神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移

龍央

文字の大きさ
1,330 / 1,955

次善の一手を使う次善隊の突撃

しおりを挟む


「さすがマルクス殿だな。魔法と矢が止むその直後に、結界へ次善隊が到達できるタイミングだ。それでいて、頭上を走る魔法や矢にも当たらないよう、計算している」

 シュットラウル様が感心したように、確かに頭上をすさまじい勢いで飛ぶ魔法や矢は、次善隊の先頭にすら当たっていないようね。
 私を含めて、剣などでも攻撃する関係上魔法や矢で狙う場所は、私達を覆っている結界をして低い場所。
 大体、皆の顔くらいの位置としているから、当然頭上に打ち上げられた魔法も矢も、当たる前に高度を落とす。
 どうしても、突撃する次善隊の頭に当たってしまう恐れがあったわけだけど、そうならないようにマルクスさんがタイミングを見計らい、見定めて突撃の号令を出したって事なんだわ。

 それでいて、最後に放たれた魔法と矢が結界に当たった直後に次善隊が到達し、次善の一手を撃ち込めるようにもしている……と。
 さすがは大隊長にまでなった人、なのかしら。
 私やソフィー達じゃ、自分はともかく皆の進む速度まで頭の中で計算して、当たらないようになんてできないし、少しでも躊躇すれば間が空いてしまうわ。
 ほんの少し程度なら、大きな問題にはならないんだろうけど……エルサちゃんが言うには、攻撃を加えて魔力に干渉、乱したとしても間が空けば開く程他の結界の他の場所から魔力が供給され、維持と修復が行われるみたい。

 だから、できるだけ間を置かず、間断ない攻撃が望まれるって話だったんだけど。
 ちなみに、とんでもない数の結界が張られているため、攻撃を加えて破る……割れた結界も間を置けば修復されて元通りになるとか。
 修復されないよう間断ない攻撃を加えたうえで、確実に結界を破って行かないといけないなんて、ほんととんでもないわ。

「さて、私も準備をせねばな」
「シ、シュットラウル様……?」

 感心しながら、櫓から飛び降りて来るシュットラウル様。
 次善隊が突撃して見晴らしがよくなったとはいえ、降りてきたら全体を見渡せないと思うのだけれど……。
 戸惑う私を余所に、スラリと抜かれる剣……細身で突く事に特化したレイピアという部類の剣ね。
 ロングソードより長いけど、鋭さを追求するための細い剣身が折れやすく、扱いが難しいとされているわ。

 槍の方が柄が長いため、突進力やリーチはあるけれど、深く突き刺すという点に関してはレイピアの方が上ね。
 櫓から降りて、剣を抜いて何をするつもりだろうか……? なんて、考えるまでもないわね。

「なに、私も向かわねばなと思ってな。貴族は民の先頭に立って戦う者でもある。全てを皆に任せるだけというのは性に合わん。それに、リク殿の結界ならば危険はないからな」

 事もなげにそう言って、レイピアで素振りをするシュットラウル様……剣身が細いのもあってか、鋭い突きはほとんど私の目には見えなかった。
 隣で、フィネさんやソフィーもその鋭さに目を見開いている……あ、シュットラウル様が降りて来たから驚いているのかも。

「た、確かに危険なありませんけど……」

 リクさんの結界は私達を守るため。
 当然結界が反撃なんてしてくるわけはないし、ただそこにある壁というだけ。
 むしろ危険があるとすれば、味方の何かしらの攻撃に巻き込まれる事。
 近くで結界へ攻撃を加える次善の一手に当たったりとか、それくらいのものだけど……。

「……」

 櫓の上を見てみると、侯爵家の執事が首を振っていた……止めても聞かない、という事だろう。
 貴族は国から領地を与えられ、それを治める……貴族と聞くとまずそういった役目を思い浮かべるけど、本来は外敵、魔物や他国から民を守るためにある……らしいわ。
 リクさんと出会うまでは、貴族とのかかわりを持った事がなかったし、詳しくはないけど。
 でもそういった役割があるため、侯爵軍のように街などを守る衛兵以外に、兵士を集めて軍を持っているし、当主の判断で動かす事ができるんだとか。

 とはいえ、これまでセンテを守るために手を尽くしたシュットラウル様を、今更攻撃に参加しなくても、悪く言う人はいないだろうと思うわ。
 以前に魔法鎧を身に付けて、魔物に突撃した事もあるみたいだし。
 と思ったのだけれど、張り切っている様子のシュットラウル様を見て、この場に留まるよう進言するのは諦めたわ。
 成る程、後ろで見ているだけなのは性に合わない……ね。

