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対レムレースに絶大な効果を発揮する剣
しおりを挟む「それじゃ、魔力吸収よろしくね……はぁっ!」
「ギギ……!? ギ……」
魔力吸収モードの剣を突き刺すと、レムレースは一瞬だけ目と思われる黒い霧をうごめかし、戸惑うような驚くような声らしき音を発した。
「……眩しい。ヒュドラーに突き刺した時も、こうだったんだろうなぁ。でも、効果はちゃんと出ているようだね」
突き刺した剣は、まるで霧を吸い込んでいるように魔力を吸収し始めた。
それと共に輝きを増す剣身は、ヒュドラーの時と違って体の内部などで遮られていないから、直視すると眩しい。
太陽の直視よりはマシだけど、あまり目を向けていられないね……視線はそらしておいた方が良さそうだ。
「おぉ、段々と小さくなっていく。というか、霧が晴れて行く感じかな?」
魔力を吸収しているせいか、広範囲に広がっているレムレースと思われる霧が少しずつ小さくなっていくのが見えた。
それでもなお魔法を地上に向けて、もしくは俺に向けて発動させているのは、一つの魔物であっても複数の意思の集合体である事の証拠かもしれない。
複数の首があって、それぞれ独立しているとはいっても意思の統一がなされているっぽい、ヒュドラーとはまた違うようだ。
目に関しても、魔力や霧が特に集中している場所がそういう形になっているだけで、本当に目というわけじゃないんだろうね……抵抗なのか、霧を剣の突き刺さった場所に集中させて、今のところ他の場所に目が作られる事はないけど。
放たれている魔法は、兵士さん達の方はあらかじめ張り直しておいた多重結界と、俺の周囲に張っている結界によって阻まれているから安心だ。
「ん……? 成る程、濃い霧に同化して自由に居場所を変えているから、急所が見えないだけなのか……」
一、二分くらいだろうか、全ての黒い霧を剣が吸収し、レムレース討伐が完了したかと思えた頃、中空に浮かぶ小さな粒。
ずっと広範囲に広がる霧を見たから粒のようにしか見えないけど……実際は、数センチの真っ黒な物体だ。
レムレースになる時、魔力やら死霊化した思念やらが凝縮されて物質化したのかもしれない。
その物体は、頼りなげにふよふよと中空に浮かんでいる。
「じゃ、あれを斬って終わりかな。んっ……硬っ!」
結界から物体に向けてジャンプし、剣を振り下ろす。
特に抵抗もなく、他の魔物と同じようにあっさり斬れると思っていたら、カキンッ! という硬質な音を響かせて、斬るというよりも割れた。
手応えも、金属に金属を打ち付けた時のような感覚。
輝く剣でも切れない程って、どんな硬さなのか……少なくとも、ヒュドラーの首より硬いし、多分俺が作った石壁よりも硬い。
「割れたから衝撃にはそこまで強くないのかもしれないけど、あれじゃ偶然急所というか、核みたいなのに魔法とか攻撃が当たっても、倒せないんだろうなぁ……」
広範囲で、一気に攻撃する以外倒せる方法がないらしいレムレース、その理由の一端を理解しつつ、地上に降り立った。
兵士さん達は俺の多重結界に守られ、一応盾を構えつつではあるけど後退を始めている。
どうやら、俺が言った事をモニカさん達が伝えてくれたらしい……近くにも兵士さん達がいたから、その人達が伝令役になってくれたのかもね。
「さてと……それじゃ、ここらの魔物を一掃してから中央のヒュドラーに向かわないと……えーと」
あまり強力過ぎる魔法は駄目だし、火を使った魔法や爆発するようなのはその後の影響を大きく残しそうだからダメだとして……。
俺が離れたら多重結界はすぐ消えるから、火とかばら撒いたら熱風が兵士さん達に向かいそうだからね。
「だったら、氷かな。凍結させるようなのは駄目だけど……いや、地面を凍結させたら魔物が滑って進行速度が遅くなったり? まぁいいや、とりあえず今は氷を飛ばして魔物を倒す方向で」
魔物達の方へ向かってゆっくり歩き、剣を振るっていくつかの魔物を倒しつつ、イメージを膨らませる。
「よし。ここらでいいか。多重結界はまだ維持されているのを確認……」
二十メートル程進み、周囲を完全に魔物達が包囲しているのを確かめて魔力を変換、イメージを解き放つ。
「マルチプルアイスバレット!!」
イメージを魔法名にして口に出し、魔法を発動。
魔力が無数のピンポン玉くらいの氷の塊になって俺の周囲に浮かび……一斉に囲んでいる魔物に向かって打ちだされる!
「GYAGI……!?」
「GIGI!」
「RYA……!」
氷の塊は当たった魔物の肉を抉る貫通弾となり、さらにその後ろの魔物へと向かう。
一体の魔物に複数発、悲鳴のような声を上げる魔物、声すら出せずに事切れる魔物……俺へと群がっていた魔物は、ほとんどが穴だらけになって地面に崩れ落ちた。
イメージは氷の弾丸。
先は鋭く、氷は硬く、それでいて高速で射出され、穿ち貫通する弾丸と化す……そういった魔法のイメージだね。
参考にしたのは、ヒュドラーを倒した後モニカさん達の所へ向かう途中、空から降り注いでいた幾つかの魔法。
氷だけじゃなかったし、形も様々だったけど……無数に打ち出すという部分を参考させてもらった。
そういえば、あの多くの魔法って俺に向かって来ていなかったから、もしかしたら兵士さん達が放っていた物だったのかもしれない。
俺がレムレースに対して多重結界を使う時にも、かなりの数の魔法がレムレースに向かって撃ち出されていたから。
……魔物を打ち倒しつつ、それなりに降り注ぐ魔法を振り払っていたけど……ま、まぁ、俺が当たるよりはマシだと思っておくかな、うん。
魔物に向けているのに無駄にしてごめんなさい、と心の中で謝っておく。
それはともかく、俺の放った魔法とその結果だね。
「……使い慣れている魔法じゃないのに、ほとんどイメージ通りにできた、かな? いや、想像より貫通力があるような気はするけど……多重結界までは貫通しなかったから、いいか」
これも、白く輝く剣を伸び縮みさせる魔力調整のおかげかもしれない……偶然だろうけど。
とにかく、多重結界のうち数枚の結界が割れたようだけど、向こうにいる兵士さん達までは届いていないから、良しとしよう。
その多重結界だけど、氷の弾丸が当たった直後になくなっている。
まぁ、維持するように魔力を流していないのが原因だけど、俺のいる場所からそんな事はできないし、これまでの経験から何もしなくても俺が魔法を放つまでくらいは保てるとわかっていたから。
「周囲の魔物はほぼ一掃したし……兵士さん達も距離を取っているから、大丈夫そうだね」
大きな盾を構えながらだから、当然走るよりは速度は遅いけど少しずつ離れていく兵士さん達……俺からは、青い継ぎ接ぎのある大きな盾しか見えないけど。
そして、今の魔法で俺を中心にした広範囲に動く魔物はいなくなった。
魔物が折り重なって、直撃を防げた魔物が幾つかってところかな……?
今は、警戒してこちらの様子を窺っているようだけど。
数は少ないから、倒すのもそんなに手間じゃなさそうだし、魔法を使うまでもないようだね――。
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