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とりあえずワイバーンは受け入れられる

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「まぁ、今回センテで活動していた……おそらく核から復元された、再生能力が特化されたワイバーン以外は発見次第討伐しても、何も問題はないと思います」
「ふむ、見分けるのは少々難しそうだが……ボスワイバーンは他とは違ったか。そのボスワイバーンやリク殿の近くにいないワイバーンであれば、これまでと変わらない対応で良さそうだ」
「そうですね。見た目は確かに違いがないので、わかりづらいですけど……戦えばわかりやすいかな? 斬っても再生する事、ボスワイバーン以外は魔法が使えないので、他とは違うのがすぐにわかるかと」

 ぱっと見では、区別を付けるのは難しいと思う。
 ボスワイバーンのように、全部に角が生えていればいいんだけど……そんな事はないし。
 まぁ、基本的に味方になったワイバーンは、再生能力を付けられて復元したワイバーンなので、戦ってみるしかないと思う。

「……戦いに発展する前に見定めるのは難しいか。だが……そもそも、アテトリア王国にはワイバーン自体が少なく、大半は以前の王都でリク殿に倒されているのだがな」
「あー……あと、通常のワイバーンが過ごしている姿を知らないので、もしかしたら程度なんですけど。なんとなく、今回味方になったワイバーンのほとんどは、ちょっと魔物っぽくないと言うか……なんとなく雰囲気が違うような気がします。なんと言えばいいのか、難しいんですけど……暢気、かな?」
「暢気だと? どういう事だ?」
「いえ、復元されたワイバーンだけなのかはわかりませんけど、俺とエルサが戦いを止めた途端、ワイバーン達は寝始めたりしたんですよ。ボスワイバーンもそうですけど、今宿にいるワイバーンも庭に来た途端にのんびりと、寝始めましたし……」

 ボスワイバーンとの話を始めてからの印象を、シュットラウルさんやフィリーナ、まだ床に転がっているままのカイツさんに話す。
 これまで戦った魔物は、本能からか人間と見たら襲い掛かる魔物ばかりで、敵意は当然ながら感じていたし……なんというか、ピリピリした感覚?
 雰囲気から殺伐とした気配を感じていたんだけど、再生する復元されたワイバーン……面倒だから、再生ワイバーンでいいか、呼び方はシュットラウルさん達にも伝えて統一する事にした。
 ともかく、その再生ワイバーン達からはそのピリピリする感覚や殺伐とした気配は、一切感じなかった。

 まぁ、戦闘を仕掛けた状況がほぼエルサによる奇襲だったから、混乱状態で感じられなかったのもあるんだけど……ボスワイバーンから敵意を感じなかったのと同様に、俺が戦いを一旦辞めてからもそういった気配を発している再生ワイバーンは皆無だった。
 それどころか、地面に降りた後は寝始めたからなぁ……姿形は違うけど、隙あらば寝ているエルサの暢気な様子を眺めている感じに近かったっけ。

「復元されたからそうなったのか、それとも何か他に理由があるのか……ワイバーンの個性、というには数が多いか。もしや、復元される際に人間などの魔力を注ぎ込む事で、何かワイバーン側に変質をもたらしているのかもしれんな。そもそも、再生能力を強化するなどの変化も加えているようだし、その可能性はあり得るか」
「……いい加減、床に向かってブツブツ言うのは止めてくれるかしら? ちょっと怖いから」

 倒れたまま、フィリーナを乗せて床を見つめつつブツブツと呟いているカイツさん。
 確かに、背中に乗っているフィリーナを無視すれば、何もない床に向かって話しかけるようにも見えて、不気味だけど……さすがにかわいそうになってきた。

「フィリーナがどかないから、こうなっているのだがな? 背中の骨からミシミシという音が、体に響いているし、重いのだが」
「だから、私は重くないって言っているでしょ! カイツは大袈裟なのよ。はぁ……とりあえず、落ち着いているようだから、降りるわ」
「「……」」

 もう慣れたのか、骨のきしむ音を聞きながらも冷静なカイツさん。
 痛みに慣れた事以外にも、興味が尽きない話題だから気にしている余裕がないのかもしれない。
 とはいえやっぱり、細身であっても人が背中に乗れば重いわけで……でもフィリーナに言うと怒られそうだったので、シュットラウルさんと顔を見合わせて苦笑するだけにしておいた。
 シュットラウルさんも、さすがに俺と同じ意見みたいだ。

「ふぅ……背中が痛むが、今は些末な事か」
「結構な音がしていましたけど……」

 フィリーナが降りてカイツさんが立ち上がり、バキバキと部屋に響く程の音を立てながら軽い体操っぽい動きするカイツさん。
 折れたんじゃないかと勘違いするくらい、大きな音がしていたけど……大丈夫そうだ。
 でも、背中の痛みや骨のズレは些末で済まされない気もするけど、本人が気にしていないので気にしない事にしておこう。

「大丈夫よ、エルフの男は結構丈夫だから。普段は引きこもっている事が多いけど」
「それは、フィリーナが……いや、止めておこう」

 そういえば、エルフは男性が研究をしている事が多くて、女性が森で狩りをする事が多いんだったっけ。
 女性の方が身体的にしなやかで、森の中では動きやすいとかなんとか……。
 もしかして、カイツさんの背骨が鳴っていたのは、ただの運動不足で体が硬かったからかもしれない。

「それでだ、リク様。ワイバーン達についてだが……非常に興味深いのです。研究対象としても?」
「えっと……多少調べたりするのは構わないと思いますけど、さすがに解剖とかは止めて欲しいかなぁと……」

 研究と聞くと、解剖して内部を調べる云々が頭に浮かんだ。
 さすがに、命を取る方向での研究は止めておいて欲しいかな……今のところ、一応ワイバーン達は言う事を聞いてくれているから。

「むぅ、再生能力が高く、そして核があれば再び復元できるとは思いますが……」
「止めておきなさい。いくら研究のためとはいえ、魔物を核から復元するのは許されないわ」
「……私も、研究から得られる成果は多大なものになると予想するが、復元に関しては王国貴族として認可できんな」
「そもそも、それをしてしまったら帝国と同じになってしまいますからね」

 再生能力が高いため、多少傷付けても大丈夫だし、もしもの事があればまた核から復元したらいい……とカイツさんは考えていたらしい。
 禁止にして良かった。
 フィリーナもシュットラウルさんも、カイツさんを注意している。
 核からの復元などあ、命を弄ぶ行為に繋がるためアテトリア王国では禁止されているからね。

 正確には、復元が禁止されているわけではないんだけど……元々、王国側にはない技術だし。
 でも、魔物の生死を操るような研究は許可されないし、今後姉さんが正式に禁止令を出す見込みだ。
 倒した魔物の遺骸を調べたり、生きている魔物の生態を調べるとかは大丈夫なんだけど……まぁ、多少曖昧でグレーな部分もあると思うけど、解剖して再生させて、さらに復元させて、というのはシュットラウルさんがいなくても許可はされないだろう――。


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