「そろそろ次の魔法攻撃が再開されるか」

 ヒュン……空気を斬る音を立ててレイピアを降ろしたシュットラウル様が、呟きながら視線を向ける先。
 そちらでは、次善隊のほとんどが結界に攻撃を加えて散会……左右に別れて転身しているところだった。
 次善隊は一撃離脱。
 突撃した兵士が退いたら、準備を整えていた魔法隊による魔法攻撃が再開され、余力を残さないよう全力を撃ち込む手筈になっているわ。

「「魔法隊構え!!」」

 私が頭の中で作戦の流れを確認しているのを肯定するように、響く母さんとベリエスさんの声。
 あと数列、次善隊の攻撃が加えられたら、魔法を放つためね。

「少し、結界が薄くなっている……か?」

 魔法隊を指揮する母さん達の声を聞きながら、結界へと目を凝らすシュットラウル様。
 次善隊が転身してたおかげでよく見えるようになった、攻撃を加えていた結界部分。
 私達を覆う結界は、うっすらとしか外が見えなかったはずなのに、攻撃を加えていた場所のいくつかははっきりと外が見える程にまでなっていた。
 
「大分削ったのだわ。だから、見えにくかった外が見やすくなっている部分がいくつかあるのだわ」
「エルサちゃん、お疲れ様」
「効果は着実に出ているようですな、エルサ様」

 シュットラウル様の言葉に答えながら、空から降りてきたエルサちゃん。
 いつの間にか、体の大きさも小さくなっているわね……魔力の節約かしら?
 ともあれ、確かに結界の一部は薄くなり、外が見やすくなっているのがあちこち見受けられるわ。
 あとどれくらいなのか……まではわからないけれど、それでも目に見えて結果が出ているのがわかるのは、私達にとっては重要ね。

「外が見える場所を狙え! そこが特に効果的な部分だと思え……!!」

 エルサちゃんの声が聞こえたわけではないはずなのに、なんとなくで察したのか、母さんから結界の狙うべき部分が魔法隊へと伝えられる。
 わかりやすくはあるけれど、一瞬で見抜くのはさすが母さんね。

「ちょっと休憩なのだわ」

 呟いて、私の後頭部から頭頂部にかけてペッタリと張り付くエルサちゃん。
 手……というか前足は、私の額あたりに垂れ下がっているわ。

「私の頭? でも、リクさんのように魔力は出ていないわよ?」
「わかっているのだわ。そもそもリク以外から魔力が流れて来る事はないのだわ。それにモニカの手は空いていないのだわ。だからここなのだわ」
「成る程ね……」

 いつもリクさんの頭にくっ付いて、滲み出る魔力を取り込んでいるらしいエルサちゃん。
 私はリクさん程魔力量はないし、人間の中でも一般的と言えるくらいだから、滲み出たりはしないんだけど……思ったら、本当にただ休憩をするためだけだったみたい。
 魔力の輪で威力増強をしていて疲れたのかもしれないわね――。


しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一
ファンタジー
「魔法ってのは……要はエネルギーの制御だろ?」 高校生にして超人的な科学知識を持つ天才・九条迅は、ある日、異世界アルセイア王国に「勇者」として召喚された。 だが、魔王軍との戦争に駆り出されると思いきや—— 「お前、本当に勇者か? 剣も魔法も、まともに使えないのか……?」 「科学的に考えれば、魔法ってのはもっと進化できるはずだ!」 剣も魔法も素人の迅だったが、「魔法を科学的に解析し、進化させる」という異端の方法で異世界の常識を根底から覆し始める! 魔法の密度を最適化した「魔力収束砲」 魔法と人体の関係を解明し、魔力を増大させる「魔力循環トレーニング」 神経伝達を強化し、攻撃を見切る「神経加速《ニューロ・ブースト》」 次々と編み出される新技術に、世界は驚愕! やがて、魔王軍の知将《黒の賢者》アーク・ゲオルグも迅の存在に興味を持ち始め—— 「科学 vs 魔法」「知能 vs 知能」 最強の頭脳戦が今、幕を開ける——! これは、「魔法を科学で進化させる勇者」が、異世界を変革していく物語! ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる

暁刀魚
ファンタジー
 社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。  なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。  食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。  そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」  コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。  かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。  もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。  なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。  カクヨム様にも投稿しています。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

湖畔の賢者

そらまめ
ファンタジー
 秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。  ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。  彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。 「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」  そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。  楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。  目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。  そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

処理中です...