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協力して強力な魔物へ立ち向かう
しおりを挟む「一体なんの話を……?」
「いいの、リクは気にしなくていいの!」
「そうよ! だからえっと……ヒュドラーとレムレースの事よね。その剣があってリクが大丈夫って言うなら、そうなのよね」
話していた事を聞こうとすると、さらに焦って話を逸らそうとするユノとロジーナ。
何か怪しいけど……今はそういった細かい事を気にしている余裕はないから、今度ゆっくり聞く事にしよう。
「それにしても、ユノもロジーナもお互い仲良くなったんだな。ヒュドラーの足止めを任せようとしていた時は、大丈夫かと心配だったんだけど……」
「ユノが危険な事をするなら、仕方ないわ。それに、私まで危険になる可能性もあったわけだし。でも、別に仲良くなったわけじゃないわよ」
「そうなの。ロジーナとは利害の一致で協力しているだけで、仲がいいって事はないの!」
利害の一致って、ユノの正体を知っていれば気にないけど、子供っぽい言動や見た目からは不釣り合いというか、よくそんな言葉を知っていてなぁ、と思ってしまう。
とりあえず、仲が悪そうに見えても実はそこまで悪くない……創造神と破壊神なんだから、水と油とまでは言わなくとも混ざり合わない何かがあるんだろうなと思う事にした。
「まぁ、いいか。それじゃ俺は……」
「ちょっと待つの! その剣があるからって言っても、ヒュドラーとレムレースの両方を一度に相手は危険なの! 私も協力するの!」
「え、だって……武器もないし、なんとかなるから大丈夫だと思うんだけど……」
例えば、レムレースに剣を突き刺して魔力吸収している間は俺自身無防備になるけど……結界でヒュドラーから身を守っていればいい。
ヒュドラーを先に相手にしたとしても、それは同じ事。
というか、そろそろ本当に多重結界の残りがもう二、三枚になっているから、本当に早く行きたいんだけど……。
「レムレース……は無理よね。武器とかそういう話じゃないわ。でも、ヒュドラーの気を引くくらいはできるわ」
「私とロジーナでヒュドラーをおちょくって気を引くの。そうしたら、リクもレムレースに集中できるでしょ? 何をするかわからないけど……リクは近くで監視していた方がいいと思うの」
「監視って……まぁ、やってくれるなら助かるけど、大丈夫なのか?」
ユノが言う、俺を近くで監視って威力の高すぎる魔法を使って、やり過ぎてしまう事とかだろうか?
バーサーカーモードの時、ユノに止めてもらった事もあるから近くにいてくれるのは正直助かる、かもしれない。
まぁ、バーサーカーモードになるつもりはないけど。
「気を引くくらいなんてことないわ。ちょっと面倒ではあるけど……」
「避ければいいだけなの。剣がないと少し危ないけど、多分怪我はしないの!」
ロジーナも同じ考えらしく、武器がなくともヒュドラーの気を引いてくれるらしい。
そこまで言うなら、断る理由はないか。
これがモニカさん達のような、見た目通りの人間だったら危険過ぎるから下がってもらうけど、ユノもロジーナも違うからね……最近と言わず、エルサと契約してから俺もユノ達側っぽいけど。
「はぁ……わかった。それじゃ、俺がまずレムレースを倒すから、ユノとロジーナは協力してヒュドラーの気を引いてもらうよ」
「わかったの。ロジーナと協力ってのはあまり好きじゃないけど、やるの」
「私だって嫌よ。でも仕方ないからやってあげるわ」
この期に及んで、仲の悪さアピールのようにユノもロジーナもお互いの顔を背ける。
ツンデレかな? いや違うか。
ともあれ、そうして多重結界を張り直さなくていいギリギリで、ヒュドラーとレムレースに向かっていった。
……あ、もしかしてユノもロジーナも、白く輝く剣の効果を見たかったりとかそういう事だろうか? さっきは興味深そうに見ていたからな。
なんて事を考えつつ、駆け出した――。
「レムレースの溜めに合わせて、多重結界解くよ! すぐに行くから、レムレースはもうほぼ魔法を使えないと思うけど、一応気を付けて!」
「了解したの!」
「レムレースが魔法を使えないって、どうやるのかわからないけど……わかった事にしておくわ!」
ヒュドラーとレムレースに向かって駆けながら、ユノとロジーナに声を掛ける。
ロジーナは疑問を感じてはいたみたいだけど、とりあえず了承してくれたみたいだ……輝く剣を魔力吸収モードにして突き刺せば、魔法を使う余裕がなくなるからなんだけど、細かい事を今言っている暇はないから助かる。
「せっ! っと、よし。行くよっ!」
俺自身が張っていた多重結界を、魔力吸収モードにした輝く剣で斬り裂き、消滅させてからレムレースに向かって飛び上がる。
ほとんど無意識にできるようになった、風の魔法を利用した小さな爆発を使って飛び上がる……狙うはレムレースの目、ヒュドラーの首のさらに上だ!
「……やっぱり気持ち悪いなぁ。足場結界っと……はぁっ!」
ぎょろりとした目が俺を見ている……形は人間と変わらないような目なんだけど、まばたきをする事もなく黒目をこちらに向けているだけだ。
器官としての目の役割をしているのかはわからないけど、レムレース自体は霧の集合体みたいなので、まだ滝をする必要はないんだろう。
ただやっぱり、近くで見ると……遠くで見ていてもか、やっぱり気持ち悪い……生理的になんとなく受け付けない感じだ。
とにかく、鳥肌が立ってしまうのを感じつつも無視し、飛び上がってすぐに準備していた地面と平行に発生させた結界を足場に降り立ち、すぐにレムレースの目へと剣を突き刺した。
「ギ……ギギギ……!!」
レムレースの悲鳴なのかなんなのか、声というよりもただの音に近い何かを発しつつ、蠢く霧が縮小を始める。
「本当にレムレースが止まったの!」
「まったく、どんな仕掛けよ……辺り一帯を魔法で焼け野原にするくらいの方が、まだわかりやすいわ……」
ヒュドラーの頭上でレムレースに剣を突き刺している俺を、ユノとロジーナが見あげているのが足場の結界越しに見える。
何かを言っているようだけど……呆れているような雰囲気? いやいや、きっと白く輝く剣が凄いとかそんな感じだろう。
「フシュー……!」
「ギギャ!」
「ヒュドラーがリクを向いているの!」
「私達もやるわよ! あれを見たら、何もしなくてもいいような気もするけど……」
「わかっているの!」
ヒュドラーの首のいくつかが俺に向けているのがわかる。
それと共に、顎を開いて魔法を吐き出す準備をしている事も。
やっぱり、多重結界を下に向けて張っておいた方がいいかな? と思った瞬間……。
「どっせい! なの!」
「リクにばかり気を取られているんじゃ……ないわよっ!」
「えぇ!?」
「フシュ……!」
多重結界の準備を始めようとした俺の目に飛び込んできたのは、ユノがジャイアントスイングで豪快に投げ飛ばすロジーナが、俺を見ているヒュドラーの首に対して、勢いのまま頭突きをしている所だった。
黒い剣の頃は結構な抵抗を感じるくらい、硬いヒュドラーにそのまま頭突きって……ロジーナの頭は大丈夫かな?
いや、変な意味じゃなくて衝撃で割れていないかとか、そういう心配だけど――。
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