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表裏一体の真実
しおりを挟む「ロジーナと私は、表裏一体なの。どちらかがいなくなれば、もう片方もいなくなるの。ここに私がこうして立っている、それだけでロジーナが無事な証拠になっているの」
「それって……」
ユノちゃんは創造神……今はほとんど人間と変わらないらしいけれど、とにかく本来は創造神らしい。
そして、以前リクさんとユノちゃんから聞いた破壊神の話。
創造神と表裏一体で世界の創造と破壊を司る神様。
成る程ね……ロジーナちゃんが、ユノちゃん以上に幼い見た目でヒュドラーに立ち向かえる腕前だという理由の説明が、一気にされたような気がしたわ。
つまりはそういう事。
妙にユノちゃんとの仲が悪いような、それでいてお互いを認め合っているような雰囲気を感じたのは、そのためだったのね。
「モニカには、どういう事かわかったみたいなの。そして負の感情なども含めて、全てじゃないけど……今回の事を仕組んだのはあれなの」
あれ、とはロジーナちゃんの事なんだろう。
破壊神とも、ロジーナちゃんとも言わないのは、ユノちゃんなりにまだ全てを明かすべきではないと考えているからなのかしら。
「じゃ、じゃあ目論見通りって事に?」
「さっきも言ったけど、これはあれが望んでいた事じゃないの。それ以上の事でもあるし……モニカ、エルサを連れてちょっとこっちに来るの……」
「え? えぇ……」
ユノちゃんによって、破壊神の目的や人間としての事などを聞く。
アマリーラさんはまだ結界には張り付き、とにもかくにもそこから引き剥がす作業をソフィー達に任せて、私はユノちゃんに連れられて他に誰にも聞かれない場所へ。
と言っても少し離れただけだけれど、エルサちゃんが結界を張ってくれて、外に声が一切漏れないようにしてくれたわ。
……やっぱり便利ね、結界。
とりあえず、ユノちゃんとロジーナちゃんとの関係に気付いた私だけにまず話をって事らしいけど……とにかく、ユノちゃんからの話しで、今回のセンテへの魔物襲撃の裏に隠された事実を知ったわ。
それは、エルサちゃんもリクさんと一緒にほとんどの事を知っていたようだけれど……リクさんの事だから、全部終わって落ち着いたら私達に話そうとしていたのでしょうね。
信じられない内容でも、信じてもらえない可能性よりも、私を含めた皆に隠し事をしてたくないって人だから。
それから、ユノちゃんとエルサちゃんを交えた話で、リクさんの状態はおおよそ私達がシュットラウル様達と話している時に予想した通りじゃないかという事。
全ての繋がりが切れてしまっているリクさん、負の感情に取り込まれている可能性……。
そしてリクさんの意思などを取り戻す方法は、やっぱ元々繋がりを持っていた私やエルサちゃんの呼びかけが有効だろうという事。
それによって、意識や自由意思を取り戻せられれば……という話になったわ。
ただ……。
「リクが意思を取り戻せるかどうかは、賭けみたいなものなの。だから、呼びかけても応える事ができず、そのままって事もあり得るの」
「そうなったら、私達はリクを支配する負の感情によってやられるのだわ。多分だけどだわ、今リクの体は破壊する事に傾いているのだわ」
「失敗したら、私達だけじゃなく他の皆も巻き込んで全て終わりってわけね……」
リクさんとの繋がりを再び取り戻せる可能性は、決して高くないとユノちゃんは言うわ。
エルサちゃんも、確実にそれができるとは思っていないみたい。
少しだけ、胸中に迷いが生じる……。
だって、結界を破らなければ他の人達を巻き込んだりしないわけだから……。
「なんにせよ、赤い光……あれだけの事をしてまだ、結界を維持できている以上、他にやれる事はないわ。このまま隔離された結界の中で、一生を過ごすか、それともリクが自分を取り戻す方に賭けるか……なの」
結局、選ぶ選択肢は多くないみたいね。
一度、シュットラウル様達と話し合っていた時に、選択した結界を破るという方法。
あの時は、もしかしたら結界が自然に解けて外に出られるかもしれない、という考えも残っていたけど……ユノちゃんの言葉を信じるなら、それは望めない。
でも、緩やかに破滅へと向かうにしても、結界の中にいればそれなりの期間は生きられるのは間違いないわけで。
「もし、もしだけど……少し様子を見て、リクさんが自分を取り戻すのを待つ、というのは……」
「多分無理なの。些細な事でリクの……リクらしい遠慮とかを感じるの。でも赤い光を引き出した以上、人としての意思はもう飲み込まれているの。あれは、どれだけの魔力があったとしても、一人の意思でできる事じゃないの。無数の意思や感情……負の感情に飲み込まれたからできた事のはずなの。そうなったらもう、自然に浮き上がる事も取り戻す事もないの。だから、無理矢理にでも私達で引き出す必要があるの」
「それとだわ、様子を見ている間にリクはどこか別の場所へ行く事もあり得るのだわ。ここで安穏と過ごしている間に、リクは本来やりたくないはずの事……各地の村や街、魔物も人も区別せず、破壊の限りを尽くすのだわ。そうして、その頃にはもうリクの意思なんて、混ざって消えてしまっているのだわ」
リクさん自身で意思を取り戻すのは不可能、そして待っていたらどこかへと行ってしまう可能性が高い。
他の場所に移動した頃には、もうどれだけ呼びかけてもリクさんの意思自体が、完全に混ざって消え去っているって事ね。
つまり、本当に結界を破るのなら今が最初で最後のチャンスってわけで……。
「リクさんが離れたら、結界も解ける?」
「門を開いて世界と魔力を繋げたの。だから距離なんか関係ないの。リクは自然の魔力すら取り込んで、永遠に……その体が朽ちてしまうまで、結界は維持され続けるの。そして、リクの意思すらなくなった体はいずれ、今私達を守っている結界ごと破壊する事もあり得るの」
「それじゃ、もう選べる選択肢なんてないのかもしれないわね……」
ここに閉じこもって、一生を過ごすとユノちゃんは言ったけれど、いつリクさんだった何かが戻って来て、破壊されるかもわからないという。
結局、私達がやれる事はもう一つしか残ってないわけで……。
リクさんも私達も、生き残る手段は一つしかない……迷っている場合じゃなかったわね。
私の胸にある悪い予感や確信が、今この状態、特にリクさんの状態を感じ取っているのだとしたら……私がやる事は一つだけ。
「いいわ、どれだけ可能性が低くたって、私がリクさんを……リクさんの意思を取り戻して見せるわ!」
「その意気なの、モニカ。絶対的で圧倒的な力だけど、まだ介在できる余地があるの。細い穴でもこじ開けて、引っ張り出す事なの。それには魔力や力じゃなくて、強い意志が必要なの」
「モニカのリクへの気持ちをぶつけるのだわ。私は、またリクの魔力を浴びたいのだわ」
「そんな、リクさんの魔力をお湯のように……でもまぁ、エルサちゃんはそうよね。素直じゃないんだから」
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