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放たれた破滅の光
しおりを挟む「あ、レッタ。ちょっと待ちなさ……」
「ロジーナ様と、そして私にひれ伏しなさい! リク、貴様がその力を破壊へと向けない事。できる事を加減して抑えている事が全て悪いのよ、このロリコン!!」
「だからロリコンじゃ……っ!!」
ロジーナの伸ばした手も、制止の声にも気付かず、レッタさんは滲み出ている魔力をその手、指先に集中。
魔力は目が眩む程の赤い光になり、空へ向かって勢いよく放たれた……!
その光は、真っ直ぐ上へと向かって数十メートルくらいの高さだろうか? 突然直角に曲がって俺やロジーナが来た方向……つまりセンテへと向かって走った。
「くふふ……後悔なさい、私やロジーナ様の計画通りに動かないロリコンが悪いのよ」
赤い光を放ち、その進行方向を見守るように遠くへ視線を向けているレッタさんが、ついに俺の事を名前で呼ばなくなった。
俺のアイデンティティやその他に影響しそうで、ロリコンという誤解を解きたいんだけど、それよりも今は放たれた光が何を意味しているのかの方が重要……かな、多分。
「一体何を……」
魔物を阻んでいる多重結界、頭上まで全てを覆っているわけじゃないから、魔力の含まれた赤い光は何にも阻害される事はなかった。
それ自体はともかくとして……あの赤い光は、ここに来るまでに見る限りだと魔物に対して、指示を与えていたもののはず。
でも、光は高度を維持したままセンテの方へ真っ直ぐ伸びている……これまで見ていたように、どこかで輪のように広がって消える事もなく、ただ真っ直ぐと。
俺の作った石壁を越え、その内側に構えているはずの冒険者さん達すら越えて、さらにセンテの外壁も越え、街上空を突き進んでいるようだ。
センテ内部も含めて、そちらには魔物はいないはずなのに……。
「レッタ、何をしたのか言いなさい。あれは魔物に指令を与える魔力のはず。だったら、何故魔物がいないはずの方へ……」
俺と同じような疑問を感じて、ロジーナがレッタさんに問いかける。
いや、問いかけるというよりも睨んで問い詰めるとか、問い質すと言った方が口調に合っているか、厳しい言い方だし。
ロジーナでも、赤い光が含む性質はわかっても、どういう意味があるのかまではわからないのか…。
「そうでした、今はロジーナ様も私と同じ。ほぼ人間なのでしたね。そこのロリコンのせいで」
「だから、俺はロリコンじゃ……」
「そんな事はいいから、さっさと答えなさい!」
俺にとっては、そんな事ではないんだけど……でも、なんとなくロジーナが焦っている気がして、口を挟むのをやめた。
ロジーナには、もしかすると俺が気付いていない何かがわかっているのかもしれない。
「ロジーナ様との計画に、少々変更があったのですよ。ロリコンがロジーナ様を捕え、私にはその反応がわかりましたから……ですので、確実にロジーナ様をロリコンの手から救い出し、それでいて計画を推し進めるための一手を」
もう完全に俺の事をロリコンって認識しているんだね、この人。
違うと言っても話の腰を折るだけなので、今は我慢しよう。
あと、俺がロジーナを捕えたわけじゃなく、ロジーナが隔離された場所で俺と戦った結果、よくわからないけどユノと同じ状況になっちゃったってだけなんだけどね。
……俺のせいと言えなくもないけど、仕掛けてきたロジーナの自爆とも言える。
「計画の変更……ですって?」
「えぇ。もうそろそろその内容がわかりますよ……ふふふ、もう少し、もう少し……」
訝し気なロジーナに対し、悦に入るように、自分がロジーナの役に立っていると信じて疑わないような、レッタさんの笑み。
それはロジーナを前にしているにも関わらず、何か他の……もっと崇高な存在へと想いを馳せているような表情だった。
ロジーナの話では、レッタさんはロジーナに従う存在のようだったけど、違うのか?
いや、目の前の女の子の姿をしたロジーナではなく、もっと根源的な、破壊神そのものを信奉している狂信者、のような物なのかもしれないと感じた。
「ほぉら、これで私とロジーナ様の計画通り」
「っ!」
「この振動は……!」
笑みを一際深くしたレッタさんの声に導かれるように、遠くで何かが揺れるような振動が、足下に伝わる。
近くで何かが起こったわけじゃない、センテの方を振り返って見ても何も見えない……というか周囲を囲む魔物が邪魔だ。
レッタさんの放った赤い光が、何かの爆発のような破壊をもたらしたとかか? あれはセンテの外壁を越えていたから、直接内部にとか。
いやでも、あの赤い光には魔力は込められていたけど、破壊的な力は感じなかった。
ロジーナも、魔物に指示を与えるためのと言っていたし、それでここまで振動が伝わってくるような、そんな破壊的な現象を引き起こせるはずがない。
「ふふふ、あちらが気になるようね? いいわ、私はもう何もしないから、存分に様子を窺って見なさい、ロリコン」
「……」
とにかく俺に対して、ロリコンと付け加えないと気が済まないらしいレッタさんに、言い返すのは諦めてセンテに向かって目をこらす。
何もしないと言っているのは信用できないとしても、何かされても大丈夫という確信があったから。
まぁ、もし何かしてきても対処できるように、頭の中には結界をいつでも発動できる状態で待機させているんだけどね。
「魔物が邪魔だから、一掃するか……いや、上から見た方が早いか」
「くふふふふ……」
周囲を囲んでいる魔物達は、それなりに大型の魔物が多いため、見通しが悪い。
というか、空は見えるけどセンテの方は何も見えない。
様子を見るために何をするか考えて呟く俺に、後ろから狂気にでも憑りつかれたかのような笑い声を発するレッタさん。
「……んっ! っっ!!」
俺の呟きを聞いたからか、レッタさんの笑い声を無視してジャンプするロジーナ。
数メートル程度だけど、小さな女の子が飛び上がる事ができる高さではない行動に達し、声にならない驚きの表情になって、戻ってきた。
「ロジーナ……?」
「リク、あなたなら私より高く飛べるでしょう? 見てきなさい。微かにしか見えなかったけど、不味い事になっているわ」
「え!? わ、わかった。……っ!」
降りてきたロジーナを窺う俺に対し、深刻な表情になって俺にも飛んでみて見ろと言う。
驚きながらも承諾し、俺も足に力を入れて魔法も使い、ヒュドラーやレムレースと戦っている時と同じように、高く高く飛び上がる。
「足場結界っと……あれは!?」
先程レッタさんが放った赤い光が曲がったのと同じくらいの、数十メートルくらいの高さまで飛んで足場結界を張り、中空に立つ。
そうしながら、センテの方へ目を向けて見えたのは……街の向こう側から立ち上る黒煙。
距離があり過ぎて規模ははっきりわからないけど、空へと立ち上る黒煙はただ事じゃない状況を示していた。
「あの場所は……少し北にズレているから……まさか西門!?」
俺が今いるセンテ東からやや南。
そこから真っ直ぐセンテを越えて西側のやや北から、立ち上る黒煙はおそらく西門付近。
西門からかどうかはわからないけど、その近くなのは確かだ。
そしてその西門付近には、ヒュドラー三体が東から襲って来るのを見越して、ヘルサル方面に避難しに向かう人達、避難の準備を整えている人達が集まっているはず……。
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