさん達じゃないのは、一緒に行動しないのは不自然で偶然街中で会ったと装うのは難しいから。
もちろんその間も、モニカさん達には依頼の調査を進めてもらう。
「俺は俺で、エルサで空から周辺を見回ろうかと。地上で調べるのとはまた違った事がわかるかもしれませんし……もし、こちらの動きを見てから、隠し事をしているなら、空を飛ばれるのは厄介だと思うんです」
「ワイバーンとも繋がっていれば、迂闊に動かせなくもなるだろうな。動きも制限されるし、炙り出される可能性も高くなる、と」
「はい。もちろん、俺達……特に俺に注目して監視している何者かがいれば、という前提ですけど」
つまり、俺は派手に動く囮ってわけだね。
隠し事をするにしても、俺が派手に動いていればそれだけ相手は警戒せざるを得ないだろうし、下手をしたらボロを出す可能性もある。
正直、俺が探知魔法を使って監視している人や、不自然な行動をしている人を見つけ出せればそれが一番いいんだけど……人の多い街中ではそれも難しい。
だからこその、あえてシュットラウルさんから俺を監視する人を付けてもらう……正確には、俺を監視する人を見つけ出す役目だけど。
「リク殿は目立つし、他の者に気付かれないよう見張れる者もいるだろう。これなら、人数をあまり割かなくても良さそうだ」
「まぁ、怪しい人物の目撃情報と、街中で何らかの活動やワイバーンに指示を出している人、さらに俺を監視している何者か……全部が全部繋がっていれば……ですけどね」
予感というかなんというか、ここまでの事でなんとなくこれらの事は全て、繋がっているような気がしている。
人数が多ければ多い程、俺達側に動きを掴まれやすくなるし……怪しい人物はシュットラウルさんにマークされているから、単独ではないんだろうけど、多く見ても三、四人ってところだろう。
そして、それらは同じ組織で同じ目的のもとに動いている……と考えてもいる。
これで全然別で偶然タイミングが合いました、なんて事が絶対にないと思いたいけど、可能性はゼロじゃないので確証が得られるまで俺一人の考えに留めているんだけどね。
「成る程な……リク殿が見つからないように行動してもらうのではなく、あえて行動を見せて向こうの出方を待つか。いい案だ……アマリーラとリネルト辺りか?」
「現在、センテに連れて来ている配下の中では適任かと。獣人であるため、他者の気配に敏感なようですし、戦闘など様々な事に精通しております」
「リク殿と知り合いになっている事も大きいな。先程の提案にあった、偶然街中で会ったというのを装うのには最適だろう。これまであまり顔を合わせていない者だと、不自然に見える」
俺の話に頷き、執事さんの方を向いて話すシュットラウルさん。
アマリーラさんとリネルトさんなら、確かに街中で会っても何事もなく話せばいいだけで、特に不自然にはならないだろうね。
実際、リネルトさんとはワイバーンを探しに行く時、東門に向かう途中で会って話しているし。
あの二人なら、何かがあっても頼もしい。
「では、決まりだな。周辺調査や街中の情報収集、人員の振り分けはこの後決める」
「畏まりました……」
そうして、急遽サマナースケルトンも含めたセンテ周辺調査と、俺を囮にして企む何者かのあぶり出しが決まった――。
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