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東門での魔法は反省の余地あり

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「……そういえば、どうして南門にモニカさんが?」

 とりあえず、モニカさん達の説得を終わり、門の中へ入り、疑問に思っていた事を聞く。
 モニカさんは東門に行っていたはずだよね?
 アマリーラさんとリネルトさんは、報告や周囲への説明に向かってもらった……危険はないから、俺の連れているワイバーンは攻撃しないように、などだね。
 遠巻きに見ている人達は、俺達の話を聞いていたし、驚きはあれどワイバーンに対して嫌がっている気配は感じないので、なんとか大丈夫だと思う。

 門を入ってすぐの広場で、ワイバーンを連れた俺達を距離を取りつつ囲んだまま、移動して来ている。
 片付けは終わっていないから、解散してそちらに……あ、はい、皆ワイバーンが気になるんですね。
 一部の好奇心に負けた冒険者が、リネルトさんがやっていたようにワイバーンを触ろうと近付いて来て、今では触れ合い広場のようになっていたりもする。
 とは言っても、本当に数人が興味本位でといった感じだけどね……もちろんワイバーン達には、おとなしくしているようにと言ってある。

「使用後のクォンツァイタを運んで来たのよ。フィリーナやカイツさんは手が離せないから、私が話を通さないとね。一応、侯爵様からの命令や通達は来ているでしょうけど」
「成る程ね」

 魔力溜まりの発生を阻止するために、簡易的な魔力吸収装置として、クォンツァイタをセンテ南に設置する。
 そのためのクォンツァイタと、説明のためって事か。
 通達はされていても、ただものが運ばれて来ただけだったら、どうしていいかわからない人も多いだろうからね。
 農場のハウス化に協力してくれた兵士さん達はともかく、冒険者が多く配置されている南では、そもそもクォンツァイタを見た事がない人も多いし。

「戻ってきたリクさんを驚かせられるかな? とも考えていたけど……驚かされたのは私だったわ」
「あははは……」

 まぁ、ワイバーンを連れて来るなんて誰でも驚くよね、うん。
 ……驚かせずにつれて来る方法があったら教えて欲しいくらいだけど、とりあえずごめんなさい。

「あ、東門の状況は? 魔法を使って、すぐ離れたからその後の状況がわからないんだけど」
「盛大に、魔物が倒れて前線で抑えていた部隊にも、多少影響が出ていたようだけど……問題ないわ。多少の怪我人を出したくらいで、今は安定して少しずつ押し返している段階ね」

 俺の魔法、やっぱり味方にも影響がでていたようだ。
 魔物達がドミノ倒しの状態になっていたからなぁ……抑えていた盾部隊の一部も巻き込まれたんだろう。

「父さんは、笑っていたけど……母さんは溜め息を吐いていたわね」
「げっ……マリーさんかぁ。後で怒られないか心配だ」

 マリーさんは、モニカさんやソフィー達、女性冒険者に厳しい。
 俺には多少甘く接してくれている部分もあるけど……でも、叱る時は叱る人だ。
 ……鬼教官の顔も持つ人だから、全てが終わった後の説教が少し怖いけど、俺自身がやってしまった事だから、甘んじて受けるしかないか。
 マリーさん、理不尽に叱り飛ばすような人でもないからね。

「母さんのお叱りはともかく……あとは、こちらの戦力が東門に合流し始めた事と、クォンツァイタを使って魔法が使い放題というのも大きいわ」
「ルギネや、元ギルドマスター達も、東門に向かったぞ。皆、片付けとかよりも戦いたい様子だったな。まぁ、外壁上から攻撃するだけでは、物足りなかったんだろう」
「冒険者は血の気が多い人が多いなぁ……元ギルドマスターとかヤンさんとか、現役じゃない人もいるけど」
「センテ支部のギルドマスター、引きずられて行っていました」

 南門付近には、スピリット達の攻撃から逃れた魔物も多少いたけど、戦力を大きく割く程じゃない。
 戦いたい人や、元気が余っている人は東門への加勢に行ったのか。
 ルギネさん達や元ギルドマスターなら、積極的に戦いに行った様子が想像できる。

 フィネさんが言うには、血の気の多い人達にベリエスさんは引きずられて行ったらしいけど……うん、それも簡単に想像できるね。
 ベリエスさん、細身だし戦闘が得意そうなタイプじゃないからね。
 まぁ、まとまりにくい冒険者を統率する側として、連れて行かれたんだろうけど。

「そういえばリク様、先程このボスワイバーンの話で……大量のワイバーンを倒したとも言っておられましたが……」
「うん、そうですね。まぁ、エルサも頑張ってくれたので、それなりの数を倒しています。離れた場所なので、多分南側の魔力溜まりの発生には影響はないと思いますけど」

 フィネさんの問いかけに頷いて、倒した場所を考えながら答える。
 あの場所は小さな森になっていて、魔物の死骸が置かれている場所ではないため、魔力溜まりを発生させるような影響はないはずだ。
 ちなみに、ボスワイバーンを連れてきた事情とかを話す時に、空中戦でワイバーンと戦っていた事を話しているし、ワイバーン達が仲間がやられたとこちらを恨んでいるわけではない事も伝えている。
 エルサの戦い方については話していないけど……空中戦闘機動を真似しようとしていたとか、皆に言ってもわからないと思うし、大体は俺とエルサだからと戦い方に関しては深く追及されなかった。

「いえ、そうではなくてですね……ワイバーンでしたら、素材になるのではないかと。仲間が倒されても気にしていない、というのは聞きましたが……それらを使う事に関してはどうなのかと思いまして」
「ワイバーンの素材ですか、確かに使えたらかなりありがたいですね。――その辺りはどうなんだい?」
「ガァゥ?」

 フィネさんの言葉に、そういえばそうだと考えてボスワイバーンに聞く。
 ボスワイバーンは、周囲に注目されていたりリネルトさんに触られているので、こちらの話はよく聞いていなかったらしく、首を傾げた。
 話の邪魔になるからと、アマリーラさんに掴まれて別のワイバーンの方へ連れて行かれるリネルトさんを横目で見つつ、ボスワイバーンに倒したワイバーンの素材に付いて話す。
 ワイバーンの皮などは良質な素材として、鎧などで有効に使える。

 それに関しては、鎧を盗んだ奴と戦った事があるし、王城での訓練で見たこともあるからね。
 ただ、仲間がやられて気にしなくても、その死骸から剥ぎ取った素材を使う事に関して、ボスワイバーンがどう思うかは別だ。

「ガァゥ」 
「多分、特に何も問題ない、と言っているみたいだね」
「そ、そうですか……」

 エルサの魔力を繋げての通訳は、街に向かって出発した時に切れているので、何を言っているのかはっきりわからないけど、どうやら素材を使う事についても、特に思う事はないみたいだ。
 破壊神が創った魔物なのに、その素材を使って別の何かに有効活用するのは気にしないのか……。
 それこそ、新たに創造する事に近いのに。
 まぁ、細かい事は気にしないのかもしれないね。

「あ、ただワイバーンを倒した場所には、まだ他のワイバーンが残っていますから……人間を襲わないようには言ってありますし、近付いても攻撃してこないとは思いますけど……」


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